痴漢・不同意わいせつ [公開日]2018年1月11日[更新日]2025年4月21日

夜道での路上痴漢は何罪になる?|逮捕される可能性と刑罰

夜道での路上痴漢は何罪になる?|逮捕される可能性と刑罰

「痴漢」というと、電車やバス内での女性の身体に触れる行為を想像される方が多いかもしれませんが、実際には路上で痴漢行為が行われることもかなり多いです。
「路上痴漢」と呼ばれる行為は、迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪に問われますので、罪を犯してしまった際は早急に対策をする必要があります。

では、具体的にはどういった行為が「路上痴漢」となるのでしょうか?
また、逮捕・起訴を避けるためにはどうすればよいのでしょうか?

本記事では、夜道などにおける路上痴漢について、刑事事件に詳しい弁護士が解説します。

1.路上痴漢とは?

「路上痴漢」とは、読んで字のごとく路上において行われる痴漢行為のことです。
たとえば、以下のような行為が典型例です(実際には男女の性別を問いません)。

  • 路上で通りすがりの女性の胸・お尻に触る
  • 道端で後ろから女性に抱きつく、押し倒す
  • 自転車に乗っていて、すれ違いざまに女性歩行者の胸をつかむ
  • 自転車に乗っていて、追い越す際にお尻を触る
  • スカートをめくる

2.路上痴漢は何罪になるか

路上痴漢をすると、どのような犯罪が成立するのでしょうか?

(1) 迷惑防止条例違反

迷惑防止条例とは、暴力的行為やその他の迷惑行為を取り締まる都道府県ごとの条例です。各都道府県によって多少の違いはありますが、どの条例によっても、道路上のような公共の場所で他人の身体に触る痴漢行為は処罰対象となります。

東京都の迷惑防止条例における刑罰の内容は、以下の通りとなります。

通常の場合「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」(8条1項2号)
常習の場合「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(8条8項)

迷惑防止条例が適用されるのは、比較的悪質性が低い痴漢のケースです。たとえば、すれ違いざまに身体を触ったり、スカートをめくったり、自転車で追い越し際にお尻に触ったりした場合には、迷惑防止条例違反として立件されることが多いです。

(2) 不同意わいせつ罪

痴漢行為が悪質であると判断された場合には、不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)が成立します。
不同意わいせつ罪は、刑法に規定された犯罪類型であり、刑罰も重いです。6ヶ月以上10年以下の懲役刑のみであり、罰金刑はありません(刑法176条)

具体的には、「被害者の抵抗を著しく困難にする暴行や脅迫を用いてわいせつ行為を行った場合」です。わいせつ行為とは、人の性的羞恥心を害する行為です。

たとえば、夜道に一人歩きの女性に抱きついて押し倒し、衣服の下に手を入れて下腹部を触った場合は、抱きついて押し倒すという行為が「暴行行為」とされ、かつ下腹部を触るという「わいせつ行為」を行っていますから、不同意わいせつ罪が成立します。

ただし、暴行行為は、わいせつ行為と別途行われる必要はなく、わいせつ行為そのものでもかまわないと考えられています。
たとえば、自転車に乗ってすれ違いざまや追い越しざまに身体を触るケースでは、不意打ちのため被害者が抵抗できる余地のない暴行ですから、不同意わいせつ罪の成立が認められます。通行人の女性をしつこく追い回して身体に触り続けたような事案も暴行と言えます。

最近では、性犯罪が厳罰化していることもあり、思っても見ないケースで法定刑の重い不同意わいせつ罪で立件されることもありえます。

3.路上痴漢で逮捕されるケース

(1) その場で現行犯逮捕される

まず、犯行現場で現行犯逮捕される可能性があります。

その場で被害者が大声を出す、抵抗するなどした場合、周辺にいた住民や目撃者が取り押さえて警察に通報するケースもあります。
あるいは、被害者に反撃され取り押さえられる、被害者に追いかけられ逃げきれずに取り押さえられることもあります。

(2) 後日逮捕される

その場では捕まらなかったとしても、後日になってから通常逮捕される可能性があります。

たとえば、被害者が後日被害届を出し、警察が捜査を開始したとします。
捜査の結果、路上に設置してある防犯カメラ映像から犯人を特定できることがありますし、被害者や目撃者の供述から犯人が見つかるケースなどもあります。

この場合、警察が突然加害者宅などにやってくるのが通常です。警察署へ任意同行を求められたり、通常逮捕されたりすることとなります。

痴漢は現行犯以外で逮捕される?後日逮捕が難しい理由

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4.逮捕されたらどうなるか

路上痴漢で検挙された後、犯行様態が悪質な場合や、逃亡の恐れがあると判断された場合には、逮捕されて身体拘束の上で取り調べをされることがあります。

その後の手続きの流れは、犯罪の内容(悪質性・計画性など)や被害者の被害感情、加害者の生活環境、反省の程度などによって異なってきます。

(1) 逮捕されても勾留されない場合(在宅事件)

警察は、逮捕後に被疑者の取り調べを行い、48時間以内に検察官に被疑者の身柄を送致します。
検察官は、身柄送致を受けてから24時間以内(かつ逮捕から72時間以内)に、被疑者をそのまま勾留するべきかどうかを決定します。勾留するべきと検察官が判断した場合、時間内に裁判官へと勾留請求をしなければ、被疑者を引き続いて身柄拘束することができません。

