パパ活は犯罪になる?逮捕されたらどうするべきか

「パパ活」とは、女性が経済力ある男性から金銭を受け取ってデート等のサービスを提供することです。
パパ活自体は犯罪ではありません。たとえ金銭のやりとりが伴っても、男女がデートする行為を禁じる法律はないからです。
しかし、パパ活のサービスが食事や映画等にとどまらず、性的行為を伴う場合などには、刑事犯罪となる場合があるので注意が必要です。
ここでは、パパ活は何罪になるのか、パパ活で逮捕された場合の対応方法について解説します。
1.パパ活は何罪になるのか?
冒頭の通り、パパ活は内容次第では犯罪行為なることもあります。
(1) 売春防止法違反
売春防止法3条は、売春・買春を禁止しています。
売春防止法3条
何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。
売春とは、対償を受け異性の相手方と性交渉をすることをいいます。したがって、「金銭を支払い性交渉する態様」のパパ活は、同条に違反します。
もっとも、この売春防止法3条に違反しても罰則規定はないので、女性も男性も処罰されることはありません。これは、売春が経済的に困窮した女性により行われてきた歴史から、自分を売る女性を社会・経済的な弱者と捉え、処罰よりも保護を与え立ち直らせることで、売春を防止しようとしているのです。
つまり売買・買春行為それ自体は「犯罪」ではないのです。
ただし、売春防止法は、売春に関係する行為一切を不問にしているわけではなく、売春を助長する行為や露骨に社会風俗を害する行為は犯罪として処罰対象としています。
例えば、女性が売春相手を探すため街頭で「立ちんぼ」をし、道行く男性に声をかけたり、つきまとったりする行為は、たとえ「パパ活の相手を探していた」と言い訳をしても、その女性は売春勧誘罪・売春誘引罪として6月以下の懲役刑又は1万円以下の罰金刑となります(売春防止法5条)。
参考判例:最高裁平成11年9月27日判決(立ちんぼによる勧誘の事案)
また女性を騙して売春をさせる行為、親が子に売春をさせる行為、売春の場所を提供する行為などは、3年以下の懲役刑又は10万円以下の罰金刑となり、これも「パパ活」だという言い分は通用しません(売春防止法7条1項、11条1項)。
(2) 児童買春等処罰法違反
このように「売春」それ自体は犯罪ではありませんが、当事者が18歳未満の「児童」である場合は別で、児童の相手となった者が処罰を受ける場合があります。
まず、児童買春等処罰法は、児童に金銭などを与えて性的行為をする「児童買春」を犯罪としており、違反者は5年以下の懲役刑又は300万円以下の罰金刑となります(児童買春禁止法4条)。
「児童」は男女を問いませんし、性交だけでなく性交類似行為(口淫、手淫、肛門性交など)や性器等を触る行為も禁止対象です(同法2条1項)。
したがって、パパ活で18歳未満の者から性的サービスを受ければ、刑事罰を受ける危険があります。

[参考記事]
児童買春・援助交際の罪|逮捕される?
(3) 児童福祉法違反
「児童福祉法」の34条1項6号は、児童に淫行をさせる行為を禁止しています。これに違反した場合には10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金刑又は懲役と罰金の併科という罰則が科されます(60条1項)。
ここでも児童とは18歳に満たない者をいい、「淫行」とは児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいいます(最高裁平成28年6月21日判決)。
パパ活で金銭を支払って性交・性交類似行為を行うことは、児童の心身の健全な育成を阻害する「淫行」と評価される可能性が高いでしょう。
ただし、児童福祉法の処罰対象は、淫行を「する行為」ではなく、あくまでも淫行を「させる行為」です。これは児童福祉法の規定が、もともとは児童が管理売春の犠牲となることを防ぐ目的で設けられた歴史に由来します。
このため淫行を「させる行為」とは、児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいいます。
そして、影響力で淫行を助長・促進したか否かは、児童との関係、行為内容、児童の意思決定への影響の程度、淫行の内容、淫行の動機・経緯、児童の年齢、その他当該児童の具体的状況を総合考慮して判断するとされています(最高裁平成28年6月21日判決)。
よって、単に児童側からの提案に応じて金銭を支払い性的な行為をしただけでは、児童福祉法違反とはなりません。
しかし、教師と生徒、雇用主と被傭者、監護者と子ども等の事実上の影響力を行使しうる関係にあるケースや、児童の経済的困窮に乗じて自分を相手にパパ活をするよう自ら積極的に働きかけたケースなどでは、児童福祉法違反になる場合があります。
(4) 青少年健全育成条例違反
各都道府県は、青少年の健全な発達を目的として「青少年健全育成条例(青少年保護育成条例)」を定めています。
例えば、東京都の青少年健全育成条例の18条の6は「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。」とし、これに違反した者は2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます(24条の3)。青少年とは18歳未満の者(2条1号)をいいます。
「みだらな性交又は性交類似行為」とは、「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為」とされています(最高裁昭和60年10月23日判決)。
青少年のパパ活の相手として、金銭を支払って性的行為を行うことは「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められない」と評価されますから、条例違反となります。

