刑事弁護・裁判 [更新日]2026年2月5日

証拠隠滅罪・証人威迫罪とは?バレると罪になるのか

証拠隠滅罪・証人威迫罪とは?バレると罪になるのか

犯罪に関与した者が、証拠物を隠したり目撃者に口止めをしたりすることは珍しいことではありません。

しかし、このような行為は、それ自体が新たな犯罪行為とされてしまう場合があります。それが、「証拠隠滅罪」と「証人威迫罪」です。

この記事は、証拠隠滅罪と証人威迫罪の両罪について、詳しく説明します。

1.証拠隠滅罪・証人威迫罪とは?

(1) 証拠隠滅罪・証人威迫罪の概要

証拠隠滅罪は、刑事事件の「証拠」を隠したり、消滅させたりする等の行為を犯罪として処罰するものです。
他方、証人威迫罪は、刑事事件の証人等に面会を強要したり、要求に応じるよう無理強いしたりする行為を犯罪として処罰するものです。

証拠隠滅罪は刑法104条に定められており、法定刑は「3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑」です。
証人威迫罪は刑法105条の2に定められており、法定刑は「3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑」です。

(2) 証拠隠滅罪・証人威迫罪の保護法益

証拠隠滅罪と証人威迫罪の保護法益(刑法によって守ろうとしている利益)は、国家の刑事司法作用の適正です。

証拠を隠滅したり偽造したりする行為や、証人に不当な要求をする行為を放置すれば、真実発見の妨げとなり、真犯人が罪を免れたり、無実の者が有罪となったりして、適正な刑事司法を実現できなくなるからです。

なお、証人威迫罪については、併せて刑事事件の証人等の安全や私生活の平穏も保護法益に含まれています。

刑事事件の証拠になるもの|物的証拠・状況証拠など

[参考記事]

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2.証拠隠滅罪の成立要件と具体例

証拠隠滅罪は、「他人の刑事事件に関する証拠」について、これを
隠滅する行為、②偽造する行為、③変造する行為、④偽造変造された証拠を使用する行為
を処罰するものです。

(1) 「他人の刑事事件」に関する証拠とは

証拠隠滅罪の対象となる証拠は、「他人の刑事事件」に関する証拠のみであり、自分自身の犯罪に関する証拠の隠滅行為などは処罰されないのです。

これは、自己に不利益な証拠を隠滅するなどの行為に及ぶことは、人間の心情として無理からぬものがあり、非難することはできないからです。

他人の刑事事件に関する証拠であれば、その他人にとって不利な証拠か、有利な証拠かは問いません。他人に有利な証拠を隠すなどして冤罪を作り出すことも適正な刑事司法の妨げとなるからです。

「刑事事件」とは、すでに捜査が開始されているものは勿論、いまだ捜査開始前の事件も含まれます。捜査を開始する前に証拠を隠滅されてしまえば、やはり適正な刑事司法は遂行できなくなるからです。

【自己の刑事事件の証拠が、共犯者の刑事事件の証拠でもある場合】
共犯関係にある者の間では、犯罪の証拠が共通している場合は珍しくありません。この場合、証拠を隠滅等する行為が、①もっぱら自己のためになされた場合、②もっぱら自己と共犯者のためになされた場合、③もっぱら、共犯者のためになされた場合の3つに分け、③の場合にだけ証拠隠滅罪の成立を認める考え方が有力であり、これと同旨の裁判例もあります(広島高裁昭和30年6月4日判決)。

(2) 「 隠滅」とは

「隠滅」行為とは、証拠の顕出(おもてに出てくること)を妨げる行為、証拠の価値を失わせたり、価値を減少させたりする行為の全てです。物理的に損壊する行為、隠匿する行為も含みます。

【具体例】

  • 投資詐欺に用いられた架空の投資勧誘パンフレットを燃やす
  • 傷害の凶器となったナイフを川に投げ捨てる
  • 被害者の返り血を浴びたシャツを土に埋める
  • 犯行計画を共犯者同士でやりとりしたLINEのトーク履歴を消去する
  • 共犯者同士の通信に用いたスマホを廃棄する
  • 証人や参考人を殺害したり、隠匿(海外へ逃がす、別荘に匿うなど)したりする

(3) 「偽造」「変造」とは

「偽造」行為とは、存在しなかった証拠を新たに作り出す行為です。
例えば、脱税行為の発覚を防ぐために、偽の帳簿を作成する行為が該当します。

「変造」とは、すでに存在する証拠に加工を施し、その内容や証拠としての価値を変更してしまう行為です。

例えば、検察官がその担当する事件の被告人に有利となる証拠物であるフロッピーディスク内の文書ファイルの最終変更日時を、検察側の見立てに沿うように書き換えてしまった行為(大阪地裁平成23年4月12日判決)は「変造」とされました。

