大麻の刑事弁護全般
ほんの少しの好奇心から大麻に手を染めてしまい、ある日突然、警察から連絡が来たり、大切なご家族が逮捕されてしまったりするケースは後を絶ちません。
近年、日本国内における大麻の取り締まりは急速に厳罰化の傾向を強めており、「知らなかった」「一度だけだから」という言い訳は一切通用しないのが現状です。
もし、ご自身やご家族が大麻事件に関与してしまった場合、
「このまま逮捕されて会社や学校をクビになってしまうのか」
「前科がついて人生が台無しになるのではないか」
という、目の前が真っ暗になるような強い不安を抱えられていることと思います。
大麻事件は、初期対応のスピードがその後の人生を大きく左右します。警察の捜査が進む前に、あるいは逮捕されてから一刻も早く弁護士が介入することで、「逮捕・勾留の回避」「早期の釈放」「不起訴処分や執行猶予の獲得」といった最善の結果を目指すことが可能です。
大麻事件の違法性や逮捕のリスク、実際の処分内容から、弁護士がどのような弁護活動を行えるのかまで、詳しく解説します。
1.大麻の違法性
インターネットやSNS上では、「大麻は海外の一部地域で合法化されている」「タバコやアルコールより依存性が低い」といった、誤った情報や安易な書き込みが散見されます。しかし、日本国内において大麻に関する行為はきわめて重い犯罪です。
これまで、大麻の規制は主に「大麻取締法」によって行われてきましたが、近年の若年層を中心とした大麻乱用の拡大を受け、法律が劇的に改正・厳罰化されました。
かつては、大麻を「所持」「譲渡」する行為は処罰される一方で、大麻を「使用(吸う・摂取する)」すること自体には罰則がありませんでした。
しかし、法改正により、大麻取締法は「大麻草の栽培の規制に関する法律」という名称に変わり、「大麻施用罪(大麻使用罪)」が新設されました。また、所持や譲渡については、「麻薬及び向精神薬取締法」による規制に移行しました

[参考記事]
大麻の所持・使用の罪の違い|所持せず使用とはどういうこと?
現在の大麻事件における主な罰則は、以下の通りです。
輸出入、栽培、製造
非営利目的の場合:1年以上10年以下の拘禁刑
営利目的の場合:1年以上の有期拘禁刑若しくは情状により500万円以下の罰金又はその両方譲渡、譲受、所持、使用
非営利目的の場合:7年以下の拘禁刑
営利目的の場合:1年以上10年以下の拘禁刑若しくは情状により300万円以下の罰金又はその両方
現在は、警察の尿検査などで大麻の成分が検出されれば、手元に大麻を持っていなかった(所持していなかった)としても、それだけで逮捕・処罰されるリスクが生じます。

[参考記事]
大麻の譲渡・譲受・売買の証拠とは?
このように、大麻を取り巻く法的環境は以前とは比べものにならないほど厳しくなっています。「一度きりだから」「友達に勧められただけだから」という理由で許されることは一切ありません。
法改正によって取り締まりが強化された今、大麻事件で警察の捜査対象になってしまった場合は、すぐに刑事事件の経験が豊富な弁護士に相談し、適切な防御策を講じる必要があります。
※許可を受けた大麻草採取栽培者、大麻草研究栽培者は、一定の目的のために大麻の栽培等が許されます。

