逮捕・勾留された女性の留置施設について
犯罪白書(令和7年版)によると、令和6年中に刑法などに違反したとして検挙された者の総数24万3,658人のうち、男性は約80%であるのに対し、女性は約20%に過ぎません。
ここ30年間を見ても、検挙される女性数が少ない状況は変わりがなく、逮捕・勾留されるのは圧倒的に男性で、逮捕・勾留された者を収容する施設も主に男性の収容を前提として作られ、運用されてきた歴史があります。
このためもあって、犯罪の嫌疑をかけられた女性としては、万一、逮捕・勾留されてしまった場合、施設内でどのような目に遭うのか?と男性以上に不安を感じている方が多いようです。
この記事では、そのような女性の不安を最小限とするために、女性が逮捕・勾留されて収容される場所のうち、警察署の留置場などの「留置施設」について説明し、その中での生活ルール・女性の扱いや配慮、女性が逮捕・勾留された場合に弁護士が果たせる役割などについて説明します。
1.逮捕から留置施設収容までの流れ
まず、刑事事件の被疑者が逮捕・勾留される場合の手続きの流れについて、簡単に説明しておきます。
刑事事件の被疑者が逮捕されると、警察に拘束されて取り調べを受け、逮捕から48時間以内に身柄を検察庁に送られます。
検察庁では、身柄を受け取ってから24時間かつ逮捕から72時間以内に、裁判所に対して、犯罪の嫌疑があり、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるから勾留するようにと、勾留請求を行います。
被疑者は、裁判官による勾留質問を受け、裁判官が勾留を認めると、勾留請求から最大10日間(さらに勾留延長請求が認められると、プラス10日間にわたり)身柄を拘束されます。
2.逮捕・勾留された女性が収容される場所
逮捕・勾留された被疑者が収容される場所には、2つの種類があります。「留置施設」と「拘置所」です。
(1) 「留置施設」と「拘置所」の違い
①留置施設
「留置施設」とは、各都道府県警察に設置された刑事収容施設であり、逮捕された被疑者を留置する場所です。
留置施設は、全国に1006施設あります(※令和6年4月1日時点「令和7年版警察白書」229頁)。
留置施設に留置されている者を「被留置者」と呼びます。
②拘置所
「拘置所」とは、法務省によって設置された刑事収容施設であり(※国家行政組織法8条の2、法務省設置法8条、同9条3項、「刑務所、少年刑務所及び拘置所組織規則」1条)、勾留された被疑者・被告人等を収容する場所です(法務省設置法9条1項1号)。
全国に、拘置所(8ヶ所)と、刑務所などの敷地に併設された拘置支所(103ヶ所)があります。
(2) 代用監獄(代用刑事施設)とは?
このように、本来、逮捕された者を留置する場所が留置施設(留置場)、勾留された者を収容する場所が拘置所と分かれているはずです。
しかし、現在の法律では、勾留後も被疑者を引き続き警察の留置施設(留置場)での拘束を継続することが許されています。
これを「代用監獄(代用刑事施設)」と呼びます。
刑事手続においては、警察は、被疑者と利害が対立する一方当事者ですから、警察の管理下にある留置施設での長期間の勾留が許容されると、長時間の取り調べが行われるなど、冤罪や人権侵害の温床となる危険があるため好ましいことではありません。
しかし、現行法では、捜査の便宜を優先させるなどの理由から、弁護士会などの強い反対にも係わらず、留置施設での勾留が存続しているのが現状です。
(3) 女性のための留置施設
女性被留置者の留置場所は、「①女性専用留置施設」または「②女性警察官が常時勤務する女性集中留置施設」です。
②は女性専用ではないものの、女性警察官の留置担当官が、常に留置場内に勤務している施設です。
※:警察庁通達「留置管理業務推進要領」警察庁丙総発第18号、丙人発第192号(令和5年12月1日)のうち、「第3 被留置者の処遇」「1 被留置者の属性に応じた処遇」「(1)女性被留置者への対応 ウ」
ただ、後述のように、女性被留置者への対応は、女性警察官・女性職員による対応が必要な場面が多いのに、女性警察官の数は限られているため、女性の留置施設は全国103ヶ所に留まっています(※令和6年4月1日時点・前出「令和7年版警察白書」229頁)。
例えば、東京についていえば、次の5施設です。
- 東京湾岸警察署
- 原宿警察署
- 警視庁西が丘分室
- 武蔵野警察署
- 警視庁多摩分室
3.留置施設での女性への対応
では、このような留置施設内で、女性はどのような対応をされ、どのような生活を送ることになるのでしょうか?