(4) 偽造変造した証拠の「使用」とは

偽造・変造した証拠の「使用」とは、偽造・変造した証拠を、真正な証拠として用いることを指します。

【具体例】
Aが、被害者Bを殺害し、自殺と偽装するべくBの遺書を偽造した。Aの妻Cは、偽造の遺書と知りながら、捜査機関や裁判所に遺書を提出した。Cの行為は偽造証拠の使用行為となる。

3.証拠隠滅罪の成否が問題となるケース

(1) 参考人や証人による虚偽の供述

例:参考人Cは、犯人Aが被害者Bに暴行を加える場面を明確に目撃していたが、警察で参考人として取り調べ(事情聴取)を受けた際、友人であるAを助けてやろうと思い、「Aが暴行している場面は見ていない」と供述した。

このように、参考人として取り調べを受けた際に虚偽の供述をする行為は、実は証拠隠滅罪となりません。
刑法は、「宣誓した証人」が虚偽の陳述をする行為を偽証罪として処罰しているので、宣誓した証人ではない者の虚偽供述は処罰しない態度と考えられるからです。

ただし、たとえば上記の例で、Cが「私は、AがBに暴行を加えた場面を見ておりません」という内容の上申書を自ら作成し、捜査機関や裁判所へ提出した場合は、証拠偽造罪が成立します(東京高裁昭和40年3月29日判決

同様に、証人が虚偽の証言をする行為も、証拠隠滅罪とはなりません。ただし、宣誓した証人が自己の記憶に反する事実を証言した場合は、偽証罪として処罰されます。

(2) 自己の事件の証拠隠滅を他人に依頼した場合

自己の刑事事件の証拠を隠滅等する行為は犯罪ではありませんが、これを他人に依頼する行為は、証拠隠滅罪の教唆犯として、証拠隠滅罪と同じ法定刑で処罰されます(61条1項)。

例:Aは自分が犯した殺人罪の証拠となる凶器の処分を、友人Bに依頼し、Bは凶器を川に捨てたという場合、Bは証拠隠滅罪の正犯、Aは証拠隠滅罪の教唆犯となる。

(3) 親族間の特例

証拠隠滅罪は、犯人の親族が犯人の利益のために犯した場合には、刑を免除することが認められます(105条)。
刑の免除とは、犯罪の成立を認めた上で法律の規定に基づき刑を科することを免ずると言い渡すことであり、有罪判決の一種です。

親族とは、民法の規定に従い、①6親等内の血族、②配偶者、③3親等内の姻族を指します。

親族の間で、他の親族の刑事事件の証拠を隠滅等する行為は、やはり強く非難することはできないことから、裁判官の裁量によって免除することが認められるのです。

ただし、犯人の親族が第三者をそそのかして証拠隠滅行為を実行させた場合は、その親族は証拠隠滅罪の教唆犯となり、刑の免除を受けることはできません。

4.証人威迫罪の成立要件と具体例

証人威迫罪は、自己または他人の刑事事件の捜査・審判に必要な知識を有する証人等やその親族に対して、不当に面談を強要したり、要求に応じるよう求めたり、不安・困惑させたりする行為を処罰するものです。

(1) 証人威迫罪で保護される対象者

証人威迫罪で保護される対象者とは、自己又は他人の刑事事件の捜査・審判に必要な知識を有すると認められる者、または、その親族です。

刑事事件の捜査・審判に必要な知識を有すると認められる者とは、刑事事件の被害者、証人、参考人などを指します。
「有すると認められる」とは、諸般の事情から合理的に判断して、事情を知っているだろうと判断される立場にあることを言い、実際に事情を知る者である必要はありません。

なお、証拠隠滅罪には「自己の刑事事件」の証拠が含まれないのに対し、証人威迫罪では「自己の刑事事件」の証人なども含まれます。
さらに、刑事事件は、捜査開始前の事件だけでなく、捜査・審判の終了後の事件も含みます。お礼参りを防止する必要があるからです。

(2) 面会強請・強談・威迫する行為とは

証人威迫罪で処罰される行為は、正当な理由なく、証人などに対し、次の行為をすることです。

  • 面会の強請…相手の意に反して、面会を強要する行為
  • 強談…言葉によって、強いて、自己の要求に応じるよう迫る行為
  • 威迫…言葉や動作によって気勢を示し、相手に不安・困惑を生じさせる行為

