盗撮 [公開日]2017年7月18日[更新日]2025年4月10日

盗撮で逮捕されたら余罪も発覚する?どこまで捜査されるのか

盗撮で逮捕されたら余罪も発覚する?どこまで捜査されるのか

近年では、誰でも容易に撮影できる携帯電話(スマートフォン)・小型カメラ等のデジタル機器が普及し、盗撮行為を常習的に行っているケースが激増しています。
泉総合法律事務所の経験でも、盗撮で逮捕された被疑者は、逮捕の原因となった事件以外にも同じような盗撮行為を繰り返している事例が多く存在していると認識しています。

逮捕・勾留の理由となった被疑事実以外の犯罪事実を「余罪」と言います。
被疑者として取り調べ(事情聴取)を受けた場合「余罪はバレるのか(余罪捜査はされるのか)」「余罪について話すべきか」と不安に思う方も多いでしょう。

そこで今回は、電車内やエスカレーターなどでの盗撮事件で逮捕されて、警察官や検察官から取り調べを受ける際、余罪の取り扱いはどうなるのかについて解説したいと思います。

1.余罪の意味

そもそも「余罪」とは、捜査段階においては逮捕・勾留の基礎となった被疑事実以外の犯罪事実、起訴後の公判段階においては起訴された事実以外の犯罪事実のこと言います。
例えば、盗撮で被疑者を現行犯逮捕した後に取り調べた結果、過去にも盗撮をしていた事実が明らかになった場合、この新たに明るみに出た犯罪は「余罪」となります。

余罪がどのように発覚するのかというと、「自宅の捜索等の警察捜査の結果、スマホやパソコンに保存していた別の盗撮画像(盗撮動画)が見つかった」「被疑者が自ら別の犯罪について自白した」場合が挙げられます。
なお、仮に過去の盗撮データを削除しても、警察などが解析すればデータは復旧できるケースがほとんどです。

【前科・前歴とは】
前科とは、有罪判決を受けた経歴を言います。また前歴とは、捜査機関により捜査の対象となったが有罪判決を受けていない犯罪事実を指します。これに対し余罪は、身柄拘束または起訴の対象となっていない犯罪事実のことです。
なお、余罪には、「身柄拘束の基礎となったが、起訴されていない犯罪」も含むので、前歴と余罪は重なる部分があります。

2.余罪の捜査はされる?

盗撮事件の場合、逮捕をされるとカメラ(スマートフォンを含む)のデータを警察官がチェックするのが通常です。

犯罪白書のデータによると、他の性犯罪類型と比較しても、盗撮型の再犯率はきわめて高いと言えます。よって、警察も盗撮犯には通常余罪があると判断しているため、余罪については徹底的に調べると言っても過言ではありません。
スマートフォンなどに過去の盗撮データが多くあれば、余罪多数と見られ家宅捜査まで踏み切られることもあります。

通常の場合、盗撮データは女性のスカートや下着しか映っていないため、盗撮の被害者が誰であるかを警察が特定することは困難です。
しかし、そのデータがどの駅でいつごろ撮影されたものであるのか?という点を取り調べることはできます。

完全な初犯よりも、余罪がある被疑者の方が厳しい目で見られるのは当然です。余罪ありという事実は被疑者にとって悪い情状となるため、勾留・起訴される可能性が高くなってしまいます。

3.盗撮の余罪について話すべきか?

犯罪行為の疑いをかけられている被疑者は、「黙秘権」といって、捜査機関や裁判所の質問に対し供述を拒否する権利を有しています。
したがって、被疑者は捜査機関等から余罪について質問されても、否認・自白せず、一切の供述を拒否することができます。

しかし、黙秘権を行使することが被疑者にとって必ずしも有利な結果になるとはいえないケースもあります。
黙秘権は憲法で保障された重要な人権ですから、黙秘権を行使したことで不利益に扱うことは許されないはずですが、法律の理屈と現実の実務は必ずしも同じではないのです。

