痴漢・不同意わいせつ [公開日]2018年8月23日[更新日]2025年3月10日

痴漢で職場を解雇されるケースはある?懲戒解雇について解説

痴漢で職場を解雇されるケースはある?懲戒解雇について解説

【相談事例】
帰宅時の混雑した電車で、隣に座っていた女性のお尻をスカート越しに触れてしまった結果、「痴漢です!」と女性に腕を掴まれてしまいました。その後、次の駅で降ろされ、駅員室に連れて行かれ、さらには警察署に連行されて取り調べを受けることになりました。
逮捕されるかと不安に思ったものの、「今日は帰っても大丈夫です。ただし、後で呼び出しがあった場合は必ず出頭してください」と念を押されて解放されました。しかし、痴漢行為が会社に知られたら解雇されるのではないか、裁判にかけられて刑務所に入ることになるのではないかと非常に心配しています。

このような相談は、当事務所にも多く寄せられます。

痴漢事件に関する相談をする方々は、痴漢という過ちに対する反省や後悔、将来への不安などを抱えています。そんな方に意識していただきたいのは、「どんなことがあっても解雇は避けるべき」ということです。

今回は、痴漢事件を起こした場合、解雇を避けるために何をすべきかについて説明します。

1.痴漢をしたら解雇されるのか?

痴漢行為は犯罪です。罪を犯してしまった場合、勤務先から即座に解雇されてもおかしくないと考えるかもしれません。

しかし、実際にはすぐに解雇されるわけではなく、勤務先の就業規則に準じます。
また、どのようにして会社がその事実を知ることになったのかも、判断に大きく影響を与える要素となります。

2.痴漢が職場にバレる原因

解雇やその他の不利益を受ける可能性が高まるのは、痴漢行為が職場に知られるからこそです。逆に言えば、会社に痴漢行為がバレなければ解雇のリスクは軽減されます。

では、勤務先に痴漢がバレる主な原因にはどのようなものが考えられるのでしょうか。

(1) 長期の身体拘束を受けた場合

逮捕・勾留され、長期間無断で欠勤することになれば、勤務先が警察や家族に連絡を取ることがあります。

逮捕が行われた後、警察は48時間以内に被疑者を検察に送致しなければなりません。
検察は、送致を受けた被疑者について「勾留するか」「釈放するか」の方針を24時間以内に決定します。

勾留が必要と判断されれば、検察は裁判官に勾留請求を行います。この請求に対して裁判官は被疑者に勾留質問を行います。勾留質問とは、被疑者の意見(主張)を確認するためのもので、どのような事情があるのか、逃亡の恐れや証拠隠滅の可能性があるかどうかを確認することになります。

裁判官が勾留の必要性を認めると判断した場合、被疑者は逮捕に続く勾留を受けることになります。
勾留は原則として10日間続きますが、事件内容が複雑であったり、捜査が難航する場合には、最大で20日間に延長されることがあります。

このように長期間会社に行けない状況であれば、職場は疑念を抱きます。家族が「病気になった」と言っても、診断書の提出を求められた場合には嘘がバレてしまいます。

(2) 身元引受人として上司が呼ばれた場合

痴漢事件のケースでは、取り調べを受けた後に即座に解放されることも多いですが、家族などが誰も身元引受人として迎えに来られない場合、勤務先に連絡が入る可能性も0ではありません。

これを避けたいならば、「勤務先には連絡をしないでほしい」と警察に頼む必要があります。

(3) 捜査のために連絡が行く場合

警察が勤務先に事件の連絡することは滅多にありませんが、捜査の過程で連絡が行く場合もあります。

たとえば、同僚と一緒に飲んだ帰りに痴漢行為をした場合、「どの店でどのくらい飲んだのか?」を同僚に確認しなくてはならないケースが考えられます。
この場合、同僚にコンタクトをとるために勤務先へと連絡が入るケースもあれば、同僚の口から噂が広まってしまうケースもあり得ます。