【具体例】

  • 暴力団の組員に不利な証言をした証人に対し、他の組員が「挨拶したい」と面会を強要する行為
  • 自己の犯行を目撃した者に対し、「現場には居たものの、犯人の顔は見えず、誰かわからなかった」と捜査機関に供述するよう、強く迫る行為

5.証拠隠滅罪や証人威迫罪で逮捕・起訴された場合の弁護

最後に、証拠隠滅罪・証人威迫罪の事案で、弁護士が行う刑事弁護活動のポイントについて説明しておきましょう。

(1) 証拠隠滅罪、証人威迫罪の逮捕・勾留は長期化する危険

証拠隠滅罪や証人威迫罪の嫌疑がある場合、逮捕・勾留される危険性は極めて高く、かつ、身柄拘束期間は長くなることが予想されます。

そもそも、証拠隠滅の恐れがあることは、逮捕・勾留を認める理由となりますし、勾留期間を延長する理由ともなるからです。

殊に自己の刑事事件について、証人威迫罪の嫌疑や証拠隠滅罪の教唆犯の嫌疑がある場合は、もともとの自己の刑事事件を被疑事実とした再逮捕・再勾留がなされるケースもあります。

(2) 証拠隠滅罪、証人威迫罪の犯罪成立要件の欠如を主張

証拠隠滅罪は故意犯であり、他人の刑事事件の証拠を隠滅する事実の認識がなければ、犯罪は成立しません。

例えば、「友人から廃棄物の処理を依頼され、ただのゴミだと思って投棄したところ、その中には、友人が起こした傷害事件の凶器が入っていた」というケースでは、刑事事件の証拠を隠滅する行為との認識を欠き、犯罪となりません。

また、証人威迫罪で禁止される各行為は、強請・強談・威迫と、いずれも相手の意に反して強要したり、不安・困惑を与えたりする行為であって、穏当な態様での面会要請や会話まで犯罪となるわけではありません。

弁護士としては、事実を調査し、被疑者が事実を知らず証拠隠滅罪の故意を欠くことや、行為態様が証人威迫罪の予定するものではないことを主張して、嫌疑の不存在、身柄拘束の不当性を訴え、早期の開放を求めます。

(3) 面会禁止命令の取消や解除を求める

証拠隠滅罪で身柄を拘束されると、さらなる証拠隠滅を防止する目的で、検察官の申立を受けて、裁判官が弁護士以外との接見(面会)を禁止する命令をする可能性が高くなります。

弁護士は、①準抗告や、②接見禁止解除の申立てという方法で、家族など証拠隠滅の危険のない者との面会が実現するよう活動します。

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(4) 情状弁護

証拠隠滅罪、証人威迫罪においても、犯罪の事実関係を認める場合、例えば①証人威迫の被害者との示談成立、②真摯な反省文の提出、③家族や上司などによる身柄を引受け、今後の監督を誓約する書面の提出などといった、刑事事件一般に通ずる情状弁護活動が必要なことは勿論です。

これに加えて、たとえば、

  1. 捜査機関が収集済みであった他の証拠によって、優に犯罪事実の認定が可能であり、隠滅した証拠の証拠価値は著しく低かったこと
  2. 威迫を受けた証人が知る事実は、結局、犯罪事実とは無関係であったなどの事情を検察官や裁判官に主張し、行為の違法性は乏しいこと

を理解させ、起訴猶予や刑の軽減を求めます。

(5) 証拠隠滅罪、証人威迫罪における示談交渉

被害者のいる犯罪の場合、被害者との示談を成立させることは、不起訴処分や刑の軽減を得るうえで、極めて重要です。

ただし、証拠隠滅罪の被疑者が、もともとの刑事事件の被害者と交渉したり、接触を求めたりすることは絶対にお勧めできません。それ自体が、さらなる証拠隠滅に向けた行為や証人威迫行為であると評価されて、より不利となる危険が大きいからです。

この点、証人威迫罪の嫌疑がある場合は、威迫された証人という、新たな被害を受けた者が存在するのですから、その方と直接に接触や連絡をとろうとすることは避けるべきなのは尚更です。
弁護士に依頼をして代理人として示談交渉を行ってもらうことがベストです。

弁護士なしでの示談はリスク大!示談交渉を弁護士に依頼すべき理由

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6.まとめ

証拠隠滅罪・証人威迫罪は、国家の刑事司法作用を害するという点で、警察・検察・裁判所からは、非常に厳しい目で見られる犯罪であり、決して軽々しく考えてはいけません。

証拠隠滅罪・証人威迫罪の嫌疑をかけられたり、身柄を拘束されたりした場合には、ただちに刑事事件に注力している弁護士を弁護人として依頼されることをお勧めします。

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