交通事故 [公開日]2025年9月4日

ひき逃げ・当て逃げをしてしまい自首をしたい場合の弁護士依頼

ひき逃げ・当て逃げをしてしまい自首をしたい場合の弁護士依頼

「交通事故を起こしてしまい、その場から立ち去ってしまった」という、ひき逃げ・当て逃げ事件は多く発生しています。
事故当初はパニック状態で現場を離れてしまったものの、後から冷静になって「自首すべきではないか」と悩む方は少なくありません。

ひき逃げ・当て逃げは重大な犯罪行為ですが、事故後の適切な対応により、刑事処分や社会的な影響を大幅に軽減できる可能性があります。

「逃げていてもいつか警察に捕まるかもしれない」「家族や職場にバレてしまうのではないか」といった不安を抱えながら、一人で悩み続けることは精神的にも大きな負担となります。

この記事では、「自首したいけれど、どのような手続きが必要なのか分からない」「自首すれば本当に処罰が軽くなるのかどうか不安だ」という方に向けて、ひき逃げ・当て逃げ事件における自首の効果と、弁護士に自首のサポートを依頼するメリットについて詳しく解説します。

1.ひき逃げ・当て逃げの罪

(1) ひき逃げ

ひき逃げは自動車運転処罰法違反として、「過失運転致死傷罪」に問われます(第5条)。
「過失運転致死傷罪」では、運転上必要な注意を怠って人を死傷させた者は7年以下の懲役若しくは拘禁刑又は100万円以下の罰金とされています。

また、飲酒運転や高スピードでの信号無視、無免許運転など、極めて危険な方法でひき逃げを起こした場合は、更に重い「危険運転致死傷罪」とされるでしょう。
この場合、人を負傷させた場合は15年以下の拘禁刑に、人を死亡させた場合は1年以上の拘禁刑に処せられます。罰金刑はありません。

さらに、アルコール、薬物、病気によって正常な運転に支障が生じるおそれがあり、そのおそれを知りながら運転し、実際に正常な運転ができず死傷事故を起こした場合は、「準危険運転致死傷罪」として処罰されます。
準危険運転致死傷罪では、人を負傷させた者は12年以下の拘禁刑に、人を死亡させた者は15年以下の拘禁刑に処せられます。

他にも、ひき逃げは道路交通法に定められている救護義務や報告義務、危険防止措置義務にも違反する行為とされています。

ひき逃げについて、詳しくは以下のコラムをご覧ください。

ひき逃げの罪|必ず逮捕・起訴されるのか?

[参考記事]

ひき逃げの罪|必ず逮捕・起訴されるのか?

(2) 当て逃げ

当て逃げは、物損事故(他人の車や施設等を損壊するのみで、人の死傷がない事故)を起こした場合に、そのまま現場を立ち去ってしまう行為です。

当て逃げで成立する犯罪は、道路交通法上の危険防止措置義務違反報告義務違反です。

危険防止措置義務違反の罰則(道路交通法117条の5第1項)
1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金刑

報告義務違反の罰則(道路交通法119条1項10号)
3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金刑

車の運転者は、交通事故を起こしたとき、必ず現場に停車して周辺に発生している危険を除去(車を路肩に寄せる、道路上の散らばったものを片付ける、発煙筒や三角表示板を置くなど)すべき義務を負います。この義務のことを「危険防止措置義務」と言います。

また、交通事故を起こした当事者は、必ず速やかに警察に連絡する義務も負います。これが警察への「報告義務」です。

交通事故の当事者(車両の運転者や他の乗務員)がこれらの義務を果たさずに現場から逃げてしまう行為は、道路交通法違反行為となります。

当て逃げならば多くのケースで罰金刑となりますが、罰金刑でも前科はついてしまいますので、その後の生活に少なからず影響が出ることが考えられます。

2.交通事故事件で自首するメリット

(1) 減刑の可能性がある

自首は、刑法42条において「刑の軽減事由」として規定されており、裁判官や検察官の裁量次第で(法定刑の範囲内で)刑を軽くすることができるものです。

検察官は、起訴・不起訴の判断において、被疑者の反省の態度や今後の再犯可能性を重要な考慮要素としています。
自首は、強い反省の意思表示として評価され、被害が軽微な物損事故・人身事故では、自首により不起訴処分(起訴猶予)を獲得できる可能性や、罰金の金額が低くなる可能性が高まります。

不起訴処分となれば前科は付かず、将来への影響を最小限に抑えることができます。

被害が大きなひき逃げ・当て逃げ事件や、危険運転を伴う事故においても、自首が成立すると、拘禁刑が執行猶予付き判決になったり、刑期が短くなったり、罰金刑に減軽されたりする可能性はあります。
特に初犯の場合、自首による刑の軽減効果は現れやすく、実刑判決を回避できるケースも見られます。

(2) 逮捕・勾留回避の可能性が高くなる

警察に犯人が発覚する前に自首することで、身柄拘束を受けずに在宅捜査で事件処理が進む可能性が高くなります。

相当な時間が経過してから被疑者が判明した場合や、事故現場から逃走している場合、捜査機関側には「証拠隠滅を図ったのではないか」「また逃亡するのではないか」という疑いを持たれることが多いです。

しかし、自首することで罪証隠滅や逃亡の危険が低いと示すことができ、捜査機関からの信頼を得やすくなります。
これにより、在宅事件で事件処理を進めてもらえる可能性が高くなるのです。

