コカインの使用・所持の罰則|初犯でも逮捕・起訴されるのか?

日本において、「コカイン」の製造・所持・使用(施用)・譲渡・譲受・輸出入は、麻薬及び向精神薬取締法で禁止されています。
コカインは依存性の強い薬物「麻薬」とされており、所持や使用をすることにより刑事事件化し、初犯でも逮捕・起訴・拘禁刑とされる可能性が高いです。
本コラムでは、コカインの使用や所持による刑罰と、実際のコカインの使用などで逮捕されてしまった場合の正しい対応方法を解説します。
1.麻薬及び向精神薬取締法違反について
日本には、「覚せい剤」「大麻」「あへん」といった代表的な薬物を禁止する法律があります。
現行法では、使われた薬物ごとに適用される法律が異なるのです。
コカインは、「麻薬及び向精神薬取締法」で取り締まられます。
麻薬及び向精神薬取締法違反で対象とされる薬物は、「コカイン、ヘロイン、モルヒネ、MDMA、LSD、向精神薬」などです。
コカインは南米原産のコカの葉から抽出される強力な精神刺激薬です。脳内の神経伝達物質(特にドーパミン)の再取り込みを阻害し、快楽や覚醒感をもたらします。
局所麻酔作用もあり、医療用としては限定的に使用されることがあります。
コカインの所持・使用などにより麻薬及び向精神薬取締法違反に該当すると、以下のような罰則となります。
※なお、ヘロインの所持・使用・譲渡・譲受などは、コカインを含めるその他の麻薬よりも厳しく処罰されます。
営利目的なし | 営利目的 | |
---|---|---|
コカインの所持・使用・譲渡・譲受 | 7年以下の拘禁刑 | 1年以上10年以下の拘禁刑 又は情状により300万円以下の罰金を併科 |
「薬物を使ったところで、誰にも迷惑はかけていないのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、これらの薬物が禁止されるのは社会の安全や風紀を守るためです。
薬物が乱用されると、社会全体が大きく衰退します。薬物を利用した人は働けなくなるので生産性が低下しますし、中毒状態となれば病院患者も増え、最悪の場合死に至ることもあります。
薬物犯罪は、個人が心身をむしばまれるだけではなく、社会全体が損害を受ける犯罪行為なのです。
2.コカインで逮捕されたらどうなる?
先述の通り、コカインは麻薬及び向精神薬取締法で規制される違法薬物であり、所持や使用で検挙された場合には刑事事件となります。
コカインなどの薬物に関する犯罪は重大な刑事事件として扱われ、法定刑も重く設定されています。
コカインの所持等で逮捕された場合、警察による最大48時間の取り調べ・身柄拘束を受けた後、検察官に送致されます。
検察官は事件を受理してから24時間以内に、裁判官に対して勾留請求をするかどうかを判断します。
勾留請求されるのは、主に被疑者を釈放することで「逃亡のおそれがある」「証拠隠滅のおそれがある」と判断されるケースです。
コカインなどの薬物事件では、薬物が自宅に隠されているケースや共犯者が存在しているケースも多く、釈放をすることで証拠隠滅がされるリスクが高いと判断されがちです。よって、逮捕後はそのまま勾留請求がなされるケースが大半だと考えましょう。
裁判官が勾留を認めると、原則として10日間、さらに最大10日間の延長により、合計20日間もの身柄拘束を受ける可能性があります。
この長期間の身柄拘束中、被疑者は取り調べを受け続けることになります。
コカイン事件では入手経路や使用状況、共犯者の有無などについて詳細な追及がなされます。勾留期間が満了するまでに、検察官は起訴・不起訴の判断を下しますが、コカイン所持や使用の事実が明確な場合、初犯であっても起訴される可能性は極めて高いといえます。
起訴後は公判が開かれ、有罪判決を受ける可能性が高くなります。
初犯で所持量が少量であれば執行猶予付き判決となる可能性もありますが、常習性が認められる場合や所持量が多い場合には実刑判決となる事例も多くあります。
