児童買春・援助交際の罪|逮捕される?

最近は、LINEやその他のSNSを通じて、簡単に少年少女と知り合うことができるようになってしまっています。
しかし、たとえ出来心や興味本位であっても、18歳未満の者に対し児童買春(援助交際)をすると、「ある日突然警察官が家にやってきて、逮捕されてしまった」という事態になる可能性があります。
今回は、児童買春に当てはまる行為や、児童買春で成立する犯罪、逮捕されてしまった場合に不起訴処分や執行猶予を獲得する方法について、刑事事件に精通している弁護士が解説します。
1.児童買春・援助交際とは?
そもそも「児童買春」とは、児童(性別は問いません)と性交渉などを行い、対価としてお金や物品を与えることです。性交渉などの「交際」の対価として金銭などの「援助」をするので、「援助交際」とも呼ばれます。
ネット上では、「援交」や「ウリ」などと表現されることもあります。
援助交際は俗語であり、厳密な定義のある法律用語ではありませんから、援助を受ける者の年齢も決まってはいません。
ただ、一般に未成年者の場合を指すことが多いようです。
援助交際は、必ずしも性交渉を伴うとは限りません。ときにはデートをするだけで終わるケースもあるでしょう。
ただ、援助交際の多くは性交渉を伴い、それを目的にしています。性交渉を伴うケースを、要するに「売買春」と言います。
最近ではSNSなどを通じて簡単に、リアル社会では知り合うきっかけがないような中学生、高校生と知り合うことができるので、児童買春のハードルがどんどん下がっている現状があります。
ネット上にも児童買春・援助交際を助長する掲示板などのサイトがあるので、これまでの社会なら児童買春とはおよそ縁の無いサラリーマンなどでも、ふとしたきっかけで児童買春や援助交際に手を出してしまうのです。
2.児童買春で成立する犯罪
では、児童買春をするとどのような犯罪が成立するのでしょうか?
まず、性的な行為をしていない援助交際ならば犯罪にはなりません。たとえ未成年者に対価を支払っていても、一緒に食事をしたり、映画を見たりという行為を禁ずる法律はありません。
また、相手が18歳以上であれば、対価を渡して性的な行為をおこなうことも犯罪にはなりません。
問題は18歳未満の者と性交渉等をしてしまう児童買春のケースです。この場合、以下のような犯罪が成立する可能性があります。
(1) 児童買春の罪
18歳以下の者にお金を渡して性交渉等をすると、児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)に違反します。
児童買春の罪の刑罰は非常に重く、5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金刑です。
近年は性犯罪が厳罰化され、児童買春に対する検察の目も厳しいものになっていますので、初犯でも実刑となってしまう可能性があります。
(2) 淫行条例違反
各都道府県では、18歳未満の者に対する反倫理的な性交等を禁止する、通称「淫行条例」を定めています。
例えば、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」では、「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない」として、その違反に対し「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」を定めています(同条例18条の6、24条の3)。
18歳未満の者を誘惑したり、単に自己の性的欲望を満足させる対象として扱ったりする性的行為は「みだらな」性的行為として処罰対象とされているので、児童買春の多くはこれに該当することになります。
(3) 不同意わいせつ罪(刑法176条)
援助交際で会った相手が嫌がっているのに、脅したり暴力を振るったりして、被害者の性的羞恥心を害するわいせつな行為をした場合には、被害者の年齢を問わず、刑法上の不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)が成立します。この場合、実際の性交渉を行っていなくても犯罪になります。