(4) マスコミやインターネットで話題になった場合

マスコミが実名報道をして、職場に知られてしまう場合もあります。
一般の痴漢行為がニュースになり実名報道をされるケースは多くありませんが、特に社会的地位の高い者の事件や、痴漢撲滅運動の期間中などは、警察が公式に発表することがあります。

あるいは、痴漢行為を目撃され周囲の一般人と言い争いになっている場面や、駅員などに連行される場面をスマホで撮影され、動画をネットに流されてしまうと、これを職場の従業員が見て知られてしまう危険も0ではありません。

3.痴漢発覚後の勤務先での処分

では、勤務先に痴漢行為が知られてしまった場合、その後はどうなるのでしょうか。
本コラムでは、特に「解雇」に焦点を当てて解説します。

(1) 民間企業

通常、民間企業の就業規則では、「会社(使用者)の業務利益や信用・名誉を著しく毀損したとき」「不名誉な行為をして会社の対面を著しく汚したとき」懲戒事由として定めています。
そして、業務と無関係な私生活上の行いであっても、痴漢などの犯罪行為は、「信用・名誉を毀損した」「会社の体面を汚した」として懲戒処分がなされることがあります。

しかし、業務と無関係な私生活上の非行行為を理由とする解雇は、原則として無効とされます。

「…しかして、従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類、態様、規模、会社の経済界に占める地位、経済方針及びその従業員の会社における地位、職種等諸般の事情から総合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない(※最判昭和49年3月15日)」

少し難しく感じるかもしれませんが、懲戒処分の対象となる私生活上の非行は「会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合」とかなり限定されているということです。

解雇の有効性が認められた過去の裁判例は、「鉄道会社(小田急電鉄)の社員が常習的に痴漢を行い、執行猶予付きの懲役刑を受けた」という非常にレアなケースです(東京高裁平成15年12月11日判例時報1853号145頁掲載)。
一般会社の従業員が一度痴漢行為をしただけで、このような例外的なケースに該当することはないと言えます。

ただ、法的には解雇はできないといっても、痴漢行為が勤務先にバレれば、会社の判断で解雇その他の懲戒処分をされてしまう実際上の危険があります。
後からその有効性を民事裁判で争うことは、それだけで大変な時間、費用、労力がかかります。

ですから、「法的には解雇されないはず」と安心せず、そもそも会社に知られないことが何よりも重要なのです。

(2) 公務員

公務員の場合は、民間企業よりも厳しい対応が予想されます。

①国家公務員の場合

痴漢行為で起訴されて禁錮以上の刑に処せられた場合は、たとえ執行猶予がついた場合でも、国家公務員法(38条)が定める欠格事由に該当することになり、当然に失職します

国家公務員法(欠格条項)
第三十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則で定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
二 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者(以下略)

また、痴漢行為が発覚した時点で(不起訴や罰金刑で済んだ場合でも)、停職または減給の懲戒処分を受けます。

人事院「懲戒処分の指針について」
3 公務外非行関係
(13) 痴漢行為 公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。

②地方公務員の方の場合

地方公務員も国家公務員と同様に、禁錮以上の刑に処せられると執行猶予刑であっても、地方公務員法(16条)が定める欠格事由に該当することになり、当然に失職します(同28条)。

地方公務員法(欠格条項)
第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(以下略)
第二十八条 4
職員は、第十六条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、条例に特別の定めがある場合を除くほか、その職を失う。

そして、国家公務員同様、痴漢行為が発覚すれば、不起訴・罰金刑でも懲戒処分の対象となります(同29条)。処分の具体的な内容は、各自治体が定めることになります。
たとえば東京都では、公共の乗物等においての痴漢行為は免職または停職とされています(東京都「懲戒処分の指針」)。

