暴行・傷害 [更新日]2025年9月30日

現場助勢罪とは?野次馬も犯罪?

現場助勢罪とは?野次馬も犯罪?

SNSなどのインターネット上では、刑事事件現場の状況がスマートホンのカメラで撮影され、投稿されるケースが少なくありません。
何かしらの揉め事・傷害事件が起こっているところを、野次馬として撮影したりはやし立ててしまったりした場合、何かしらの罪に問われることはあるのでしょうか?

実は、このような行為は「現場助勢罪」とされ、刑事事件の被疑者となってしまうことがあります。

1.現場助勢罪とは?

現場助勢罪は、傷害罪(刑法204条)及び傷害致死罪(刑法205条)が行われるに当たり、現場において勢いを助けることによって成立します(刑法206条)。

刑法206条 現場助勢罪
「前2条(傷害罪又は傷害致死罪を引き起こすような実行行為、すなわち暴行)の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

喧嘩の現場において無責任な助勢行為が行われると、喧嘩の規模・程度が拡大し、本来ならば生じないであろう重大な結果が生じるおそれがあります。
このような危険を防止するため、傷害又は傷害致死の犯罪が行われている現場での片面的な扇動的行為を独立に処罰することとしたのが現場助勢罪です。

現場助勢罪が成立するには、野次馬的に扇動して行為者の犯罪意思を強める必要があります。
野次馬の意味は、「自分とは直接関係のない事に関し物見高く集まり、面白半分に騒ぎ立てるなどといった行為に及ぶこと」を言います。

行為者をはやし立てその気勢を高めるものであれば足り、言語によることと動作によることを問いません。また、現場で勢い助ける行為が行われれば足り、その助勢行為により実行行為者の実行が容易になったかどうかは問いません。

このようなことから、単に無言で事件現場を撮影しただけ、というケースでは現場助勢罪は成立しません。
しかし、撮影しながら行為者をはやし立てた場合は現場助勢罪が成立する可能性があります。

なお、傷害又は傷害致死の犯罪が行われていることを要しますから、暴行の段階で助勢したもののこれらの結果が生じなかったときは、現場助勢罪は成立しません。

また、助勢者が自ら人を傷害したときは、傷害罪の共同正犯又は同時犯(刑法207条)が成立し、現場助勢罪は成立しません。

2.現場助勢罪の事例(判例)

相撲界での傷害事件において、その場にいた当事者以外の力士を現場助勢罪として立件すべきではないか?というものがありました。
しかし、本件においては立件はされませんでした。

特定行為者を声援した場合でも、現場助勢罪が成立すると思われます。
しかし、裁判実務上は特定行為者を声援したとする立証は難しいものと考えられます。しかも、その場にいた者が当事者双方を声援したことが立証されない限り、現場助勢罪の立件は難しいと思われます。

さらに、助勢行為が必要なのは、傷害罪の実行行為が行われている時点ですから、その開始前の助勢行為は含まれません。また、その終了後の助勢行為もこれに当たりませんので、上記の傷害事件では立証上の困難さがあったものと思われます。

3.現場助勢罪で逮捕後の弁護依頼

現場助勢罪で逮捕されてしまった場合、被疑者の処分結果に影響を与えるのが被害者との示談です。
被疑者に有利となる結果を導くには、いかに早期に示談を成立させることができるかにかかっています。

示談ができれば、勾留の手続に至る前に釈放されることも考えられます。
そうすれば、在宅のままで検察官の処分を待つことができ、仮に起訴となっても、略式手続で終わる可能性が大きいことになります。

しかし、たとえ罰金でも前科がつくことになります。被疑者としては、不起訴処分の結果を望むのは当然のことです。

事件後の早い段階で示談が成立すれば、不起訴処分の可能性が出てきます。
現場助勢罪で逮捕されたならば、早期に法律のプロである弁護士に示談交渉を委ねるのが、望ましい結果が得られる早道ということになります。

暴行罪・傷害罪の刑事弁護全般

[参考記事]

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4.まとめ

ただの野次馬のつもりでも、刑事事件ではいつ自分が被疑者になってしまうか分かりません。

現場助勢罪や傷害罪で逮捕されてしまったら、すぐに弁護士に相談しましょう。
刑事事件の弁護でしたら、実績豊富な泉総合法律事務所の弁護士・泉義孝にお任せください。

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