不同意わいせつ罪の刑罰は、6カ月以上10年以下の懲役刑となっており、罰金刑はありません。起訴されれば必ず裁判となっているため、非常に重い犯罪と言えます。
また、相手が13歳未満のケースでは、被害者の同意があり、暴行や脅迫による手段を使っていなくても、不同意わいせつ罪が成立します。
(4) 不同意性交等罪(刑法177条)
援助交際で会った相手が嫌がっているにもかかわらず、暴行や脅迫の手段で反抗を著しく困難にして性交渉をした場合には、不同意性交等罪(旧強制性交等罪)が成立します。
被害者が13歳未満の場合には、被害者の同意があり、暴行や脅迫の手段を使っていなくても、不同意性交等罪となります。
この犯罪は、過去の「強姦罪」のことであり、2017年に法改正が行われたものです。その際、刑罰が厳罰化され、5年以上の有期懲役刑とされました。
懲役刑で執行猶予を付けるには、基本的に3年以下の刑期である必要がありますので、不同意性交等罪になった場合には、自首・中止犯・酌量減軽などの法律上の減軽事由がない限り、執行猶予はつかないことになります。

[参考記事]
不同意性交等罪とは?|刑法改正による変更点と構成要件
(5) 出会い系サイト規制法違反
援助交際をするときには、ネットの出会い系サイトを利用するパターンが多いでしょう。
しかし、出会い系サイトにおいて、児童を相手に児童買春を誘う書き込みをすると、それだけで犯罪になります(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律)。刑罰は100万円以下の罰金刑です。
(6) 児童ポルノ製造罪
児童買春を行うときには、調子に乗って性交渉の様子等を録画してしまうことがあるかもしれません。そのような場合、その行為が別途「児童ポルノ禁止法」の中の「児童ポルノ製造罪」に問われる可能性があります。
児童ポルノ製造罪の刑罰は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑となっており、やはり非常に重いです。
3.児童買春が発覚し逮捕された際の流れ
次に、児童買春で逮捕された後の流れを見てみましょう。
(1) 逮捕から勾留まで
児童買春が発覚し逮捕されると、児童買春のような重大な犯罪は引き続いて勾留される可能性が高いです。
逮捕後、警察から検察官に送られるまでの時間制限は逮捕から48時間以内、検察官が裁判官に勾留請求するまでの時間制限は24時間以内(かつ逮捕から72時間以内)です。つまり、逮捕後に勾留請求されるまでの期間は最大3日間(72時間)です。
勾留請求を受けた裁判官が勾留を決定し、勾留状が執行されると、その時点で身柄拘束は「逮捕」から「勾留」へ取扱いが変わり、家族との面会も原則可能となります。
それまでの逮捕段階では、家族であっても面会はできません。逮捕期間に接見(面会)することができるのは弁護士だけです。
(2) 勾留から処分の決定まで
勾留期間は、勾留請求の日から原則10日です。その間は留置場に入れられて、様々な取り調べを受け続けることになります。
もっとも、児童買春では10日で捜査が終わらないことも多く、この場合、さらに10日間(合計20日間)勾留が延長されることになります。
すると、逮捕後の身柄拘束期間は最大23日間となります。
23日の身柄拘束期間が終わるまでに、検察官は「①起訴するか」「②不起訴にするか」「③処分を保留したまま釈放するか」を決定します。
なお、逮捕後勾留が行われずに、あるいは勾留後釈放されて在宅捜査(在宅事件)となった場合には、任意のタイミングで警察官、検察官に呼び出されて取り調べを受け、供述調書が作られます。その後、検察官が起訴するか不起訴にするかを決定します。
(3) 起訴されれば正式裁判か略式裁判に
児童買春事件では、被害者との示談が成立しても起訴されてしまうケースが多いです。
基礎となった場合、正式裁判と略式裁判のどちらかの手続きが進みます。
略式裁判の場合、開会の法廷での正式裁判を受ける必要はなく、書類上の手続だけで罰金刑を受けることになります。身柄拘束を受けていても、略式起訴された時点で釈放され、罰金を納めることになります。
以後は、自宅で普段通りに生活を送ることができますし、罰金を支払ったら刑罰を終えたことになるので負担が軽いです。
児童買春や出会い系サイト規制法違反が成立しているに留まり、さらに初犯のケースならば、略式起訴されて略式裁判による罰金刑が適用される可能性もあります。