逮捕・勾留されると、最大で23日間身柄を拘束され、職場にも事件が発覚するリスクが高まります。
一方、在宅事件での捜査であれば、日常生活を継続しながら取り調べ等に対応することができ、影響を最小限に抑えられます。

(3) 被害者との示談交渉を有利に進められる

事故現場から逃走したという事実は、特にひき逃げの被害者に大きな怒りと精神的な苦痛を与えています。そのままでは、「顔も見たくない」「話をしたくない」と言い、示談交渉を拒否するケースがほとんどだと思われます。

しかし、自ら出頭して謝罪の意思を示すことで、被害者感情の悪化を防ぎ、示談交渉を円滑に進めることが可能になるケースがあります。

被害者の多くは「一度逃げたものの、自首をして今後はきちんと対応する」という姿勢をある程度は評価してくれますので、示談に応じやすくなる傾向があります。

示談成立は、不起訴処分や刑の軽減に直結する重要な要素です。
示談したい

(4) 被疑者自身の精神的負担の軽減

事故を起こして逃走した後の罪悪感や、「いつ発覚するか分からない」という不安は、想像以上に大きな精神的負担となります。
自首することで、被疑者自身もこの重圧から解放されます。

また、積極的に責任を取ろうとする姿勢は、家族や周囲の理解も得やすく、事件後の人間関係の修復にも良い影響を与えるかもしれません。

3.ひき逃げ・当て逃げで自首前に弁護士依頼するべき理由

自首をする時は、弁護士に相談をして同行などのサポートを受けることをお勧めします。

(1) 自首の方法をアドバイスしてもらえる

自首は「いつ、どのように行うか」によって効果が大きく変わります。
刑事事件に詳しい弁護士であれば、事件の内容や捜査の状況を分析し、最も有利なタイミングで自首できるようアドバイスします。

例えば、被害者との示談交渉を先行させてから自首する方が有利な場合もあれば、逆に早急に自首して誠意を示すべき場合もあります。
ケースバイケースで最適な判断を行うことができるのは弁護士のみです。

また、弁護士は警察署での自首手続きにも同行し、不利な供述を避けるためのサポートを行います。

自首後の警察での取り調べにおいて不適切な供述をしてしまうと、後の裁判で不利に働く可能性があります。
弁護士に依頼をすれば、取り調べ前に供述内容について詳細な打ち合わせを行い、事実に基づいた正確な供述ができるよう指導してもらえます。

特に、事故状況について記憶が曖昧な部分がある場合、推測での供述を避けるための具体的なアドバイスを受けられます。

自首前にどのような準備をしておくべきか、家族や職場にどのように説明をするべきか、という点もアドバイスできますので、安心してお任せください。

(2) 減刑を目指した弁護活動が可能

ひき逃げ・当て逃げの法定刑は重く、刑法上の過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪に問われる可能性もあります。
「自分の場合はどのような罪になるのか」「有罪となり刑務所に入ることになるのか」など、被疑者の方が不安に思うのは当然です。

弁護士は、事故の状況、被害の程度、過去の判例などを総合的に分析し、想定される処罰を予測しながら、具体的な対応策を考えていきます。

自首は減刑の一要素に過ぎず、不起訴処分や執行猶予獲得のためには、あらゆる弁護戦略が必要です。
弁護士は、反省文の作成指導、贖罪寄付の手続き、再発防止策の立案、情状証人の確保など、あらゆる面から有利な情状を積み上げていき、減刑を目指します。

(3) 被害者との示談交渉の代行

ひき逃げでは、怪我をした被害者の方との示談が成立することで、これを良い情状として取り扱ってもらえます。

しかし、被害者との直接交渉は感情的になりやすく、かえって関係を悪化させるリスクがあります。そもそも警察官が被害者の方の連絡先を教えてくれることはないので、ひき逃げの自力での示談は不可能と言えます。

弁護士が代理人となることで、警察や検察から被害者の連絡先を聞くことができる可能性があるほか、弁護士による示談交渉では冷静かつ建設的な話し合いが可能になります。適正な損害賠償額の算定、示談条件の調整、示談書の作成など、法的な専門知識が必要な作業を全て任せることができます。

また、被害者が示談に応じない場合の対応策(贖罪寄付等)についても、弁護士からは経験に基づいた的確なアドバイスを受けられます。

なお、当て逃げによる危険防止措置義務違反や報告義務違反には被害者という者が存在せず、あえて言えば社会全体が被害者ということになります。
しかし、当て逃げで壊された車の所有者など、物損の被害者に対しては、民事上の損害賠償責任がありますので、この面で示談交渉を行うことになります。

4.ひき逃げ・当て逃げの自首は弁護士へ相談を

交通事故を起こして逃げてしまったという事実は、悪い情状と捉えられてしまい、重い処罰を受ける可能性が高くなります。
しかし、弁護士のサポートを受けながら適切なタイミングで自首をすることで、不起訴処分や執行猶予の獲得など、最良の結果を目指すことができます。

一方、自首のタイミングや方法を誤ると、かえって不利な結果を招くリスクも存在します。

経験豊富な弁護士であれば、事件の状況に応じて最適な弁護方法を考え、自首はもちろん、被害者との示談交渉から取り調べ対応まで総合的にサポートできます。
刑事事件に強い泉総合法律事務所の弁護士にまずはご相談ください。

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