暴行・傷害 [更新日]2026年5月26日

児童虐待で逮捕される場合とは|法律・刑罰などを解説

児童虐待で逮捕される場合とは|法律・刑罰などを解説
弁護士 泉義孝
監修 弁護士 泉 義孝
所属:第二東京弁護士会
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近年、児童虐待のニュースがよく報道されています。
実際、児童虐待の検挙件数及び検挙人員は、平成26年以降大きく増加しているようです。

令和7年版 犯罪白書」によると、令和6年に児童虐待にかかる犯罪事件で検挙された人数の総数2,682人のうち、実の父親・母親は1,937人であり、全体の約72.22%を占めています。

かつては「児童虐待はしつけであり、家庭の問題である」という論理が通用していました。
旧民法822条において、親権者は「その子を懲戒することができる」とされていたことから、しつけとして体罰を加えることも、相当な範囲内であれば違法性がないと評価されていたのです。

しかし、しつけに名を借りた虐待被害の深刻さが認識されるに至った今日では、もはや、このような言い訳を許すべきではありません。

このため、2020年4月施行の改正法で、しつけとして体罰を加える行為を禁止することが明文化されました。

児童虐待の防止等に関する法律:第14条 
第1項 児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えること(中略)により当該児童を懲戒してはなら(中略)ない。
第2項 児童の親権を行う者は、児童虐待に係る暴行罪、傷害罪その他の犯罪について、当該児童の親権を行う者であることを理由として、その責めを免れることはない。

例え児童の本当の父親・母親であっても、理由の如何をとわず、児童虐待に相当する行為は許されません。

では、児童虐待で逮捕されるのはどのような場合なのでしょうか。また、児童虐待は一体どのような犯罪になるのでしょうか。

ここでは、児童虐待で逮捕される場合や、児童虐待により成立する犯罪について解説します。

1.児童虐待とは

児童虐待の防止等に関する法律によると、児童虐待とは、「保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者)がその監護する児童(18歳に満たない者)について行う次に掲げる行為」と定義されています(2条柱書)。

  • 1号 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
  • 2号 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
  • 3号 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
  • 4号 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

厚生労働省は、以上の行為を以下のように分類し、具体例を紹介しています。

  1. 身体的虐待(1号)・・・殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する
  2. 性的虐待(2号)・・・子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする
  3. ネグレクト(3号)・・・家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない
  4. 心理的虐待(4号)・・・言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う

参考:児童虐待対策の現状と今後の方向性(厚生労働省)

2.児童虐待をすることにより成立する犯罪

児童虐待の防止等に関する法律は、3条で「何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。」と定めて児童虐待を禁止していますが、この法律自体には、児童虐待を行った場合の罰則は定められていません。

したがって、上記各号に該当する行為が児童虐待防止法違反として犯罪となるわけではありません。そのため、刑法など他の法律を確認し、当該行為に犯罪が成立するかを検討しなければなりません。

ここでは、上記分類に従い、児童虐待により成立しうる犯罪について見ていきます。

(1) 身体的虐待

児童を殴る蹴るなどした場合(いわゆるDV)、暴行罪(刑法208条)が成立します。暴行の結果、児童にけがを負わせてしまった場合には傷害罪(刑法204条)が成立します。

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また、児童が言う事を聞かないからといって部屋に閉じ込めたりすると、逮捕・監禁罪(刑法220条)が成立します。

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これらの場合に児童を死亡させてしまった場合、殺人罪(刑法199条)や傷害致死罪(刑法205条)などが成立します。

令和6年の検挙件数では、検挙総人数2,682人のうち、暴行が985人、傷害が1,041人、重過失致死傷が1人、殺人が72人でした。
参考:令和7年版 犯罪白書

(2) 性的虐待

子供に性的行為を強いた場合には、不同意わいせつ罪(刑法176条)や不同意制性交等罪(刑法177条)が成立します。

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また、児童に淫行をさせた場合には児童福祉法違反(同法34条1項6号、60条1項)となります。

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令和6年の検挙件数では、検挙総人数2,682人のうち、不同意わいせつが228人、不同意性交等が162人でした。
父親等の男性が加害者の場合、不同意性交等及び不同意わいせつは1割強の割合です。
参考:令和7年版 犯罪白書

(3) ネグレクト

保護者が子供に食事をあげないなどのネグレクトをした場合、保護責任者遺棄罪(刑法218条)が成立します。
ネグレクトの結果、子供が死亡してしまった場合、保護責任者遺棄致死罪(刑法219条)が成立します。

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(4) 心理的虐待

子どもに「言う事聞かないと殴るぞ」など、身体等に危害を加える旨を伝えた場合には、脅迫罪(刑法222条1項)や強要罪(刑法223条1項)が成立します。

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3.児童虐待で逮捕された後の流れ

児童虐待は、近所の人や幼稚園・保育園、学校からの通報、子供や家族からの相談等により発覚します。児童に対して行った行為が犯罪に該当する場合、当然ながら捜査機関に逮捕される可能性があります。
特に、子どもに虐待について口止めするなど、虐待の証拠を隠滅しようとしている場合には、「証拠隠滅の恐れあり」として逮捕される可能性が高くなるでしょう。

警察官に逮捕された被疑者は、取り調べを受けた後、逮捕から48時間以内に身柄を検察官に送致されます。

検察官が更なる身体拘束が必要と判断した場合、身柄を受け取ってから24時間以内かつ逮捕後72時間以内に、裁判所に勾留請求をします。
勾留が認められると、10日間(更に10日間延長される場合あり)に渡り身体拘束されます。

検察官は、最終的に被疑者を起訴処分にするか否かを決定します。児童虐待でも不起訴処分になる可能性はありますが、「児童に怪我を負わせている」「何度も虐待を繰り返している」「犯した罪の罪状が重い」など事件が悪質な場合には、起訴処分となる可能性は多いにあります。

起訴処分となった場合、公判請求されると裁判となります。どのような罪名で起訴されたかにもよりますが、児童虐待で子どもに怪我を負わせた・死亡させた場合、罰金刑ではなく拘禁刑となる可能性が高いでしょう。

【児童虐待があった場合の児童のその後】
虐待を受けた子供が児童福祉法の要保護児童に該当する場合、児童相談所が児童を保護します(一時保護)。
その後、児童は児童養護施設に入所したり、他の親族がいる場合はそこに預けられたりするようです。

4.まとめ

児童虐待について解説してきましたが、児童虐待の疑いで捜査を受けたからといって、必ずしも厳しい刑罰を科されることだけが子どもにとっての最善な解決策とは限りません。親が自身の行為を深く反省し、更生に向けて歩みを進め、子どもが安心して暮らせる環境を整えることこそが、結果として子どもの幸せにつながるケースも数多く存在します。

泉総合法律事務所では、刑事手続きへの適切な対応が可能です。
児童虐待の件で捜査を受け、不安を抱えている方やそのご家族は、決して一人で抱え込まずに、まずは一度当事務所までご相談ください。

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