暴行・傷害 [更新日]2026年3月26日

相互暴行(双方暴行)の傷害事件|喧嘩両成敗で起訴されるのか?

相互暴行(双方暴行)の傷害事件|喧嘩両成敗で起訴されるのか?
弁護士 泉義孝
監修 弁護士 泉 義孝
所属:第二東京弁護士会
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喧嘩の当事者が互いに暴行を行った事案で、当事者の双方、または一方が逮捕されてしまうケースがあります。

  • 喧嘩で殴り合いをしていたところ通報されて、駆けつけた警官に現行犯逮捕された
  • 互いに殴る蹴るの喧嘩をした数日後、逮捕状を持参した警官が訪れ、逮捕された

この場合、どのような犯罪として起訴・処罰をされるのでしょう?

1.相互暴行(双方暴行)とは?

相互暴行・双方暴行という言葉は、法律用語ではありません。
インターネット上では、AとBが互いに相手に対して「暴行」、すなわち殴る蹴るなどの物理力を行使したケースを指す言葉として用いられています。いわゆる「喧嘩闘争」です。

(1) 相互に暴行した場合は双方に暴行罪が成立

AとBが互いに物理力を行使し合った場合には、AとB双方に暴行罪(刑法208条)が成立します。
これは、いわゆる「喧嘩両成敗」という考え方ではありません。単に、どちらの行為も「人に対する物理力の行使」という暴行罪の構成要件を満たしているからに過ぎません。

暴行罪の法定刑は、①2年以下の拘禁刑、②30万円以下の罰金刑、④拘留、⑤科料※のいずれかです。
※「拘留」は、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置する刑です。「科料」は、1000円以上1万円未満の金銭を徴収する刑です。

暴行罪の定義とは?逮捕された場合どうなるのか

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(2) 片方が怪我を負った場合

暴行によって相手が怪我を負った場合は、より重い傷害罪が成立します(刑法204条)。
傷害罪の法定刑は、15年以下の拘禁刑または、50万円以下の罰金刑です。

互いに相手に怪我を負わせている場合は、双方が傷害罪となります。

しかし、喧嘩となったものの相手に怪我をさせるつもりはなかった、というケースもあります。
うっかり怪我をさせてしまっただけであるから、せいぜい単なる過失傷害罪(刑法209条)の軽い刑で済むのではないか?という疑問を持つ方がいます。

確かに、過失傷害罪であれば、その法定刑は30万円以下の罰金刑または科料にとどまります。
しかし、暴行を行った場合は、相手に怪我をさせるつもりがなくとも、過失傷害罪ではなく傷害罪が成立します。

暴行は、怪我という結果を生じる蓋然性が高く、強く抑止する必要があります。そこで、たとえ怪我をさせるつもりがない場合(=すなわち傷害の故意を欠く場合)でも、暴行行為から怪我が生じた以上、これを傷害罪として重く処罰するのです(最高裁昭和25年11月9日判決)。

(3) 正当防衛は成立しないのか?

ごく古い判例は、喧嘩両成敗の思想から、喧嘩闘争に正当防衛を認めませんでした(大審院昭和7年1月25日判決・大審院刑事判例集11巻1頁)。
しかし、この考え方は、後の判例(最高裁昭和23年7月7日判決)により変更されており、正当防衛も認められる余地があります。

ただ、正当防衛(刑法36条)は、一方からの「急迫不正の侵害」に対し、「自己(または他人の)権利を防衛するために、やむを得ずにした行為」を犯罪としない制度です。
攻撃側と防衛側に「不正」対「正」の関係があることが前提です。

相互暴行・双方暴行は、双方が攻撃と防御を繰り返す、連続した闘争です。よって、ある瞬間だけを切り取れば、AがBを攻撃してBが防衛している、というように見える場合があったとしても、それだけで一方を「不正」な攻撃、他方を「正」たる防衛行為と単純に割り切ることはできません。連続した闘争の全体を観察することが必要です(最高裁昭和32年1月22日判決)。

他方、喧嘩闘争による相互暴行・双方暴行の状態がいったん終結したのに、一方が再び攻撃を開始した場合などは、その新たな攻撃は急迫不正の侵害として評価され、正当防衛が認められます(最高裁昭和59年1月30日判決

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2.相互暴行・双方暴行で逮捕された場合の対応

相互暴行・双方暴行を理由に逮捕されてしまった場合、警察への対応は、どのような点に注意するべきでしょうか?

(1) 相互暴行・双方暴行であることが理解されているか

相互暴行・双方暴行により、暴行罪・傷害罪で逮捕されてしまった場合、警察・検察が、相互暴行・双方暴行の事案、つまり「喧嘩」であることを認識しているか否かの確認が重要です。

殴り合いの喧嘩をしている現場で双方が現行犯で逮捕された場合はともかく、そうでない場合は、相手方が一方的に暴行を受けたとの被害届を提出し、捜査機関がこれを信用してしまっている場合も珍しくありません。
そのようなケースでは、自分だけが一方的な加害者ではなく、喧嘩の当事者として、被害者でもあるという事実を主張する必要があります。

一方的な加害者ではないという事情が判明すれば、検察官による不起訴処分(起訴猶予処分)も期待できますし、仮に起訴されたとしても、裁判官の量刑上、有利に考慮される可能性が高くなります。

(2) 弁護士を通じて事件の詳しい背景事情も主張する

先に手を出したのは相手であって、自分ではないという場合、その事実もきちんと主張する必要があります。

自分も暴行を行っている以上、暴行罪や傷害罪に問われる可能性は否定できませんが、「事件が起きた事情、喧嘩の発端は何か?」「道義上の非があるのは誰か?」「どちらが先に暴行に及んだのか?」という事情は、やはり検察官の起訴・不起訴の判断、裁判官の量刑に大きな影響を与えるからです。

ただ、取り調べを受ける際に、このような事情を正確に説明することは、必ずしも容易ではありません。
弁護士を刑事弁護人として依頼すれば、直ちに弁護士との面会(接見)が可能となり、弁護士を通じて、事実を警察・検察に主張し、有利な判断を引き出すことが期待できます。

(3) 相手に非がある場合も、弁護士を通じて示談交渉

そもそもの喧嘩の原因が相手にあり、先に殴りかかっていたのも相手である、自分は悪くないというケースであっても、自分も暴行している以上は、相手との示談を成立させることが大切です。
早期に示談が成立すれば、身柄を拘束される期間を短縮できる可能性も高くなります。

相手に怪我をさせたがこちらも怪我をしたという場合、双方が治療費や慰謝料を払い合うという形で示談をまとめ、互いに被害届や刑事告訴を取り下げることが最善です。

弁護士なしでの示談はリスク大!示談交渉を弁護士に依頼すべき理由

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【警官に暴行すると公務執行妨害罪
なお、喧嘩の現行犯で逮捕される際や、警察での取り調べの際に自分が一方的に悪者にされていることに納得がいかないなどの理由で、激昂してしまい、警察官に殴りかかってしまったり、警察官の身体を押し戻してしまったりするケースがあります。このような行為は公務執行妨害罪となってしまうため、絶対に行ってはいけません。
警察官に対する公務執行妨害罪とされた場合は、悪質な行為として、起訴されてしまう確率が高くなってしまいますから、ご注意ください。

3.相互暴行(双方暴行)で逮捕されたら弁護士へ

相互暴行・双方暴行では、自分も被害に遭っていたとしても、暴行罪・傷害罪として処罰される危険性があります。

相互暴行・双方暴行で逮捕された場合は、ただちに泉総合法律事務所に弁護をご依頼ください。

暴行罪・傷害罪の刑事弁護全般

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