刑事弁護・裁判 [公開日]2026年2月4日

共犯・共謀共同正犯とは?刑事弁護士が解説

共犯・共謀共同正犯とは?刑事弁護士が解説

刑法は「共犯」について特別な規定を置いています。
それが、共同正犯、教唆犯、従犯です。

この記事では、「共犯」について、基本的な知識を解説いたします。

1.共犯とは?

例えば、刑法の傷害罪は、「人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処する」と定めています。これは「人の身体を傷害した者」という「単独犯」つまり、自分一人で他人を傷害した場合を犯罪とする規定です。

このように、刑法は、どのような行為が犯罪として処罰されるかにつき、原則として単独犯を想定した定めを置いています(※例外として、内乱罪など、当然に複数人での犯行を予定して規定されている場合もあります)。

しかし、現実の犯罪は、複数人で行われる場合が数多くあります
単独犯の場合よりも、複数人で行われる場合の方が、次の諸点から、犯罪実現の危険は大きくなります。

  • 役割を分担できたり、協力できたりするので、実行が容易になる
  • 仲間の存在で、犯罪を遂行する意思が強化される
  • 仲間を裏切れないという意識から、翻意が困難になる

そこで、刑法は単独犯を原則としつつも、複数人で犯罪を行う場合につき、「共犯」という章を設け、「共同正犯」「教唆犯」「従犯」という3つの形態と、その処罰を定めています(刑法60条〜65条)。

【正犯と共犯の区別】
刑法は、犯罪行為を「正犯」と「共犯」に分けています。
単独犯は、自分一人で犯罪行為を行うのですから、言うまでもなく、自分自身の犯罪行為を行っています。このように、自己の犯罪行為を行った者を「正犯」と呼びます。これに対して、他人の犯罪に加担した者が「共犯」です。

2.共犯の3種類|共同正犯・教唆犯・従犯

(1) 共同正犯

共同正犯とは、「2人以上共同して犯罪を実行した者」です(刑法60条)。

例1:コンビニ店内のレジにいた店員Cに対し、Aがナイフを突き付け「金を出さないと刺すぞ!」と告げ、Cがレジ内の紙幣を出したところ、これをAの仲間であるBが奪い取った場合、A・Bともに強盗罪の共同正犯

共同正犯は「すべて正犯」とする(刑法60条1項)とされています。この意味は、AとBが共同正犯と認められると、他人であるBの行った行為についても、Aの行った行為と法的に評価されて処罰されるということです。

先の「例1」の場合、Aはナイフを突きつけて「金を出さないと刺すぞ!」と脅すという暴行行為、脅迫行為しか行っておらず、それだけでは暴行罪と脅迫罪でしかありません。
一方、Bは、Cから現金を奪いとる行為しか行っておらず、それだけでは窃盗罪でしかありません。

しかし、この場合に、それぞれ、Aは暴行罪・脅迫罪の単独犯とし、Bは窃盗罪の単独犯とするべきではありません。
ABは、両名が協力して、ひとつの強取行為を行ったと評価されるべき実態があります。

そこで、この場合、AB両名の行為を強取行為とみて、それぞれを単独犯と同じ「強盗罪」の正犯と扱うのです。

このように、共同正犯において、犯罪行為の一部を分担したに過ぎない者でも、全部の行為の刑事責任を負わされることを「一部実行・全部責任(の法理)」と称します。

(2) 教唆犯

教唆犯とは、「人を教唆して犯罪を実行させた者」です(刑法61条1項)。「教唆する」とは、他人を唆す(そそのかす)ことです。

例2:Aは、借金の返済に窮していたBに対し、「〇〇コンビニ店の店員Cは、気が弱そうだよ。脅かして、レジの金をとったらどうだ。」と勧めたところ、その晩、Bは店内でCにナイフを突きつけて金を奪った場合、Bは強盗罪の正犯、Aは強盗罪の教唆犯

教唆犯は、「正犯の刑を科する」とされています(刑法61条1項)。つまり、単独犯と同じ法定刑が適用されるのです。

教唆犯は、他人をそそのかしただけで、自分は犯行に及んではいません。しかし、犯罪の実行を決意させるという悪質かつ重要な役割を担ったことから、同じ刑で処罰されるのです。

