勾留中の生活・面会・差し入れについて

逮捕・勾留された場合は、留置場や拘置所に身を置かれ、取り調べを受けることになります。
しかし、そこでどのような生活が待っているのかを知っている方は少ないでしょう。
「逮捕・勾留なんて自分には関係ない」と思うかもしれませんが、いつ、どこで、どんな事件に巻き込まれるか誰にもわかりません。
ご自身ではなく、家族が刑事事件を起こしてしまい勾留となる可能性もあります。
今回は、勾留中の生活についてと、家族ができるサポートについて解説します。
1.逮捕・勾留とは?
罪を犯した疑いのある人物(被疑者)について、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合、警察官はその被疑者を「逮捕」します。
逮捕され、検察官送致後は、検察官も取り調べを行い、捜査により証拠資料を集めます。結果、「勾留の必要性がある」と判断した場合には、検察官は(被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内に)裁判官に「勾留請求」することになります。
検察官から勾留請求を受けた裁判官は、被疑者に質問したり、被疑者の弁解を聴取したりします。
そのうえで、逃亡や証拠隠滅を図るリスクを十分考慮して、検察官からの勾留請求を認めるか否かを裁判官が判断します。
もし裁判官が勾留請求を認めれば、10日間の勾留決定がなされます。必要があれば、検察官はさらに最長10日間の勾留延長請求を行います。
検察官は、勾留期間以内に、被疑者を起訴するか、あるいは釈放するか(不起訴・処分保留)の判断を行います。
勾留について、詳しくは以下のコラムで解説しています。

[参考記事]
勾留とは?勾留要件・期間・流れ・対応策を解説
2.留置場・拘置所とは?
次に、逮捕・勾留された時に被疑者の身が置かれる留置場・拘置所についてご説明します。
留置場とは、警察署に設置された施設で、被疑者が逮捕され勾留請求するまでの留置期間に身柄を拘束されます。
拘置所とは、法務省の施設です。起訴後被告人を勾留する場合は拘置所で身柄を拘束します。
また、起訴されておらず、被疑者の状態での勾留も、法律上拘置所で拘束されることになっています。
したがって、勾留された被疑者の身柄は留置場から拘置所へ移ることとなるのが原則なのですが、実際はそのまま留置場で拘束されることが多いです。この場合の留置場を「代用監獄」といいます。
これについては、留置場は警察署内にあるので捜査機関としても留置所のほうが取り調べを行いやすいこと、また拘置所は全国に110程度あるのに対し留置場は全国で1,100程度あり、数が圧倒的に多いことが理由とされています。
3.逮捕・勾留中の生活
では、被疑者は、留置場や拘置所でどのような生活を送ることになるのでしょうか。
(1) 勾留中の生活
勾留されると1日中取り調べを受けると想像する方がいるかと思いますが、基本的にそのようなことはありません。
留置所によって異なりますが、朝は7時頃に起床して朝食をとり、昼食は12時頃、夕食は6時頃です。就寝は9時頃となります。
それ以外の時間は取り調べを受けるのですが、一日中取り調べが行われるわけではありません。取り調べがない時間は部屋で自由な時間を過ごすことができます。
例えば、警察署に備置きされている本や、家族から差し入れられた漫画・雑誌を読んだり、手紙を書いたりすることも可能です。
また、留置場でも拘置所でも、食事は十分なメニューが提供されています。栄養士によるチェックも定期的に行われているようです。
また、洗濯も施設側が代行してくれており、週に何回かは入浴できるようです。
ただ、空調施設には差があり、留置場内は冷暖房が完備されているところが多いのに対し、拘置所内にはこれがないところがほとんどです。
(2) 差し入れの制限
勾留されている被疑者は本や手紙を読んだり、書いたりすることができます。よって、家族からこのようなものを差し入れることが可能です。
ただし、差し入れについては留置場及び拘置所で様々な制限があり、差し入れできるものとできないものがあります。
例えば、タオルやシャンプーなどの日用品であっても、中身が確認できないとの理由で差し入れ不可となっています。食料についても保存場所の関係で差し入れはできません。
一方、現金の差し入れは可能となっているので、施設内で自分の費用負担で雑誌や食べ物などを購入することができます。
また、手紙の差し入れも可能ですが、その内容が罪証隠滅や逃亡を示唆する場合は認められません。
弁護士としての経験上、身柄拘束が継続すれば被疑者には大きな疲れが出てきますので、差し入れなどによる周囲のサポートは非常に重要なものであると言えます。