4.解雇されないためにどうするべきか

痴漢行為を職場に知られると、解雇・停職・減給などの懲戒処分を受ける可能性があります。
では、これらの不利益を受けないようにするためにはどうすれば良いのでしょうか。

(1) 早期に示談を成立させる

一番重要なのは、被害者との示談を早急に成立させることです。

痴漢事件の示談とは、被害者に対し示談金を支払う代わりに被害について許してもらい、ひいては「もはや刑事処分を望まない、寛大な処分を望む」との意見を表明してもらうことです。
この意見を記載してもらった「示談書」を作成して検察官に提出すれば、刑事処分について被疑者にとって有利になる可能性が高くなります。

示談成立のためには被害者との交渉が不可欠ですが、警察は、被疑者やその家族に対して被害者の情報を教えません。
被害者も、自分の情報を被疑者側に教えることは通常は拒否します。

しかし、刑事弁護の依頼を受け弁護人となった弁護士は、被害者の同意を得ることができれば、警察・検察から被害者の連絡先を教えてもらうことができます。
被害者と連絡が取れたら、弁護士は被疑者が今回の事件について深く反省していることを伝え、また、被疑者の謝罪の手紙を渡すなどしながら慎重に示談交渉にあたります。

ここまでくれば、よほど悪質な案件でない限り、痴漢事件の示談は成功する確率が高いです。

示談が成立すれば、痴漢事件ならほとんどのケースで不起訴処分となります。
不起訴となれば、仮に職場に痴漢がバレてしまっても、懲戒される可能性を低めることができます。

また、示談により早期釈放される可能性が高くなりますので、長期の勾留により勤務先に不信感を与えるリスクが小さくなります。

(2) 呼び出しには誠実に応じ、逮捕・勾留を避ける

「痴漢で検挙はされたものの逮捕はされなかった」というケースなら、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと見てもらえたと言えます。ですから、後になって逮捕されることは通常ありません。

ただし、その後の警察や検察からの呼び出しに応じなければ、逃亡の可能性が出てきたとして逮捕のリスクが生じます。
警察に協力的な態度を見せ、逃亡や証拠隠滅の可能性がないことを示すようにしましょう。

勤務先にとって、従業員が長期で無断で欠勤するのは異常な事態です。上司や同僚が心配し、状況を確認するために警察や家族に連絡を取れば、職場に痴漢の事実を隠すことが困難になります。

5.痴漢で逮捕されたときは弁護士にご依頼を

もし痴漢で検挙された場合、速やかに弁護士を依頼することが必須です。

弁護士は、検察官に勾留請求をしないよう要請することができます。また、裁判官に対し、勾留請求の却下を求めることもできます。
勾留されてしまった後ならば、準抗告という不服申立をして争うことも、勾留期間を延長しないよう申し入れることもできます。

逮捕に続く勾留を阻止するためには、被害者との示談の重要です。
弁護士は、被疑者の弁護人として被害者の方と早急の示談交渉に取り組むことが可能です。

痴漢行為をしてしまい、職場にバレることや懲戒解雇されることに不安を抱える方は、刑事弁護に豊富な経験を持つ泉総合法律事務所、弁護士泉義孝へ早期に相談することをお勧めいたします。

痴漢の刑事弁護は泉総合法律事務所、弁護士泉義孝まで

痴漢など絶対にしないと思っていても、ふと魔が差して痴漢をしてしまった、ということは誰にでもあり得ることです。迷惑防止条例違反の行為といえども、逮捕・起訴される可能性がありますし、処分が罰金であっても前科となります。

最終処分を不起訴など有利に導くためには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に弁護依頼をしてください。

泉総合法律事務所の弁護士、泉義孝は、刑事事件、中でも痴漢の弁護経験につきましては大変豊富であり、勾留阻止・釈放の実績も豊富にあります。

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という方は、お早めに泉総合法律事務所、弁護士泉義孝にご相談ください。相談料は初回無料です。

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