勾留しないとされるのは、被疑者に逃亡の恐れ、証拠隠滅の恐れがない場合です。具体的には以下のようなケースです。

  • 犯行態様が悪質でなく、被害程度が軽い
  • 被害者の被害感情が強くない
  • 被疑者が初犯
  • 被疑者が定職に就いている
  • 被疑者が住居不定ではない
  • 被疑者に家族・身元引受人がいる

勾留されない場合には、逮捕をされても直ちに釈放されます。つまり、72時間以内には自宅に帰り、これまで通りの生活を送れるようになるということです。

ただし、その後も捜査自体は続きます。被疑者が在宅で生活をしながら、必要に応じて取り調べなどに対応するこのような手続きは「在宅事件」と呼ばれます。
在宅事件で必要な捜査が終了したら、検察官が起訴・不起訴の決定します。

在宅事件は身体拘束がない分、被疑者の精神的なストレスが軽減され、また、職場や学校に早く復帰することができます。
在宅事件のメリットは大きいため、刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼して勾留阻止活動をしてもらうことをお勧めします。

路上痴漢で在宅事件になった場合、多くのケースでは(迷惑防止条例違反ならば)略式裁判となります。

略式裁判とは、100万円以下の罰金刑の場合に適用される、書面上のみで行われる裁判です。在宅事件で略式裁判になると、実際に裁判が開かれることはありません。被告人に起訴状と罰金の納付書が送られてきますので、支払いをしたらそれで刑罰を終えたことになります。
ただし、この略式であっても、罰金の前科はつきます。

(2) 逮捕されて勾留が続く場合(身柄事件)

痴漢行為が悪質な場合や、不同意わいせつ罪が適用される場合、実際に一度逃亡している場合などには、逮捕後も引き続いて勾留される可能性が高いです。
この場合、留置場に身柄拘束され続けることとなります。

勾留期間は、基本的に勾留請求の日から10日ですが、10日では捜査に足りない場合はさらに10日延長することができます(合計で20日が限度です)。
20日の勾留期間が切れるまでに、検察官は被疑者の処分内容を決めなければなりません。

不起訴になったら釈放され、それ以上痴漢の責任を問われることはありません。
起訴をされれば、日本においては99%以上の確率で有罪となり、罰金刑や懲役刑が科せられます。特に不同意わいせつ罪の容疑で起訴されると、罰金刑はないため略式裁判にはならず、必ず正式裁判となります。

正式裁判では、被告人は起訴後交流が続き、裁判所に出頭しなければなりません。
不同意わいせつ罪の疑いをかけられた場合には、刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼して起訴自体を回避することが大切です。

痴漢で逮捕されるケース|逮捕された後の流れはどうなるか

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5.不起訴を目指す弁護活動

痴漢行為での起訴を免れるには、被害者と示談を成立させることが非常に重要です。刑事手続きにおいては、示談が成立していることが被疑者にとって非常に良い情状となるからです。起訴・不起訴の判断が行われる前に被害者との示談が成立すると、不起訴にしてもらえる可能性が高まります。

ただ、被疑者やその家族が自分達で路上痴漢の被害者と示談を進めることは、非常に困難なものです。
そもそも、被疑者は被害者の連絡先どころか顔さえ知らないということが多いですし、たとえ知っていたとしても被疑者が直接連絡すると被害者は強く拒絶することが予想されるためです。

そこで、刑事弁護経験豊富な弁護士に依頼して、被疑者の弁護人として被害者に連絡をしてもらって、示談を進めるようにしましょう。

弁護士であれば、検察や警察を通じて被害者の連絡先を教えてもらえることが多いです。
被疑者の弁護人として連絡を入れて被害者に会い、丁寧な対応をして着実に示談交渉を進めていくことができます。

6.路上痴漢の刑事弁護は弁護士へ

以上のように、路上痴漢でも悪質なケースでは不同意わいせつ罪として立件され、懲役刑に処せられる可能性があります。
初犯かつ迷惑防止条例違反が適用される場合、罰金刑にとどまる可能性も高いですが、それでも前科はついてしまいます。

これらの不利益を回避するには、被害者との示談が有効です。
また、逮捕・勾留で長期の身体拘束がされないように、勾留阻止や取り消しのための活動をする必要もあります。

泉総合法律事務所では、路上痴漢も含めた刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士が、迅速に刑事弁護に着手いたします。
是非、代表弁護士の泉義孝にご相談ください。

痴漢の刑事弁護は泉総合法律事務所、弁護士泉義孝まで

痴漢など絶対にしないと思っていても、ふと魔が差して痴漢をしてしまった、ということは誰にでもあり得ることです。迷惑防止条例違反の行為といえども、逮捕・起訴される可能性がありますし、処分が罰金であっても前科となります。

最終処分を不起訴など有利に導くためには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に弁護依頼をしてください。

泉総合法律事務所の弁護士、泉義孝は、刑事事件、中でも痴漢の弁護経験につきましては大変豊富であり、勾留阻止・釈放の実績も豊富にあります。

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という方は、お早めに泉総合法律事務所、弁護士泉義孝にご相談ください。相談料は初回無料です。

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