未成年の飲酒|一緒にいた場合は逮捕される?

「未成年が飲酒をすると、一緒にいた成人や酒類を提供した店側が処罰される」という認識はみなさんの中にあると思います。
では、具体的にどのような要件を満たしたとき、どのような罪に問われるのでしょうか。また、未成年側が罪に問われないのは何故なのでしょうか。
以下においては、未成年者に酒類を販売・提供した場合について、成立する罪及び刑罰を中心に説明します。
1.未成年者への酒類販売・提供の罪
(1) 未成年者飲酒禁止法
未成年者飲酒禁止法では、次のように規定されています。
3条
1項 飲酒することを知りながら、満20歳未満の者に対して、酒類を販売・供与した営業者に対して、50万円以下の罰金を科す。
2項 未成年者の飲酒を知って制止しなかった親権者や監督代行者に対して、科料を科す。
1項の酒類を販売する営業者は、例えば酒屋、コンビニエンスストア、スーパーなどです。
供与する営業者は、飲食店、居酒屋、スナックなどが該当します。
「親権者」とは、その名の通り「親」を指します。
「監督代行者」とは、親権者に代わって日常的に未成年者を監督すべき義務を負っている人のことで、例えば、子どもを預かり同居して面倒を見ている者(兄弟を含む)や、住み込みで未成年の従業員を雇っている雇用主、学生寮の舎監などが該当します。
サークルや部活、会社の先輩は、日常的に未成年者を監督していない限り、監督代行者には該当しません。
しかし、サークルや部活の監督・顧問が学生を引率した先の飲み会であった場合は、その監督・顧問は監督代行者として罪に問われる可能性が高いです。
また、会社の飲み会であった場合には、上司や会社が使用者責任(民法715条)を問われるケースがあります。
さらに、酒類を20歳未満の未成年者に販売・供与した法人の代表者または法人もしくは自然人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または自然人の業務に関して、未成年者が飲酒することを知りながら酒類を販売又は供与した場合には、違反行為者が50万円以下の罰金に処せられるほか、その法人又は自然人も50万円以下の罰金に処せられます(4条)。
つまり、酒類を販売又は供与した従業員だけでなく、その法人や事業主も罪に問われるのです。
(2) 相手が未成年者と知らない場合
上記の営業者が、相手が未成年者と知らずに酒類を販売又は提供した場合には、罪には問われません。
したがって、酒類を販売又は提供する人にその認識がなければ、罪には問えないことになります。
しかし、実際問題としては、未成年者飲酒禁止法1条4項において、営業者には「年齢確認等の措置を行うこと」が義務付けられていますから、未成年者に酒類を販売又は提供した場合には、少なくとも未必的な認識を推認されることが多いと思われます。
ただし、年齢15歳の少年にたばこを販売した事案に関してですが、高松高判平27.9.15は、少年が店内のタッチパネル式年齢確認システムで「20歳以上」と答え、店側も身分証の提示を求めなかったことを認めながら、「店員が少年の顔を見た時間は極めて短時間であり、当時の少年の身長が約167㎝で成人男性でもおかしくなく、未成年者と判断、認識していたと認めるには合理的な疑いがある。」として、無罪としています。
なお、親権者や監督代行者は通常未成年者の年齢を知っているはずですから、上記のような例外は適用されないと考えて良いです。
(3) 民法改正による成人年齢の引き下げについて
成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法の改正案が成立し、2022年4月1日から施行されています。
しかし、民法が成人年齢を18歳にしたからといって、アルコールが成長期にある者に与える悪影響が変わるわけではありません。
未成年飲酒禁止法の目的は、アルコールが成長期の身体にとって害があるため、成長期にある者を保護することにあります。
また、立法背景には、飲酒は喫煙と並んで、非行の温床になるから禁止した方がよいという考えもあったようです。
そのような配慮から、成人年齢が18歳になっても、19歳など未成年の者の飲酒は認められないことに変わりありません。
ビール酒造組合のホームページによると、未成年者は、アルコールを代謝する働きが弱いこと、アルコールは、成長期にある脳の神経細胞への影響が大きいこと、肝臓や膵臓などの臓器障害に陥りやすいことなど、成長期にアルコールを摂取することの悪影響が指摘されています。
2.未成年者に飲酒させて逮捕されるケース
先述の通り、未成年者飲酒禁止法違反に問われると50万円以下の罰金や科料(1000円以上1万円未満の金銭納付)を科されることになります。
罰則があるのは未成年者本人ではなく、周囲の大人(親権者や監督代行者、営業者)です。しかし、これ以外で周囲にいた人も以下のような罪に問われることがあり、場合によっては逮捕の可能性もあります。
- 強要罪:嫌がる未成年者に対し、脅すなどして無理矢理酒を飲ませた場合
- 傷害罪・過失傷害罪・重過失傷害罪:無理にお酒を飲ませた結果、急性アルコール中毒などで未成年者の心身に異常を来した場合
- 保護責任者遺棄罪:未成年者が泥酔等してしまった、放置する、介抱しないなどで保護責任を果たさなかった場合
- 現場助勢罪:「イッキ」コールなどで場を盛り上げ、未成年者の飲酒を助勢した場合
特に、悪質性が高く、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると判断されれば逮捕・勾留などの身体拘束が伴うリスクがあります。
「飲食店経営者が未成年と知りながら継続的に酒類を提供していた」「成人が未成年者に組織的・計画的に飲酒させていた」「飲酒が原因で未成年者に健康被害が生じた」という場合は、特に弁護士への相談をお勧めします。
一方、軽微なケースでは書類送検で済むこともあります。
近年は、未成年者の飲酒防止に対する社会的関心が高まっており、たとえ「少量だから」「特別な日だから」という理由でも、法的責任を免れることはできません。
3.未成年者本人が処罰されない理由
未成年者が酒類を購入したり飲酒したりしても、未成年者に対する罰則規定がありませんので、未成年者本人は逮捕・処罰されることはありません。
実質的な理由としては、「未成年者飲酒禁止法違反は福祉犯と位置付けられているので、未成年者本人を処罰するのは困難である。ここにいう福祉犯とは、大人は罰せられるけれども子供は罰しないということであり、あくまでもこの法律は子供を保護するためであるから、保護対象である子供を罰することは論理矛盾である。」とされています。
なお、法的な罪に問われないといっても、警察に補導されて学校や職場に連絡をされると、停学・退学、解雇などの重い処分を受ける可能性はあります。
また、酔った勢いで喧嘩をして相手に暴力をふるえば、暴行罪や傷害罪で逮捕される可能性はあります。
4.まとめ
未成年者に酒類を販売・提供することは犯罪になります。年齢確認等の措置をとるように注意しなければなりません。
また、未成年者に違反行為を強要することは絶対にしてはならないことです。
仮に飲酒をした未成年が急性アルコール中毒になったり、喧嘩をして負傷したり、器物損壊などのトラブルを起こしたりした場合には、一緒にいた人が民事上の法的責任を問われ、親から賠償金(慰謝料・治療費など)を請求されることもあります。
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