(1) 女性専用区画での収容
女性専用留置施設でなくとも、被留置者は性別によって分離しなくてはならないとされており、女性は男性とは別の区画に留置されます。
留置場の区画分離が不十分で、入浴・運動・取り調べのために女子が移動する際に男性被留置者の目に触れる可能性がある場合は、ついたて、カーテンなどで遮蔽する措置がとられます(前記「留置管理業務推進要領」の「第2 留置施設の管理運営」「2 留置担当官による留置施設の管理」「(9)その他 イ」)。
(2) 女性警察官・女性職員による対応
身体検査、着衣検査など
留置を開始する際や開始後は、必要に応じ、人違いを防ぐための身体検査が実施されます。
女子留置者の身体検査は、女性警察官・女性職員が行わなくてはなりません。
また、留置施設の規律や秩序維持を図るために必要があれば、身体・着衣・所持品・居室内の検査や所持品の一時保管が実施されますが、この場合でも、女子留置に対する身体・着衣の検査は、女性警察官・女性職員が行わなくてはなりません。
女性警察官による護送
女性被留置者の護送は、原則として女性警察官が行います。
ただし、護送できる女性警察官がいない場合や、護送できる女性警察官が1名しかおらず、しかも運転を担当する場合は、男性警察官の護送員に加え、女性の一般職員が護送補助者として同行します(前記「留置管理業務推進要領」の「第3 被留置者の処遇」「4 適切な護送業務の推進」「(1)護送員の指定等 オ」)。
(3) プライバシーへの配慮
女性には限りませんが、留置施設内や護送中においては、当該被留置者の氏名が他の被留置者等に知られないよう、被留置者を留置番号等で呼ばれます(前記「留置管理業務推進要領」の「第2 留置施設の管理運営」「2 留置担当官による留置施設の管理」「(9)その他 ア」)。
(4) 生活の時間帯
食事、就寝その他の時間帯は、法定された一定の範囲で、各留置場の管理者(警察署の留置場の場合は警察署長:収容法16条1項)によって、定められています。
【1日のスケジュールの例】
起床6時30分
朝食7時30分
運動8時00分
昼食12時00分
夕食18時00分
就寝21時00分
※警察庁パンフレット「警察の留置業務」(2008年10月29日)22頁
食事は3食支給されます。栄養バランスにつき、栄養士のチェックを受けた内容となっています。
また、後述のように、被留置者は、自分の費用でお弁当・菓子類・飲料などを購入することも可能です(前記「警察の留置業務」23頁)。
(5) 入浴・トイレなど
入浴は、居室外の浴室で行われます(収容法182条1項)。入浴の回数・時間は、気候などを考慮して管理者が定めますが、入浴回数の最低限は、5日に1回とされています(同法204条、同17条1項、国公委収容法施行規則17条1項、同2項)。また、女子の入浴には、女性職員が立ち会わなくてはなりません(同規則17条3項)。
なお、女子被留置者は、身だしなみを整えるために必要な化粧水・クリーム等の化粧品、櫛・ヘアブラシを洗面所等で使用することができます(前記「警察の留置業務」28頁)
トイレは居室内にありますが、周囲を壁(上半身だけが見える窓はあります)で囲ったボックス型となっています(前記「警察の留置業務」21頁)。
(6) 食料品・日用品の取扱
衣類・寝具・食事・茶湯・日用品・筆記具・その他の物品で、留置施設における日常生活に必要なものを貸与または支給されます。
一方、自弁が原則となる物品もあります。
自弁とは、自分の物、自分の費用で購入する物です。眼鏡・封筒・便箋・切手・印紙・印鑑・衛生用品(生理用品含む)・かつらは、原則として自弁のものに限られますが、自弁のものがなく必要性が認められるときは、貸与または支給されます。
また、一定の物品については、被留置者が自弁のものを希望する場合は、留置施設の管理運営上の支障がない限り許されます。
一定の物品とは、衣類・タオル類・石けん類・ヘアブラシ・薬用クリーム・綿棒・筆記具・その他管理者が特に必要であると認める物品等です。