(3) 従犯

従犯とは、「正犯を幇助した者」です(刑法62条2項)。「幇助」とは、「助ける」「容易にする」という意味であり、物理的な幇助行為と精神的な幇助行為があります。

  • 物理的な幇助…強盗に用いる凶器を渡す、文書偽造に用いるパソコンを調達するなど
  • 精神的な幇助…殺人の決心をしている者に「男というものは、やる時にはやらねばならない」などと告げて激励する行為

例3:Bが「借金の返済のために、コンビニ強盗をするつもりだ」と言うので、Aは「それなら、このナイフを貸してやるよ」と、アーミーナイフをBに渡したところ、Bはこれをコンビニ店員Cに突きつけて強盗を行った場合、Bは強盗罪の正犯、Aは強盗罪の従犯

従犯については、「従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。」(刑法63条)とされています。「減軽」とは、法定刑を軽くすることです。

軽くする方法は刑法が基準を定めており、例えば、正犯の法定刑が有期拘禁刑の場合、その長期および短期の2分の1を減ずるとされています(刑法68条3号)。

仮に正犯が強盗罪の場合、その法定刑は、短期5年以上・長期20年以下の有期拘禁刑です。これを減軽すると、短期2年6月以上・長期10年以下となり、この範囲内で処罰されることになります。

3.共謀共同正犯について

(1) 共謀共同正犯とは?

先の「例1」(Aが暴行・脅迫を行い、Bが財物を奪ったケース)では、暴行脅迫を手段に相手の犯行を抑圧して財物を奪うという強盗罪における犯行行為(実行行為)を、ABが分担して自ら行っています。

このように、複数人が犯罪の実行行為を実際に分担して共同正犯とされる場合を「実行共同正犯」と呼びます。

これに対し、複数人のうち、犯罪の「共謀」には参加したものの、実際の実行行為は分担していない者を共同正犯として処罰する場合が「共謀共同正犯」です。
「共謀」とは、犯罪を共同して遂行することの合意です。

共謀共同正犯の典型的なケースは、①支配型と、②対等型に分けることができます。

例4(支配型):暴力団の親分Aは、子分Bに「対立団体の親分Cを射殺して来い」と命じたところ、これを承知したBが、翌日、Cを射殺したという場合、ABは殺人罪の共謀共同正

例5(対等型):ABCは、夜間、店舗に侵入して窃盗を働こうと話し合い、Aが侵入先となる貴金属店を選び、陳列棚の宝石類や夜間警備の状況などを調べ、犯行日・犯行時間・犯行方法・逃走ルート・盗品の換金方法などの計画を立てた。
当日、BCが現場にむかい、店舗に侵入して宝石を盗んだという場合、ABCは、建造物侵入罪・窃盗罪の共謀共同正犯

このように、実際には犯罪の実行行為を分担していない者であっても、例4、例5のような者はまさに自分の犯罪として殺人罪や住居侵入罪・窃盗罪を行っていると評価されるべき実態があり、正犯として処罰するべきとされているのが現在の実務ベースです。

(2) 共謀共同正犯の成立要件

共謀共同正犯の成立要件は、①共謀の存在、②その共謀に基づき、共謀に参加した者の誰かが実行行為をおこなったことです。

共謀共同正犯の成立要件①共謀の存在

犯罪の実行行為を行っていない関与者には、「自己の犯罪を遂行したもの」と評価できる実態が必要です。それが「犯罪の共同遂行の合意」すなわち「共謀」です。

単なる意思疎通(意思連絡)があるだけでは足りません。各人が、協力して自分たちの犯罪を遂行する意思(正犯意思)を共有しているからこそ、正犯としての責任を科せるのです。

「共謀」は内心の状態です。必ずしも犯罪計画を協議する「謀議行為」のなされたことが必要なわけではありません(=主観的謀議説。小林充他編「刑事事実認定重要判決50選(上)第2版」立花書房・265頁)。
ただ「共謀」という「合意」を裁判所が認定するには、その者の行動や役割など、外部に現れた客観的事実を総合して判断します。それは、次のような各事情です。