しかし、過去にも援助交際がらみでの前科があったりするケースだと、実刑判決を受けることも十分あり得ます。
また、罰金でも有罪判決ですから、前科はついてしまいます。
一方、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立する場合には、これらの罪には罰金刑がないため、確実に正式裁判となります。
身柄拘束を受けたまま正式裁判となると、保釈が認められない限り拘置所に勾留されたままになってしまいます。
4.児童買春で逮捕された場合の対処方法
(1) 不起訴処分や執行猶予を目指す
児童買春をして逮捕されたなら、真摯に反省し、「不起訴処分」の獲得を目指しましょう。
不起訴を得ることが厳しいとされる児童買春罪で検挙された場合でも、不起訴処分となる可能性はあります。検察官に不起訴にしてもらうことができれば、その後は罪に問われる可能性がなくなりますし、前科がつくこともありません。
不起訴処分を獲得できなかった場合には、実刑を免れるための対処が必要です。
不同意わいせつ罪が成立するケースなどにおいても、被害者との示談を成立させておけば、執行猶予を得られる可能性が高くなります。
(2) 被害者家族との示談
不起訴処分や執行猶予を獲得するためのもっとも有効な方法は、被害者と示談をして、宥恕を得ることです。
宥恕とは、被害者に加害者を許すとの意思表示をしてもらうことで、通常、示談書に「宥恕する」「寛大な処分を望む」などの文言を記載してもらうことになります。
ただ、児童買春の場合、自力で示談をすることはほとんど不可能と言えます。
まず、児童買春では相手が18歳未満ですから、被害者本人が示談することはできません。法定代理人である親が対応します。
ところが、親は児童買春の加害者に対し激しい怒りと嫌悪感をもっているものですから、示談になかなか応じてくれません。加害者側が連絡を入れても取り合わないことがほとんどです。
もう1つの問題は、加害者が被害者の連絡先を知らないことです。
援助交際は、通常はネット上の連絡によって、お互いの本当の素性も知らないままに会うものです。相手は偽名のケースが多いですし、住所や親の連絡先も知らないということがほとんどでしょう。
加害者やその関係者(家族など)が、警察や検察に被害者の連絡先を教えて欲しいと願っても絶対に教えてくれませんから、こうなると自ら示談はできません。
(3) 弁護士による示談交渉のメリット
児童買春で被害者(の親)と示談を進めるためには、必ず弁護士に依頼すべきです。
それも、こうした性犯罪に強みのある、刑事事件専門の弁護士を選択することが大事と言えます。
被害者の連絡先がわからない場合には、弁護士は警察官・検察官を通じて、被害者に弁護士限りで連絡先を開示してもらえるよう要請します。被害者側が承諾してくれたら、検察・警察は、弁護士には連絡先を教えてくれます。
こうして、弁護士が速やかに被害者に連絡を入れます。
示談交渉では、まずは被疑者がしっかりと反省していること、謝罪の意思があることを伝えます。そして、相手の気分を害しないように配慮しながら、被疑者の生活の現状や、これまで真面目に生きてきていること、家族がいること、今後は絶対に同じことを繰り返さないと誓っていることなどを伝えて、慰謝料を支払う代わりに許してほしいと希望している旨を正直に伝えます。
相手が示談に応じなくても諦めずに何度も説得を重ねて、最終的に示談を成立させることが弁護士の使命です。
→ご相談内容「示談したい」

[参考記事]
児童買春に強い弁護士|弁護士に依頼する場合のメリット
5.まとめ
児童買春の刑罰が非常に重いのは、相手が児童だからということもあります。
児童は自分では判断能力が未熟なので、社会が保護しなければならないという考え方が根底にあります。
そのため、児童の利益を損なうような行為をする児童買春は厳しく処罰されるのです。
児童買春をしてしまった場合、いずれは逮捕される可能性が高いです。実際に逮捕されてしまったときには、早めに被害者と示談を進めることが重要です。
児童買春で被害者との示談交渉を進めるためには弁護士による対応が必須となりますので、お早めに刑事事件に強い泉総合法律事務所の弁護士泉義孝にご相談ください。