不同意性交等(強制性交等) [公開日]2026年7月29日

不同意性交等罪の証拠がない場合|立証責任・証拠不十分の場合の対応

不同意性交等罪の証拠がない場合|立証責任・証拠不十分の場合の対応
弁護士 泉義孝
監修 弁護士 泉 義孝
所属:第二東京弁護士会
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取引先の女性を食事に誘って、お酒も飲み、いい雰囲気になった。2軒目、3軒目とはしごを重ね、だめもとでホテルに誘ったところついて来てくれた。
ところが、数日経ってから、警察から連絡があり、不同意性交等罪の被害届が出ている、事情を聞きたいと言われた。

自分は暴力を振るっていないし、無理やり行為に及んだわけでもないのに、今さら不同意だったと言われてしまったら、このまま逮捕されてしまうの?

このような不安から法律相談に来られる方は、実は少なくありません。
まだ改正されたばかりの不同意性交等罪には様々な問題点が指摘されているため、被疑者となってしまったならば慎重に対応することが大切です。

この記事では、意に反して(合意のはずなのに)不同意性交等罪の嫌疑がかかったときの危険性と、不起訴を得るためにどのような証拠を集めれば良いのか、正しい対応方法について説明します。

1.不同意性交等罪は「証拠がない=無罪」ではない

2023年、不同意性交等罪(刑法177条)が成立しました。
この改正では、相手の同意を欠く性的行為として処罰される範囲がこれまでよりも著しく拡大されましたが、「違法行為と適法行為の限界が不明瞭すぎる」という問題が指摘されています。

さらに、事案によっては、客観的な証拠が存在しなくても必ず無罪になるとは限らない、という危険性があります。

不同意性交等罪とは?|刑法改正による変更点と構成要件

[参考記事]

不同意性交等罪とは?|刑法改正による変更点と構成要件

2.不同意性交等罪における検察官の立証責任

(1) 刑事訴訟における検察官の立証責任

刑事事件で被告人を有罪とするには、犯罪の成立要件のすべてについて、その存在を検察側が立証する責任があり、検察官が立証できない限り、無罪となります(刑訴法336条)。
これを刑事裁判における検察官の「立証責任(挙証責任)」と呼びます。

これは刑事訴訟における大原則である「無罪推定原則」を根拠とします。

犯罪の証明がない限り、国民が罪を問われることはないとすることで、冤罪による人権侵害を防止するのです。
これは当然ながら不同意性交等罪にも適用されます。

(2) 同意がないだけでは不同意性交等罪にはならない

不同意性交等罪は、たんに被害者が性交などに「同意していなかったこと」だけをもって犯罪として処罰するものではありません。

不同意性交等罪の行為類型は多岐に渡りますが、代表的な例は、「①加害者が法定の「原因行為」によって、被害者を「困難状態」に陥れたうえで、性交などに及んだ場合」「②被害者が法定の「原因事由」によって、すでに「困難状態」となっていることに乗じて、加害者が性交などに及んだ場合」であることが必要です。

1 困難状態とは

困難状態とは、「性交などに同意しない意思を形成すること」「意思を表明すること」「意思を貫徹すること(意思をつらぬくこと)」が困難な状態を指します。

このような状態での性交などでなければ、たとえ同意がなかったとしても、不同意性交等罪とはならないのです。

2 原因行為・原因事由とは

さらに、被害者がこのような困難状態となった原因は、法定された9類型の原因行為・原因事由であることが要求されています。

たとえば、その原因行為・原因事由の1類型として、「アルコールもしくは薬物を摂取させること、または、それらの影響があること」が挙げられています。

この場合、たんに、被害者が性交などに同意していなかったというだけで犯罪となるわけではなく、①加害者が、被害者にアルコールを飲ませ、②その結果、被害者が不同意の意思を形成したり、表明したり、貫徹したりすることが困難な状態とさせたうえで、③性交などに及んだことが犯罪行為なのです。

しかも、不同意性交等罪は故意犯ですから、①〜③のすべてについて、加害者の故意、すなわち加害者に事実の認識があったことも必要です。

このように、①〜③の各事実と、それらに対する加害者の故意が、不同意性交等罪の成立要件であって、検察官はそのすべてについて証拠をもって立証する責任があり、立証できない限りは無罪判決となります。

アルコールの事例の場合、飲酒したアルコールの種類と度数、飲酒の量と時間、酩酊の度合いなどの立証を通じて、被害者が真に「困難状態」だったのか否かを問われることになります。

したがって、たんに「そんなつもりはなかった」「同意していなかった」と主張されるだけで、不同意性交等罪で有罪となってしまうわけではありません。

(3) 意に反して不同意性交等罪とされてしまう危険

ただし、「それなら簡単に不同意性交等罪にはならないな」と楽観視することはおすすめできません。

たとえば、原因事由の一類型である「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること、または、それを憂慮していること」によって、被害者が不同意の意思を形成したり、表明したり、貫徹したりすることが困難な状態だったと主張された場合を考えてみてください。