  • 被告人と実行行為者との人的関係(組織関係、上下関係、影響力の有無等)
  • 実行行為者以外の具体的役割(犯行過程の一部分担、見張り、資金提供、犯行隠蔽等)
  • 犯行動機(利得の有無、法益侵害への積極性、義理立て等)

共謀は、具体的な「謀議」行為がなくとも認められます。また、各人の明示による意思の連絡も必ずしも要求されず、暗黙の意思連絡があるだけでも認められる場合があります。

最高裁平成15年5月1日決定・スワット事件(暗黙の意思連絡による銃砲刀剣類所持等取締法違反の共謀共同正犯を認めた事例)
最高裁平成30年10月23日決定(暗黙の意思連絡による危険運転致死傷罪の共謀共同正犯を認めた事例)

共謀共同正犯の成立要件②共謀に基づいた実行行為があること

共同正犯は、犯罪を共同して「実行した」場合に成立するのであり、共謀はあったものの誰も犯罪行為を行うに至らなかった場合には、共同正犯は不成立です。

4.共犯事件における弁護戦略

では、共犯事件における弁護士の活動ポイントにつき、いくつかご紹介します。

(1) 共謀の不存在を主張する

前述のとおり、「共謀」の有無は、人間関係、具体的な役割、犯行動機などの客観的事実を総合的に判断して認定されます。

例えば、支配型の場合、被告人が実行行為者に対して、どの程度の影響力を有する優越した立場だったのかが問題です。
上司と部下の関係でも単なる肩書きに過ぎない場合もあります。そのような場合、弁護士は、当該職場の実態を詳細に調査し、共謀の成立が認められないと主張します。

(2) 共犯からの離脱(共犯関係の解消)を主張する

共謀が認められる事案でも、被告人が犯行現場から離脱するなどして共犯関係を解消したと評価される場合は、以後の結果に対する責任を問われない場合があり、このような事実があれば、弁護士は最終結果に対する責任がないと主張します。

そのためには、自己の行為が、犯罪結果に及ぼす影響力(因果力)を遮断する必要があります。一般に、実行行為に着手する前であれば、①離脱する意思を表明し、②他の者が了承することで、共犯関係の解消が認められやすい傾向にあります。

しかし、実行行為に着手した後は、それだけでは足りず、③他の者によって犯罪結果が発生することを積極的に防止したことが要求されます。

【判例】最高裁平成元年6月26日決定
被告人Aは、Bと共に、竹刀や木刀でCに暴行を加えた後、「おれ帰る」とだけ告げて立ち去ったが、その後も、BはCに暴行を加えたところ、Cは死亡しました。裁判所は、被告人Aが立ち去る時点で、なおもBが暴行を行うおそれが消滅していなかったのに、被告人Aは、格別これを防止する措置を講ずることなく、成り行きに任せて現場を立ち去ったに過ぎないから、共犯関係が解消されたということはできず、その後のBによる暴行もABの共謀に基づくものと認められるとし、被告人Aに傷害致死罪の適用を認めました(この事案で、仮に共犯関係の解消が肯定されれば、立ち去ったAには、C死亡の結果については責任を負わず、傷害罪にとどまる可能性があります)

(3) 関与の程度を明らかにする

共謀の認定には、関与者の具体的な役割・寄与の程度が重視されます。自ら実行行為を行った者と同程度の重要な役割・重大な寄与があったとは言えない場合は、共謀共同正犯は成立せず、従犯として処罰されることになります。

そこで、弁護士としては、被疑者・被告人の関与の程度、役割、結果への寄与が大きいとは言えないことを主張して争うことになります。

(4) 取り調べでの黙秘権の行使をアドバイス

共犯事件の場合、捜査官が、その事実もないのに「Aは犯行を自白したぞ。おまえも共犯者だと言っているぞ」との尋問を行う場合があります。
このような取り調べは許されるべきではありませんが、身柄を拘束されている場合は、この偽計の言葉に動揺してしまい、事実と異なる供述をしてしまう危険があります。

この危険を回避するには、被疑者に保障された黙秘権を行使することが最大の防御方法となります。

黙秘権とは?黙秘権を行使するメリット・デメリット

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(5) 接見禁止への対応

共犯事件の被疑者については、裁判官が弁護士以外との接見(面会)を禁止する命令を発する場合が珍しくありません。
これは面会を通じて、外部にいる共犯者に証拠の隠滅を指示するなどの危険性があると判断されるためです。

