親告罪とは?非親告罪との違いをわかりやすく解説

刑事事件には、「親告罪」と「非親告罪」があります。
親告罪の場合、被害者と示談して告訴を取り下げてもらえれば、確実に不起訴となります。
一方、非親告罪ならば仮に被害者と示談をしても、絶対に起訴を免れるとは言えません(※ただし、非親告罪であっても被害者との示談成立には大きな意義があります)。
本コラムでは、親告罪と非親告罪の違い、親告罪とされる犯罪の例、親告罪と示談の関係などについて解説します。
1.親告罪とは?
親告罪とは、「告訴がなければ公訴を提起することができない」犯罪類型のことをいいます。
処罰するために被疑者を刑事裁判にかけることを「公訴の提起=起訴」と言います。
この起訴の権限を有する検察官には、諸般の事情を考慮して起訴するか否かを決める広汎な裁量が認められています。
しかし、犯罪が親告罪の場合は、被害者などの告訴権者が告訴を行わない限り、起訴することが許されません。
仮に、検察官が告訴のない親告罪の被疑者を起訴したとしても、裁判所は、これを不適法な公訴として、判決で公訴を棄却しなくてはなりません(刑事訴訟法338条4号)。
告訴とは、犯罪の被害者やその法定代理人(例えば、被害を受けた未成年者の親権者)等、その他一定の者が、捜査機関に対し犯罪事実を申告して、犯人の訴追・処罰を求める意思表示のことをいいます。
親告罪の告訴期間は、人を知った日から6ヶ月以内です(刑事訴訟法235条)。つまり、親告罪である犯罪について告訴をせずに6ヶ月経過した場合、検察官は起訴できなくなります。

[参考記事]
刑事告訴されたらどうなる?手続きの流れをわかりやすく解説
これに対し、被害者からの公訴がなくても検察官が起訴できる犯罪類型が「非親告罪」です。
ある犯罪が親告罪とされる場合は、その犯罪を定める法律に、「告訴がなければ公訴を提起することができない」と明記されます。そのような記載がない限り、犯罪はすべて非親告罪となります。
被害届とは、犯罪の被害にあったということを捜査機関に申告することを指します。
告訴と異なり、被害届の提出は犯人の処罰を求める意思表示を含んでおらず、格別の法的効果があるわけではないので、告訴のような厳格な手続の定めもありません。
2.親告罪に該当する犯罪一覧
親告罪は、上記のとおり、犯人の訴追・処罰を告訴権者の意思に係らせる制度であり、国家が独占しているはずの刑罰権の行使に私人の意向を反映させるものです。
私人の意向を反映させる理由は、犯罪類型によって様々です。
例えば、
(ア)犯罪被害が軽微なことや悪質性が低いことから被害者の意思を尊重するもの
(イ)被害者のプライバシー侵害等の不利益を避けるもの
(ウ)犯人との一定の関係が被害者にあるため国家の介入を控え、事件の解決を当事者に委ねたもの
があります。
以下では、刑法各則で親告罪とされている犯罪のうち、主なものを紹介します。
①絶対的親告罪(犯人と被害者の人的関係に関わらず、その犯罪が親告罪となる犯罪)
(ア)の要請によるもの
・過失傷害罪
・私用文書等毀棄罪
・器物損壊罪及び信書隠匿罪
・信書開封罪及び秘密漏示罪(イ)の要請によるもの
・未成年者略取・誘拐罪
・名誉毀損罪及び侮辱罪②相対的親告罪(犯人と被害者の人的関係によって親告罪となる犯罪)
(ウ)の要請によるもの
・窃盗罪
・不動産侵奪罪
・詐欺罪
・電子計算機使用詐欺罪
・背任罪
・準詐欺罪
・恐喝罪
・横領罪
・業務上横領罪
・遺失物横領罪
なお、2017年(平成29年)の刑法改正により、性犯罪の多くが親告罪から削除されました。例えば、不同意わいせつ罪、不同意制性交等罪などがこれに当たります。
親告罪では、起訴・不起訴が被害者の意思に委ねられるため、プライバシーが害されるデメリットを覚悟して告訴して処罰を求めるか否かという重い選択を被害者に突きつけることになってしまいます。
特に性犯罪において、被害者の精神的負担は顕著で、処罰を求めたいにもかかわらず萎縮して告訴を諦めるというケースも少なくありませんでした。
そこで、被害者の精神的負担を減らすため、性犯罪の多くは被害者の告訴がなくても起訴できるように改められ、親告罪の規定が削除されました(=非親告罪となりました)。
なお、これは改正刑法の施行前に起きた事件にも適用されます。
ただし、告訴期間の経過等により、施行時点で告訴権が消滅している場合は除きます(平成29年法律第72号:刑法の一部を改正する法律附則第2条2項)。
3.親告罪で被害者と示談するメリット
(1) 親告罪と示談の関係
上記のとおり、親告罪の場合、検察官は告訴がなければ起訴ができません。
したがって、告訴がない場合には例外なく不起訴処分で終わることになります。
つまり、犯罪が事実であっても、被害者が告訴をしなかった場合、被疑者は刑事裁判で裁かれることはなく、刑罰が科されたり前科がついたりすることもありません。
親告罪においては、被害者の告訴は被疑者の将来を大きく左右させる重要なものです。
したがって、被疑者としては、被害者に何としても告訴を控えてもらいたい、あるいは既にした告訴を取り下げてもらいたいと考えるでしょう。
被害者に告訴を取りやめてもらうためには、「示談」を成立させることが非常に重要です。
一般的に、刑事事件の示談においては、加害者が示談金を支払う代わりに、被害者が今後被害届の提出や告訴を行わないこと、既に提出済みの被害届や告訴を取り下げることを合意します。
刑事弁護の実務では、確実に告訴が取り下げられるよう、被害者の署名押印を済ませた告訴取下書の交付と引き換えに示談金を支払い、入手した告訴取下書を弁護士から検察官に提出します。
このようにして、示談により告訴を回避することで、親告罪では確実に不起訴となることができます。
(2) 非親告罪で示談するメリット
「告訴がなくとも起訴できる非親告罪の場合は、示談することにメリットがないのか?」というと、そんなことはありません。
非親告罪であっても、示談が成立したことは、被害が金銭的に回復していること・被害者の処罰感情が失われたことを示します。これらは被疑者にとって有利な事情として考慮され、不起訴となる可能性が高くなるからです。
特に、非親告罪となったとはいえ、性犯罪については被害者の意向に配慮した運用がなされていますから、やはり示談の重要性は疑いありません。
親告罪の加害者になってしまった場合には、被害者側に対する誠意ある謝罪と慰謝の措置を講じ、早期に示談を成立させることが重要です。よって、刑事弁護に経験・実績のある弁護士に依頼することが必要不可欠といえます。
→示談したい
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このように、親告罪・非親告罪のどちらにおいても、被害者と示談し、被害届や告訴取り下げてもらうことが重要な意味を持ちます。
殊に親告罪では、示談を成立させ告訴の取り下げをしてもらうことで、確実に不起訴となり前科を免れるのです。
刑事事件の加害者になってしまった方は、どうぞお早めに刑事弁護実績・示談交渉実績が豊富な泉総合法律事務所の弁護士に示談交渉をご相談ください。