[参考記事]
薬物事件を取り締まる法律の種類と刑罰
2.大麻で逮捕・勾留される可能性
他の刑事犯罪(軽度の窃盗や傷害など)に比べ、大麻事件は、警察に発覚した後に逮捕・勾留(長期間の身柄拘束)される可能性は極めて高いです。
(1) なぜ大麻事件は逮捕されやすいのか?
裁判所が逮捕・勾留を認める大きな基準の一つに、「証拠隠滅の恐れ」があります。
大麻をはじめとする違法薬物は、トイレに流す、燃やす、あるいは売人や仲間に連絡して口裏を合わせるといった方法で、簡単に証拠を隠滅できてしまいます。
そのため、警察は「証拠を隠される前に身柄を拘束しなければならない」と判断し、原則として逮捕に踏み切るのです。
(2) 逮捕されてからの「時間との戦い」
大麻事件で逮捕されてしまうと、以下のようなスケジュールで手続きが進行します。
まず、被疑者を逮捕した警察は、必要な捜査や取り調べを行います。この間、外部(家族や友人)との連絡は一切遮断されます。
警察は、逮捕から48時間以内に検察官に事件を送致します(送検)。
検察官は捜査を引き継ぎ、引き続き身柄拘束が必要であるかどうかを検討します。
ここで検察官がさらに身柄を拘束する必要があると判断すると、送致から24時間以内に、裁判所に「勾留請求」を行います。
裁判所に勾留が認められると、起訴か不起訴かが決まるまで約2〜3週間、留置場から出られなくなります。
勾留期間は原則10日間で、延長が認められれば最大20日間となります。
逮捕から最大23日間に及ぶ身柄拘束を受ければ、会社や学校を無断欠勤・欠席せざるを得なくなります。その結果、「会社を解雇される」「学校を退学処分になるといった、取り返しのつかない社会的制裁を受けるリスクが跳ね上がります。
(3) 弁護士の早期介入で「在宅捜査」へ
逮捕直後の72時間以内に弁護士が介入し、裁判所や検察官に対して「本人は深く反省している」「証拠はすでに押収されており、隠滅の恐れはない」「家族が身元を引き受けて監督する」と強く主張すれば、勾留を阻止(釈放)できる可能性は0ではありません。
釈放されれば、普段通り社会生活を送りながら捜査を受ける「在宅捜査」に切り替わり、長期勾留のリスクを避けることができます。
3.大麻事件の処分内容
警察や検察による捜査が終わると、検察官がその事件をどう処分するか(裁判にかけるかどうか)を決定します。
大麻事件の処分内容は、主に以下の3つに分かれます。
(1) 不起訴処分
検察官の判断により、事件を裁判にかけずに「今回はおとがめなし」とする処分です。「起訴猶予」とも呼ばれます。
初犯であり、大麻の所持量や使用量がごく微量で、本人が深く反省しており、さらに「家族の厳重な監視があるため再犯の恐れがない」と判断された場合なら、大麻事件でも不起訴処分を獲得できる可能性はあります。
不起訴になれば前科はつきません。

[参考記事]
起訴猶予とは?不起訴・無罪との違い
(2) 執行猶予判決
大麻の所持や使用の罪には「罰金刑」という選択肢がありません(※営利目的がない場合)。そのため、起訴されてしまった場合は、略式手続(罰金を払って終わりの処理)にはならず、必ず「刑事裁判」が開かれることになります。
しっかりと反省を示し、再犯防止の環境が整っていれば、「拘禁刑1年6ヶ月・執行猶予3年」などといった執行猶予付きの判決が下されるケースが多いです。
執行猶予ならば、ただちに刑務所(拘禁施設)に入ることは免れますが、「前科」は一生残ってしまいます。

[参考記事]
執行猶予とは?執行猶予付き判決後の生活について(仕事、旅行)
(3) 実刑判決(ただちに刑務所・拘禁施設へ収容)
以下のような悪質なケースでは、初犯であっても執行猶予がつかない「実刑判決」となり、刑務所に収容される可能性が極めて高くなります。
- 営利目的(密売やSNSでの転売など)が認められる
- 所持していた大麻が大量である
- 栽培や密輸入の主犯格である
- 過去に薬物犯罪の前科がある(再犯)
大麻事件の処分において最も重要なのは「起訴される前の弁護活動」です。検察官が起訴・不起訴の判断を下す前に、弁護士がどれだけ有利な証拠や反省の態度、再犯防止策を提出できるかが、処分の大きな分かれ道となります。