性的行為の当事者が、雇主と従業員、上司と部下、発注者と下請けなどの経済的・社会的な上下関係にあることは、珍しくありません。

もちろん、あえてそのような立場を利用して性的関係を迫ることは強く非難され、処罰されるべきです。しかし、そのような力関係があっても恋愛関係となることは珍しくない以上、同意してくれているだろうと思って性的行為に及ぶことはありえます。

たとえ上下の立場がある関係でも、加害者としては、まさか「拒否すると不利益を受けると思って拒絶できない」状態のために応じてくれたとは、想像すらしていなかったという事態がありうるのです。

そうなると、被害者が「不利益を憂慮しての困難状態」にあったか否かは、まさに被害者の内心の問題となってしまいます。

もちろん性的行為にあたって、「逆らうとためにならないよ」とか「自分の立場を考えろ」などの威圧的言動があったことや、実際に過去に誘いを断って何らかの不利益を受けたなどの事実があれば「困難状態」を認定されても仕方ないとも言えます。

しかし、そうでない限り、上下関係があるというだけなのに、意に反して不同意性交等罪とされてしまう危険があります。

(4) 自由心証主義で被害者の供述が信用される危険

特に、不同意性交等罪は、ホテルや車中など密室での行為が問題となり、目撃者や防犯カメラなどの証拠は存在しないことが多く、証拠の重要な部分を被害者の供述が占めるという事例が珍しくありません。

実は、被害者の供述する内容を真実であると信用するか否かは、裁判官の自由なのです。これを刑事裁判における「自由心証主義」と呼びます。
検察官によって提出された証拠の価値(信用性・証明力)を如何に評価するかは、原則として裁判官に一任されているのです。

もちろん、何らの制限もないとまでは言えず、合理的な評価・経験則に沿った評価でなくてはなりませんが、明白に不合理でない限りは裁判官が自由に判断できるのです。

このため、被害者の供述内容が「迫真的で信用できる」「一貫しており信用できる」「虚偽を述べる理由がない」などの抽象的な理由で信用され、不同意性交等罪の有罪判決を支える有力な根拠となってしまうことがあるのです。

したがって、誰も目撃者がいないし、動画や録音もなく、拒否している客観的な証拠がないのだから大丈夫と楽観することは、非常に危険です。

合意の上の性行為で訴えられた!不同意性交等罪で逮捕される可能性

[参考記事]

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3.「嫌疑不十分(不起訴)」を勝ち取るために必要な証拠

もし、性的行為の相手から「同意していなかった」と主張され、不同意性交等罪の嫌疑をかけられた場合、できるだけ早く弁護士を選任してこちらに有利な証拠の収集を開始するべきです。

「犯罪事実は検察官が立証する責任があるから大丈夫」「相手の話だけで、何の証拠もないから問題ない」などと考えることが危険であることは、これまで説明したとおりです。

むしろ、相手が「困難状態」ではなかったことや、積極的な同意があったことなど、犯罪が成立しないことを示す証拠を集め、捜査機関に示すべきです。

例えば、次のような証拠です。

  • 事件前後を通じ、相手と交わしていた、親密な内容のメール・LINEなどのやりとり
  • 居酒屋、バーなどで、恋人同士のように不自然のない様子で飲酒していたという店員の供述
  • 現場周辺の防犯カメラに残った、仲良くホテルに入っていく姿の映像
  • 事件後も特にトラブルの様子なくホテルを退出したというフロント従業員の供述
  • 行為後、被害者が被害届を出す前に、執拗に示談金を要求してきたメールなど(示談金目当てで性行為には同意していたことを示す)

これらの証拠を示すことで、「同意していなかった」という主張の信用性に疑問を抱かせることに成功すれば、検察官から「嫌疑不十分(有罪が見込める証拠が足りない)」として不起訴処分とされる可能性が高くなります。

不同意性交等罪で不起訴になる可能性は?不起訴・起訴の事例を解説

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4.捜査機関の誘いに乗らず、弁護士へ相談を

不同意性交等罪の嫌疑が事実ではない場合は、被疑事実を否認し、徹底的に戦うべきです。

「素直に認めれば軽く済む」「否認を続けるなら逮捕せざるを得なくなるぞ」などの常套句を用いる警察の取り調べに対しては、被疑者に保証された権利である「黙秘権」を行使して、一切の質問に答えないことがもっとも有効な対処方法となります。

ただ、黙秘権を使えば、捜査官による取り調べは、より高圧的・より苛烈になる危険もありますし、そもそも黙秘権がどのような権利で、どのように行使することができるのか、十分な知識を持つ方は少ないでしょう。

逮捕された場合に限らず、任意の取り調べでの出頭要請があった場合でも、必ず弁護士を依頼し、アドバイスをもらうべきです。

黙秘権とは?黙秘権を行使するメリット・デメリット

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不同意性交等罪の嫌疑がかかった事案で、「相手の同意があった」という場合は、できるだけ早期に刑事弁護を専門とする弁護士にご相談ください。

不同意性交等の刑事弁護全般

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