パパ活で「お金をもらってブロック」したらどうなる?

近年ニュースなどでも取り上げられることが多い「パパ活」ですが、トラブルとしてよく聞くのは「女性に先払いでお金を渡したら、会う前にブロックされた」というものです。
実際、ブロックされた男性が掲示板や知恵袋などで助けを求めたり、あるいはブロックしてしまった側の女性が「詐欺になるのか?」「逮捕されるのか?」と不安で弁護士に質問をするケースはよく見られます。
パパ活において「お金をもらってブロックする」「お金をもらって逃げる」という行為は犯罪なのでしょうか?
1.パパ活は犯罪なのか?
そもそも、「経済力がある男性と会って金銭を貰う」というパパ活は犯罪なのでしょうか?
(1) パパ活自体は犯罪ではない
パパ活そのものは、原則として犯罪になりません。
自分のお金をどう使うかは自由ですし、相手にお金を支払ってデート・食事・映画等に行く行為を禁止した法律もないのです。
また、パパ活に際して性的行為を伴っていても、相手方が同意している限りは、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪などの性犯罪に問われることは原則としてありません。
他方、売春防止法3条は、売春行為・買春行為を禁止しています。
売春とは、「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」をいいますが、パパ活に際して性交を行う場合には同条違反となります。
もっとも、同条には罰則規定はないので、パパ活が同条により処罰されることはありません。
売春は、多くの場合、社会経済的弱者である女性が生活のためにやむなく従事してきた歴史があります。そこで売春防止法では、売春を行う女性を処罰するよりも、これを保護し、更正させるべき対象としています。
このため、売春自体は処罰しないものの、「売春を助長する行為等は処罰すること」「売春をする女子は保護し更生させること」で、売春行為を防止しようとしているのが売春防止法なのです。

[参考記事]
売春防止法とは?違反して逮捕されたらどうなるか
(2) 例外的に犯罪になるケース
パパ活において、相手方(女性側)が18歳未満の「児童」「青少年」である場合、未成年の場合には、パパ活が犯罪になる可能性があります。
具体的に、以下の犯罪が成立し得ます。
青少年保護育成条例違反 | 青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行なった |
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児童福祉法違反 | 児童に淫行をさせる行為をした |
児童買春の罪 | 金銭・商品などの対価を渡して18歳未満の児童を性的行為をした |
売春防止法違反 | 児童の売春をあっせんした、あるいは児童を支配し売春をさせた |
不同意性交等罪 | 暴行・脅迫を用いて性交、肛門性交、口腔性交(=性交等)をした (相手が16歳未満の場合には、相手方の同意があっても処罰対象) |
不同意わいせつ罪 | 暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をした (相手が16歳未満の場合には、相手方の同意があっても処罰対象) |
さらに、相手方が未成年者の場合には、パパ活が未成年者拐取罪(刑法224条)に該当することもあるので、性的行為を伴っていなくても犯罪行為となることがあります。

[参考記事]
パパ活は犯罪になる?逮捕されたらどうするべきか
2.お金をもらってブロックした場合はどうなる?
パパ活の内容によっては、特に男性側が罪に問われるケースがあるのはご理解いただけたかと思います。
では、パパ活に際して女性が先にお金をもらって逃げた(ブロックした)場合、犯罪は成立するのでしょうか。
当初からお金をもらって逃げようと思ってパパ活を行った女性には「詐欺罪」が成立する可能性があります。
パパ活をすると欺いて金銭をもらい、その結果、金銭が女性の元に移ったためです。
刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
なお、パパ活で売春をすると欺いて男性から金銭の交付を受けた場合は、男性は不法原因給付(民法708条)として金銭の返還を請求できないのが原則です。
しかし、男性の給付は女性からの欺罔行為に触発されたもので、女性の行為の違法性(社会相当性からの逸脱)が高いこと、男性は金銭という個別の財産を渡しており金銭の喪失自体を損害と評価できるとして、この場合にも女性に詐欺罪の成立を認めるのが通説です(最高裁昭和33年9月日判決)。
もっとも、当初は本当にパパ活をするつもりで金銭をもらったが、その後、翻意して逃げた場合、詐欺罪は成立しません。
なぜなら、詐欺罪が成立するには、相手をだます時点で詐欺の故意が必要なためです。相手から金銭をもらった時点で詐欺の故意がないならば、詐欺罪は成立しません。
3.パパ活の詐欺で逮捕されたら
女性側であれ、パパ活に際して詐欺などで逮捕される可能性があります。
逮捕・勾留(逮捕より長期の身体拘束)された場合には、最大で23日間身体拘束される可能性があります。その後起訴された場合には、有罪判決が出される可能性が非常に高いです。
特に、詐欺の金額が大きい場合は起訴される可能性が高いです。
起訴を回避したり、厳しい判決が出されるのを回避したりするためには、被害者と示談をする必要があります。
示談成立の事実は、被疑者に有利な事情として、検察官・裁判官が処分を決するに当たり考慮してくれます。
もっとも、示談交渉を被疑者本人で行うのは困難です。特に女性が未成年の場合、示談の代理人を保護者に任せなければなりません。
また、成年であっても、相手方(男性側)と直接示談交渉を行うことは、更なるトラブルが発生する可能性が高いと言えます。
そのため、弁護人に示談交渉を依頼することが示談成立に不可欠です。
パパ活を行って逮捕された方は、早急に泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
4.パパ活の詐欺に関する実際の質問
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Q.パパ活で先払いで頂いたお金を返金しないとどうなりますか?
パパ活で男性から月5万円を先払いで頂きました。月2回ほど会う(身体の関係あり)という約束です。
しかし、諸事情で会えなくなり、その人ともう会う気もないのですが、頂いた5万円は返金しないと訴えられたり、逮捕されたりしますか?
A.本件では詐欺罪は成立しないと思われます。
質問者様が受け取った5万円ですが、民法上は公序良俗違反(=常識的にあってはならない行為)に該当し、不法原因給付として法的には返還義務はありません。
また、現実的にも、相手方が5万円の返還を求めて訴訟を提起するとも思いません。もっとも、最初から相手方と会うつもりがないのに、相手方から5万円を受け取ったのであれば、詐欺罪が成立します。
5万円受領後に想定外に相手方と会えなくなったのであれば問題はありませんが、相手方が警察に通報した場合に備えて、受領後に会えなくなった事情などをメモしておいた方がいいかと思います。
Q.パパ活の相手を詐欺罪で訴えることはできますか?
インスタで知り合った女の子と1万円で援交をすることになり、先払いと言われて支払ったところ、そこから連絡が取れなくなりました。
この場合、相手を詐欺罪に問えるのでしょうか。また自分が売春の罪に問われることはあるのでしょうか。
A.金銭受領時の相手方の意思によります。
仮に相手方女性が16歳未満であり、質問者の方も「そうかもしれない」と認識していれば、金銭の授受がありますので、刑法182条に規定されている面会要求罪が成立する可能性があります。
そうでなかった場合は、売春の当事者は刑事処罰の対象とはならないので、罪に問われることはありません。
相手方女性を詐欺罪に問えるかですが、まず、援助交際の合意は公序良俗違反となり無効です。
しかし、その無効の合意に基づいて支払った1万円の返還義務は、それを認めると公序良俗違反を助長するなどの理由から認められていません。もっとも、相手方女性が当初から質問者の方を騙すつもりで1万円を受領した場合には、詐欺罪が成立する可能性があります。相手方女性が1万円を受領してから気が変わって連絡が取れなくなった場合には詐欺罪は成立しません。
以上より、現段階では相手方女性を詐欺罪に問えるかどうかは不明です。