[参考記事]
新宿警察署に逮捕された!面会、接見・差し入れする方法
(3) 面会・接見
勾留されている被疑者は、釈放まで家族や友人など外部の者と会うことはできません。当然ながらスマホも利用できず、インターネットも電話もできません。
このような中で、家族や友人と会って話をできることは、大きな心の支えとなります。
家族・友人に限らず、面会を希望する者は誰でも留置場や拘置所に行って身体拘束されている方と接見することができることが原則です。
(刑事訴訟法81条に基づき接見が禁止されていたら、勾留段階でも弁護士以外は接見できません。)
なお、弁護士以外との面会には、逃亡や罪証隠滅を防ぐために係員が必ず付き添うことになっています。
面会の時間帯ですが、それは各留置場及び拘置所により違うため一概にはいえませんが、大体平日午前9時〜午後5時あたりのところが多いようです。また、面会の回数は1日につき1組(3人以内)、15~30分とされているところがほとんどです。
弁護士は警察の留置場の場合には土日祝日を問わず、24時間接見できますが、拘置所の場合は平日9~17時に限られるのが原則です。

[参考記事]
接見とは?|被疑者との接見は弁護士に相談を
4.勾留を避ける・釈放のための弁護活動
勾留されると、その間は当然ながら学校や職場に行けません。
結果、退学処分や懲戒処分を受けるなど、日常生活に多大な影響を及ぼす可能性があります。
そのため、被疑者は勾留の回避・勾留からの早期釈放を目指すことになります。
しかし、釈放のための活動は被疑者本人だけでは困難なので、弁護士に依頼するのが得策です。
(1) 勾留請求の阻止
勾留は、検察官が「勾留請求」し、裁判官がその是非を「勾留質問」などを通して判断して、最終的に勾留決定するという仕組みになっています。
したがって、勾留を阻止する場合は、検察官の勾留請求を未然に防ぐことが重要になります。
勾留が認められるには、「勾留の理由」と「必要性」がなければなりません。したがって検察官には、これらの要件が満たされていないことを説明して、勾留請求を断念してもらう必要があります。
勾留の理由とは、「嫌疑の相当性」「住所不定」「逃亡または罪証隠滅の怖れがあること」です(刑事訴訟法60条1項)。したがって、定まった住所がある・仕事があるため逃げ出す恐れはないこと、証拠の隠滅の可能性がないこと、身元引受人が確実に存在することなどをうまく説明することになります。
(2) 勾留請求却下の働きかけ
検察官への働きかけを行っても勾留が請求されてしまったら、次は、裁判官に勾留請求を却下するように働きかける必要があります。
主張する点は、検察官の時と同様に「勾留の理由と必要性がない」ということです。
ただし、検察官の時に説得できなかったことを踏まえると、裁判官との折衝はより具体的で説得的な交渉を行わないと主張は認められません。
身元引受人においても、ただ単にその人を書類上紹介するのではなく、実際裁判官の面前に来てもらい、その人自身に身元を引き受けることを供述してもらうなどが考えられます。
(3) 勾留終了の手続き
以上のような阻止行動をとっても勾留が認められてしまった場合は、勾留手続きを終了させる請求を行う必要があります。
- 準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)
- 勾留の執行停止(刑事訴訟法207条1項、同法95条)
- 勾留の取り消し(刑事訴訟法207条1項、同法87条)
- 勾留理由開示制度(刑事訴訟法207条1項、同法82条)
これらの制度を使って、勾留の終了を請求していくことになります。
詳しくは以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]
準抗告とは?早期釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!
5.勾留されてしまったら弁護士へ相談
「逮捕・勾留された」となっては、家族だけでなく実際に罪を犯した本人でも「これからどうなってしまうのか」と動揺してしまいます。
逮捕に続いて勾留されると、長期に身柄が拘束され社会生活に重大な影響が生じます。身体拘束に耐えきれずに、取り調べで虚偽の供述をしてしまう危険もあります。
そうならないために、早期に弁護士に依頼することが重要になります。
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