[参考記事]
大麻で逮捕された!必ず懲役刑になるのか?
4.大麻事件の刑事弁護内容
大麻事件において弁護士が果たすべき役割は、単に「罪を軽くすること」だけではありません。
逮捕や長期勾留による社会的影響を防ぎ、ご本人の権利を守りながら、二度と薬物に手を染めないための環境を整えることまですべてが、弁護士が行える「刑事弁護」の内容です。
大麻事件における刑事弁護は、大きく分けて以下の3つの柱から成り立っています。
(1) 身柄拘束からの解放(釈放)
大麻事件で逮捕・勾留されると、長期間にわたって外部との連絡を絶たれ、会社や学校に行けなくなるリスクが極めて高くなります。
弁護士は、警察や検察、裁判所に対して「証拠隠滅や逃亡の恐れがないこと」「同居の家族が厳重に監督すること」を主張し、逮捕の回避、あるいは逮捕されてしまった後の早期釈放(勾留の阻止)に向けて全力を尽くします。
(2) 取り調べに対する適切なアドバイス
警察や検察の取り調べは、時に威圧的であったり、誘導尋問が行われたりすることもあります。知識のないまま応じてしまうと、自分の意図とは異なるニュアンスの「供述調書」が作成され、裁判で圧倒的に不利になってしまう恐れがあります。
弁護士は逮捕直後から何度も接見(面会)を重ね、「何を話し、何を話すべきでないか」を明確にアドバイスし、ご本人が孤立無援の取り調べ室で不当な扱いを受けないよう守ります。
(3) 「贖罪寄付」や反省文による反省の証明
大麻事件には特定の「被害者」が存在しないため、一般的な犯罪のように「示談」によって許しを得ることができません。
そのため、「口先だけでなく、本当に反省している」という客観的な証拠を検察官や裁判官に提示する必要があります。
そこで有効なのが「贖罪寄付」です。
贖罪寄付とは、自分の罪を反省し、社会へ謝罪する意味を込めて、公的な団体(弁護士会や慈善団体など)に対して寄付を行う手続きです。
弁護士がこの贖罪寄付の手続きを適切にサポートし、証明書を「反省文」とともに検察・裁判所に提出することで、「本人は自らの罪を重く受け止め、社会的な償いを行っている」と評価され、不起訴処分の獲得や、判決での減刑に近づけることができます。
(4) 再犯防止と社会復帰への環境づくり
「大麻を二度と使わない」という約束を口頭で伝えるだけでは、捜査機関や裁判所を納得させることはできません。
大麻をはじめとする薬物事件は、本人の強い意志だけで解決することが難しい「依存症」の側面を持っています。そのため、刑事手続きの対応だけでなく、「二度と大麻に手を染めない環境づくり」をサポートすることも重要な弁護内容です。
ご家族の協力体制を整えたり、専門の医療機関や更生支援団体と連携したりすることで、裁判所に「これなら再犯のリスクはない」と確信させるとともに、ご本人が本当の意味で社会復帰できるよう伴走します。
5.大麻事件の弁護活動例
大麻など薬物犯罪の事例でよくあるのが、「車の中に積んでいた大麻を職務質問の際に発見され、そのまま逮捕される」という事例です。
ある日Aさんは、出社前に立ち寄ったコンビニで警察官に職務質問を受け、車の中にあった大麻が見つかってしまい、当時の大麻取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕をされてしまいました。
当然ながらAさんが会社に出社できなかったので、不思議に思った家族などが警察に問い合わせたところ、Aさんが大麻取締法違反の疑いで逮捕されたことを知りました。
Aさんの家族が弁護士に相談・依頼をし、依頼を受けた弁護士は、その日のうちにAさん本人と警察署内で接見を行いました。
Aさんは勾留をされてしまいましたが、弁護士は、Aさんが定職についており今後も会社を解雇されることがないこと、ご家族がいて今後の生活面での指導・監督を誓っていることなどを書面で作成し、検察官に対し直接面談をして、起訴しないように申し入れを行いました。
その結果、検察官は、最終的にAさんを不起訴処分としました。
厳罰化が進む大麻の犯罪であるにも関わらず、本件でAさんを最終的に不起訴処分とすることができたのは、迅速かつ丁寧な対応を行ったからです。
Aさんが起訴されるまでは、逮捕後「23日間」という非常に短い期間しかありませんが、その間に弁護士は「会社の方から今後も雇用を継続する旨の書面を作成してもらう」「家族が今後も生活指導・監督をしていく旨の書面を作成してもらう」という活動を行い、その上で、検察官と時間をとって直接面談を行い、Aさんを今回限りは不起訴としてほしい旨をしっかりと伝えた、という弁護活動が、不起訴処分という結果を導くことができた理由です。
(※事例内容については、実際の相談例ではございませんのでご了承ください。)
6.終わりに
大麻事件の刑事弁護では、「法律や薬物事件に関する専門知識」と「一刻を争うスピード感」が不可欠です。
弁護士は、被疑者ご本人やその家族の味方として、警察の厳しい取り調べから被疑者の権利を守り、最善の結果へと導くために活動します。