そこで、現実を考えると、余罪について黙秘権を行使することによって生じうるメリット・デメリットを確認した上で、慎重に検討する必要があります。

(1) 余罪を黙秘するメリット

余罪があるということが事実の場合に黙秘権を行使することのメリットは、余罪についての刑事責任を免れる可能性があることです。

捜査機関に余罪の存在を知られなければ、余罪について処罰されることはありません。
また、余罪の存在を知られていても、黙秘することによって起訴するに足りる証拠の収集を阻止できれば、やはり刑事責任を免れることができます。

(2) 余罪を黙秘するデメリット(=自白するメリット)

余罪について追及されたときに黙秘権を行使すると、警察・検察は「反省していない」「余罪を隠している」と判断し、取り調べが苛烈になったり、勾留請求・勾留延長請求されて身柄拘束期間が長くなったりする可能性があります。
特に、自白がなくとも余罪の嫌疑が明らかなケースでは、捜査対象となっている本罪についての起訴・不起訴の判断において不利な材料として斟酌される可能性が高まります。

例えば、逮捕時に押収されたスマホや家宅捜索で押収されたパソコンから盗撮とみられる画像や動画が発見されれば、自白しなくとも余罪の嫌疑は明白です。それにも関わらず黙秘すれば、検察官には「反省していない」と判断されてしまいます。

一方、余罪を進んで自白すれば、本罪の捜査と並行して余罪の捜査もある程度早く進み、本罪と余罪を裁判において同時に審理される可能性があります。
そうなると、別々に裁判を受けるよりも通常は量刑が軽くなりますし、事件の終了も早くなります。

 

以上より、余罪を自白することのメリットとデメリットを天秤にかけてどちらを選択するべきかは、正直に言えば「賭け」になります。

ひとりの人間として言えば、他にも盗撮行為をした事実が本当であるならば、これを機にすべて正直に話したうえで、二度としないことを誓約するべきでしょう。
しかし、弁護士は被疑者の利益を守ることが最大の義務です。被疑者には黙秘権があるため、弁護士から余罪を認めるよう強制することはしません。

余罪について話すべきか否かを決めるのはあくまでも被疑者本人ですが、弁護士は、余罪を認めなかった場合・認めた場合のそれぞれの見通しを判断材料として提供し、アドバイスします。

4.余罪の被害者との示談交渉

盗撮で逮捕されてしまった場合、被害者と示談をすることが重要です。謝罪や反省の気持ちを受け入れてもらい示談が成立することで、長期の身体拘束を回避できたり、不起訴処分を獲得できたりする可能性が高まります。
特に、盗撮の初犯は被害者との示談が成立していればほとんどの確率で不起訴となります。

これは余罪の被害者についても同じです。余罪について正直に自白するなら、余罪の被害者が特定できる限り、早急に示談交渉を行い示談を成立させるべきです。

しかし、示談交渉は被害者の心情に配慮して慎重に進める必要があります。被害者は、盗撮の加害者とは会いたくないと考えるのが通常なので、当事者同士で示談交渉を行うことが困難な場合が多いです。

そのため、盗撮で逮捕された被疑者やその家族の方は、即座に弁護士に示談交渉を依頼するのが得策です。

なお、被害者が特定できず示談ができない場合には、贖罪寄付(一定の金銭を弁護士会や慈善団体に納める)を行うことも考えられます。

盗撮事件の示談交渉の流れと弁護士に依頼するメリット

[参考記事]

盗撮事件の示談交渉の流れと弁護士に依頼するメリット

5.盗撮で逮捕されたら弁護士へ相談を

盗撮事件で逮捕されて余罪がある場合、盗撮事件の弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼して、弁護士に相談しながら対応することをお勧めします。
弁護士に相談することで、今後の不安を解消でき、安心して今後の対策を立てることができるようになります。

泉総合法律事務所は、盗撮事件の刑事弁護に多数取り組んでおり、様々な盗撮事案に精通しております。
代表弁護士である泉義孝には、盗撮事件被害者との示談成立の実績も多くあります。どうぞお早めに相談予約・ご依頼ください。

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