なお、たとえば「衣類」といっても、どのような製品なら認められるのか、その具体的な内容は、留置施設の管理者の裁量で決められており、全国一律でもなく、同じ自治体でも警察署毎に運用が違っています。
ただ、近年は、警察庁がこれまで自殺防止などの理由から認められていなかったブラトップの貸与につき基準を設け、各都道府県警察が導入するよう務めるなど、女性への配慮も少しずつ前進しています
(7) 健康診断や治療
健康診断は、おおむね月2回の割合で、医師によって行われます。
負傷したり病気にかかったりした場合は、速やかに施設が委嘱する医師・歯科医師による診療を受けることができ、必要が認められれば通院・入院も可能です。
(8) 妊娠中・授乳中の女性への対応
女子被留置者が妊娠中である場合、管理者は必要な養護措置をとり、やむを得ない場合を除き、出産にあたっては留置施設外の医療機関に入院させるものとされています。
拘置所であれば、女子収容者がその子を施設内で養育したいと希望した場合、(相当と認められれば)その子が最大1歳半に達するまでは養育が許されます。
この場合、育児に必要な物品は貸与または支給され、希望すれば管理運営に支障のない限り、自弁の物品・食料品なども認められ、子の健康診断や診療も受けることができます。
しかし、留置施設についてはこれらに相応する規定がないので許されません(林真琴(元検事総長)他著「逐条解説・刑事収容施設法(第3版)」有斐閣・73頁)。
したがって、乳児のいる女性が逮捕され、留置施設に勾留されてしまった場合は、弁護士から検察官・裁判官に事情を説明し、早期に勾留場所を拘置所に移してもらうべきです。

[参考記事]
刑務所の中の生活。家族・友人はどんな暮らしをしているの?
4.面会・差し入れのルール
逮捕中は弁護士以外の者と面会することはできませんが、勾留されると、特に裁判所によって禁止されない限り(刑訴法207条1項、同81条)、家族など弁護士以外の者と面会をすることができます(同207条1項、同80条)。
ただし、面会時間は10〜15分程度、1日1回などの制限があり、警察官の立ち会い付きです。
物品の差し入れは逮捕中でも可能ですが、留置施設ごとに、その管理者の裁量によって差し入れ可能な物品・数量・時間帯・購入先などが制限されており、事前に留置施設に問い合わせて確認するか、弁護士を通じて差し入れを行うことが無難です。

[参考記事]
勾留中の生活・面会・差し入れについて
5.逮捕・勾留された被疑者のために弁護士ができること
逮捕・勾留されてしまった被疑者のため弁護士ができる弁護活動には、様々なものがあります。
(1) 被疑者との面会
弁護士は、留置施設で逮捕・勾留中の被疑者に面会し、事情を聞き取り、被疑者に保障されている権利や取り調べに対する対応方法など、法的なアドバイスをし、被疑者を支えます。
また、これにより弁護士は、被疑者と家族・勤務先との間の連絡役となり、生活や仕事への不安を減少させることができます。
(2) 勾留阻止などの働きかけ
弁護士は、検察官・裁判官と面談し、検察官には勾留請求や勾留期間の延長請求をしないよう、裁判官には勾留請求や延長請求の却下や、勾留の取消しをするよう説得します。

[参考記事]
準抗告とは?早期釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!
(3) 示談交渉
弁護士は、事件の被害者と示談交渉を行います。
早期に示談を成立させれば、検察官による不起訴処分を勝ち取ったり、万一、起訴された場合でも、裁判官による量刑を軽減したり、執行猶予判決を得たりすることが期待できます。

[参考記事]
刑事事件の示談の流れ|示談をするメリット・効果とは?
6.まとめ
泉総合法律事務所は、女性が逮捕・勾留されてしまった事件の弁護活動の経験も豊富です。
これまでご説明したように、女性の留置施設での扱いに関する法令にも精通していますので、万が一女性の被留置者が不当・違法な扱いを受けた場合は、ただちに警察・検察に対して抗議し、是正させることも可能です。
女性で刑事事件に巻き込まれたり、逮捕されたりする心配のある方、そのご家族については、無料法律相談をお受けしております。どうぞご連絡ください。