[参考記事]
未成年者との淫行で逮捕|淫行の定義と逮捕後の弁護
(5) 未成年者誘拐罪
相手が未成年(18歳未満)の場合で未成年誘拐罪に該当するならば、性行為を伴わなくとも処罰されるケースがあります。
刑法224条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
パパ活の一環で金銭支払いやプレゼントを約束するなどして誘い、自宅やホテル等に連れ込んだり車に同乗させて連れ回したりした場合、誘惑・甘言による「誘拐」行為と評価されて処罰される危険があります。
なお、未成年者誘拐罪は未成年者の同意があっても本罪は成立します。
未成年者誘拐は、親権者などの監護権も保護対象と理解する考え(大審院大正13年6月9日判決・大審院刑事判例集3巻502頁など)から、未成年者の同意があっても監護権者の同意がなければ犯罪が成立するのです。また、そもそも判断能力に乏しい未成年者の承諾は法的に有効な承諾とは認められないと説明する考え方もあります。
なお、未成年者誘拐がわいせつ行為の目的で行われた場合には刑が加重され、1年以上10年以下の懲役刑となります(刑法225条)。
2.パパ活に関与して逮捕されたら
パパ活が上記のような違法行為に該当する場合、警察に発覚すると逮捕される可能性もあります。
パパ活で逮捕された後の流れと、前科を防ぐための弁護活動についてご説明します。
(1) 逮捕後の流れ
パパ活では、自宅に返してしまうとメールや画像などの証拠物を削除する(罪証隠滅の)可能性があるため、そのまま逮捕されてしまうことがほとんどです。
刑事犯罪で逮捕された場合、まずは警察署で取り調べを受け、その後検察官の元へ送致されます。検察官も取り調べを続け、被疑者の「勾留」を裁判所へ請求するか否か決定します。
検察官が勾留請求をしてこれが認められると、被疑者は逮捕に続き勾留されることになります。逮捕と勾留は合わせて最大で23日間続きます。
勾留期間の満了までに、検察官は被疑者を起訴するか・不起訴とするかを決定します。
起訴処分がされると、被疑者は刑事裁判にかけられます。日本の刑事裁判は有罪率が非常に高いので、起訴=有罪判決が出されると考えてよいでしょう。
特に児童買春は、性犯罪の厳罰化により、起訴猶予(不起訴)を獲得することが難しくなっています。
仮に起訴されて有罪判決が出されると、執行猶予がつかない限り刑務所に収監されることとなったり、罰金刑を支払う必要が出てきたりします。
(2) 前科を防ぐには?
懲役刑であれ罰金刑であれ、有罪判決が出されれば前科がついてしまいます。前科がつく事態は、将来的なデメリットを考慮しても回避すべきです。
特に、パパ活により成立する可能性がある犯罪の中には懲役刑があるものもあり、刑務所に収監される事態は何としても避けたいことでしょう。
先ほど見たように、パパ活は数多くの犯罪に触れる可能性があります。そのため、法律の知識がない方では、自分がいかなる犯罪に問われていて、どのように対応をすれば良いかわからないと思います。
そこで、早急に弁護士に相談すべきです。
弁護士は、捜査機関や裁判所に依頼者の早期釈放を請求したり、被害者(またはその保護者)との示談交渉を行ったりします。
これらの活動により、依頼者の早期釈放や不起訴処分、また起訴された場合に執行猶予付き判決を獲得することができる可能性が高まるでしょう。
3.パパ活の示談交渉は弁護士へ
パパ活で未成年と性行為をしてしまい逮捕された場合、もっとも大事なことは早急に被害者と示談することです。
逮捕中・勾留中に、被害者と示談できれば、不起訴になる可能性もあります。また、早期に示談ができると、勾留期間の満了前に不起訴の決定が出て、釈放されることもあります。
不起訴になることが難しいと考えられる事案の場合でも、刑事裁判において執行猶予を得られるように、また、執行猶予も難しい事案であっても実刑が少しでも短くなるように、情状のための弁護活動が必要です。
裁判での情状の中でも、もっとも重要なのは、被害者の宥恕を受けたかどうか、つまり、示談が成立しているかどうかということになります。
宥恕とは、被害者が犯行を許し、刑事処分を望まない、あるいは寛大な処分を望むという意思を表明してくれることです。
もっとも、児童(未成年)に対する犯罪の場合、示談の相手は保護者になります。
そして、自分の子どもが性的な被害に遭えば、保護者が感情的になるのは当然のことです。そのため、示談が難航することも多くあります。
したがって、被疑者としては真摯な気持ちで被害者側に謝罪をする必要がありますが、被害者やその家族は「被疑者の顔も見たくない」と思うのが通常ですので、示談交渉は弁護士に代理人を依頼するのが必須と言えます。
パパ活で逮捕されてしまったならば、将来的な不利益を少しでも小さくするために、泉総合法律事務所の弁護士 泉義孝にご相談ください。