3.コカイン事件の弁護活動内容
(1) コカイン使用などの示談交渉について
痴漢・盗撮、窃盗や傷害などの被害者がいる犯罪では、被害者との示談が成立すれば不起訴処分や刑の減軽につながることが多いです。
しかし、薬物犯罪は被害者が特定されない犯罪類型であるため、示談という概念が基本的に適用されません。
コカインの所持や使用は、個人の健康被害や社会秩序への脅威として国家が取り締まる犯罪です。つまり、法益侵害の対象が特定の個人ではなく社会全体であるため、示談によって刑事責任を免れるという構図が成立しないのです。
したがって、被害者に謝罪して賠償金を支払うことで事件を解決するという通常の示談交渉の手法は、コカイン事件では機能しません。
(2) 再犯防止のための取り組みを主張する
とはいえ、薬物事件においてまったく情状酌量の余地がないわけではありません。コカインを所持・使用してしまったならば、弁護士を通じて薬物依存からの離脱に向けた真摯な更生の姿勢と反省を示すことが重要になります。
具体的には、専門医療機関での治療を開始したこと、薬物依存症の回復プログラムに参加していること、家族や職場の監督体制が整っていることなどを客観的な証拠とともに示すことで、執行猶予付き判決を得られる可能性を高めることができます。
また、薬物を入手した経路や共犯者について捜査に協力する姿勢を見せることも、量刑判断において考慮される要素となり得ます。
さらに、身元引受人を確保し、社会復帰後の生活基盤が安定していることを示すことも、裁判所の判断に影響を与える可能性があります。
4.コカイン事件の実際の解決事例
泉債務法律事務所では、過去にコカイン使用・所持で逮捕・勾留・起訴された事案で、執行猶予判決を獲得した解決事例があります。
事件の概要
20代男性のAさんは、コカインの使用の事実により逮捕・勾留されてしまいました。
Aさんが逮捕された後、Aさんのお母様からAさんについての弁護のご依頼がありました。
弁護士が早速警察署に行ってAさんと接見をしたところ、Aさんは、起訴されて実刑になってしまうのではないかなどと大変心配をされていました。
弁護士の対応
コカインの使用などの薬物事案は、20日間の長期勾留となるケースが非常に多いです。Aさんは、使用のみならずコカインの所持の事実によって再逮捕され、勾留の満了日にコカイン使用の事実と併せて起訴されてしまいました。
起訴後は保釈の制度がありますので、弁護士は保釈の請求を行いましたが、残念ながら保釈の請求は却下されてしまいました。
そのため、勾留されたままの状態のAさんと接見を重ね、裁判の準備を行いました。
結果
裁判では、Aさんのお母様に証人として出廷していただき、Aさんを監督することを証言していただきました。
そして、弁護人の主張の中で、お母様が監督をすると約束してくれていることに加え、保釈が認められず相当長期間にわたって身柄拘束を受けており、既に相当な制裁を受けていることを主張しました。
検察官からは懲役1年6ヶ月が求刑されましたが、弁護人側が主張したAさんにとっての有利な事情が考慮され、懲役1年6ヶ月・執行猶予3年という判決が宣告され、実刑を避けることができました。
(※事例内容については、弁護士の守秘義務に則り、実際の事案と事実関係や登場人物を改変しております。実際の相談例ではございませんのでご了承ください。)
5.まとめ
コカイン事件では早期に弁護士に相談し、適切な対応を取ることが極めて重要です。逮捕直後から弁護人のサポートを受けることで、取り調べへの対応方法についてアドバイスを受けられるほか、勾留阻止・保釈請求などの身柄解放に向けた活動を行うことができます。
特に、薬物犯罪に精通した弁護士であれば、治療機関の紹介や更生プログラムの説明など、刑事弁護だけでなく社会復帰に向けた総合的なサポートを提供できる場合もあります。
お困りの方は、ぜひ一度泉総合法律事務所にご相談ください。