この面会禁止命令に対しては、準抗告という命令の取消を求める不服申立てが可能です。

また、裁判官は、その職権で禁止を解除することができるので、弁護士は、接見禁止解除の申立てを行い、裁判官の職権発動による面会禁止命令の全部または一部の解除を求めます。

接見とは?|被疑者との接見は弁護士に相談を

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5.まとめ

犯罪の共犯との嫌疑をかけられた場合、共犯者同士が通じて口裏を合わせたり、互いの証拠を隠滅したりする危険が高いと判断され、逮捕・勾留されてしまう可能性が高くなります。

また、黙秘権のように法律上保障された権利も、被疑者が権利の存在を知り、十分に理解しなくては行使することは困難です。

早期に弁護士を選任し、弁護士と接見すれば、このような法的権利や手続の進行について、的確なアドバイスを受けることができます。
共犯事件の被疑者となった場合には、早期に、刑事事件に注力する弁護士に弁護をご依頼ください。

6.共犯・共謀に関する実際の質問

  • Q.投資詐欺の共犯として通知書が届いたが、どうすればいい?

    先日に、投資詐欺の事件に関して、被害者側の弁護士からの通知書が届きました。
    被害額はなんと7,229万円で、これを2週間以内に全額支払ってくださいと書かれており、怖くて不安な状態です。共犯者とされており、2週間以内に支払いか連絡が無い場合は法的手段をとる(刑事告訴をする)と書かれています。

    投資詐欺を行った記憶はありませんが、去年、とある人物に口座情報を教えてしまい、その口座が今になって使われたのではないかと思います。
    そこで、警察へ赴き、事情聴取と厳重注意を受けた上で、「いつも通りに過ごしていいよ」と言われました。その際に、もうこのようなことは二度としないと警察の方と銀行様の方に言いました。

    そうは言っても、共犯者とされ損害賠償請求が来ている以上、どうしたらいいか分かりません。被害額は到底私に支払えるような金額ではなく、どうしたら良いでしょうか?払わなければ捕まってしまうのでしょうか?

  • A.民事の損害賠償責任を負うため、破産を検討するべきです。

    本件については、投資詐欺についての共謀共同正犯(刑事責任)はおそらく成立しないのではと思います。しかし、共同不法行為に基づく民事の損害賠償責任はあるように思われます。

    被害者側の代理人弁護士は、質問者様への通知書により、民事での損害賠償請求をしているものと思われます。民事の共同不法行為は、過失でも成立します。

    莫大な賠償額ですから、支払えなければ破産での免責を検討する必要があると思いますが、この点は破産を多く取り扱っている弁護士に免責の可否をご相談ください。

    なお、口座譲渡自体は犯罪収益移転防止法違反となります。しかし、これについては警察は立件しないとのことですから、(先はどうなるかはもとより不明ですが)現状では安心していいのではと思います。

  • Q.実行犯と共謀して財布を盗もうとしたが、起訴されますか?

    実行犯と共謀をして窃盗を起こしました。飲食店で寝ている人を見つけて私が実行犯に伝え、その実行犯が財布を盗む(スる)、という手口です。
    しかし、実行犯の犯行は店員に目撃されており、実行犯はその場で店員に取り押さえられ、逃げようとしたところで店員に怪我を負わせてしまいました。

    実行犯が現行犯逮捕されたことをきっかけに、私もその後、逮捕されることになりました。

    この場合、どうすれば起訴を免れることができますか?

     

  • A.弁護士に依頼して早期の示談交渉をするべきです。

    今回の実行犯の犯行態様は「仮睡盗=外出先で居眠りしている人から盗むこと」で極めて悪質です。この場合、示談は成立しても起訴されてしまう可能性があります。
    しかし、起訴までの間に示談を成立させていれば、早期に保釈請求を通すことができますので、速やかな社会復帰を果たしたうえで公判(刑事裁判)に臨むことができます。

    以上より、なるべく早期に弁護士へ依頼をし、被害者との示談交渉に取り組んでもらうことがおすすめです。

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