警察に逮捕されたらどうなる? 起訴・不起訴の決定までの流れ

「魔が差して痴漢をしてしまい、その場で現行犯逮捕されてしまった」「酔った勢いで暴行事件を起こしてしまった」など、刑事事件を犯して逮捕されたらどうなるのでしょうか。
また、警察に逮捕された場合、実刑を免れるためには何をすべきなのでしょうか。
今回は、万が一刑事事件に関わって警察に逮捕・検挙されてしまった場合、ご本人や家族が冷静に対処できるように、逮捕から起訴・不起訴決定までの流れについて解説します。
なお、起訴後の裁判を含めた全体の流れについては、「刑事事件解決の流れ」をご覧ください。
1.逮捕とは?
警察は、罪を犯した疑いのある人物(被疑者)について、逃亡・証拠を隠滅する危険のあるときには、その身柄を強制的に一定期間拘束することができます。これを「逮捕」といいます。
逮捕には、通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕があります。
通常逮捕(=後日逮捕)は、捜査機関があらかじめ令状を裁判官に請求し、この令状を基に被疑者を逮捕するものです。逮捕の条件が備わっているかどうかを事前に裁判官が審査するもので、逮捕の原則的な手続です。
他方、現行犯逮捕は、捜査機関や私人が、「①犯行を現に行っている者」「②犯行を終えた直後の者」「③犯行を終えてから間がないと明らかに認められる者(例:「泥棒だ!」と呼ばれながら追いかけられている者)」を令状無くして逮捕するものです。
痴漢の犯人を駅員が取り押さえたり、万引き犯を万引きGメンが現場で確保したりするのが現行犯逮捕の典型例です。
警察に逮捕されることを事前に知ることは稀であり、多くの場合、逮捕は突然されてしまうものです。
逮捕状を準備したことが知られれば逃走や証拠を隠滅されてしまう危険がありますから、逮捕が予想される事案でも、捜査機関は決して逮捕の予定があるとは明かさないことが原則なのです。なお、時間帯としては、朝に自宅で逮捕されることが多いようです。
2.警察に逮捕された後の流れ
(1) 逮捕・取り調べ
警察は被疑者を現行犯逮捕・通常逮捕した後、警察署に連行してその者を取り調べます。その後、被疑者を逮捕してから48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送ります。
これを検察官送致といいます。
なお、あらかじめ検察庁から指定された軽微な犯罪の場合には、警察は事件を検察官に送致することなく終了させ、被疑者を釈放する場合があります。これを「微罪処分」といいます。
たとえば、スーパーにおいて数百円の食品を万引きし警察官に見つかってしまい逮捕されたものの、それが初犯で素直に罪を認め、その場で被害弁償も済ませ、反省をしていれば、微罪処分として早期に釈放されることがあります。

[参考記事]
微罪処分になる要件|前科・前歴はつくのか?
警察から事件を送致された検察官は、被疑者の取り調べを継続して行います。
検察官送致後も検察官が引き続き身柄を拘束する必要性があると判断したときは、送検後24時間以内かつ逮捕から72時間以内に裁判所へ「勾留請求」をします。
(2) 勾留による身柄拘束
裁判所は、被疑者との面会の結果と、検察官から提出された証拠資料に基づき、勾留請求に対する判断を下します。
裁判所により勾留が認められた場合には、勾留を請求した日から10日間被疑者の身柄は拘束されることになります。
また、勾留は、必要性が認められる場合には、最大で10日間延長することができます。

[参考記事]
勾留とは?勾留要件・期間・流れ・対応策を解説
(3) 検察官による処分決定(起訴・不起訴)
起訴前勾留の期限前の段階で、検察官により起訴処分・不起訴処分の判断がされます。
検察官が「犯罪の事実を証明でき、被疑者を処罰すべきである」と考えた場合には起訴します。
逆に、犯罪の事実を証明できない、あるいは犯罪の事実は証明できるが被害弁償や反省の具合から今回は処罰する必要はない、と考えた場合には不起訴とします。
被疑者を起訴するケースでも、罰金刑に処する場合には、被疑者の同意の下、裁判所が公開の裁判を開くことなく書類上の手続だけで罰金刑を言い渡す「略式手続」を求めることもできます。これを「略式起訴」といいます。勾留された被疑者が略式起訴を受けると、裁判所から罰金刑を宣告する略式命令が届いた段階で釈放されます。
略式起訴は、公開の裁判を経て刑罰を科す正式起訴のように、(保釈されない限り)裁判が終了するまで引き続き身柄を拘束されることはないという点にメリットがあります。

[参考記事]
略式起訴・略式裁判で知っておくべきこと|不起訴との違い
他方、検察官が裁判所に対し、公開法廷での刑事裁判を開いて厳格な手続のもとに審理を行い、刑罰を科すことを求めるのが公判請求です。

[参考記事]
公判請求とは?裁判の流れ、略式請求との違いを解説
(4) 刑事裁判
検察官により正式起訴された場合、被告人(起訴後の被疑者)は裁判にかけられます。
犯罪事実の証明がある限りは有罪とされ、相応の刑罰を裁判官(重大犯罪の場合は裁判員を含む)により言い渡されることになるでしょう。
他方、検察官が犯罪事実を証明できなければ無罪となります(身に覚えのない痴漢の疑いを掛けられたようなケースなど、いわゆる冤罪です)。
しかし、検察官は十分な証拠を準備した上で起訴を行うのが通常であるため、起訴をされたら無罪を勝ち取れる可能性は極めて低いと考えるべきでしょう。
なお、勾留中に起訴された後は、自動的に勾留の効力は継続し、裁判の終了するまで被告人は身柄を拘束されることになります。
そのため、逮捕され、正式起訴された場合には、数ヶ月に渡り身柄を拘束されることもあるのです。
もっとも、起訴後勾留には、保釈が認められることがあります。

[参考記事]
保釈をわかりやすく解説|なんのためにするのか?
3.逮捕・勾留の不利益
上述のとおり、警察に逮捕されてしまうと、その後非常に長期間に渡り身柄を拘束されてしまう可能性があります。
長期の身柄拘束は心身に多大な負担を強いることに加え、退学・解雇など、被疑者・被告人の社会生活にも大きな悪影響を与え、ひいてはその家族の生活を破壊することにもなりかねません。
また、真実として罪を犯しており、起訴となって有罪判決を受けた場合は前科がついてしまいます(罰金刑であっても前科はつきます)。
前科の情報は公開されるものではありませんが、履歴書に賞罰欄があるときに記載しないまま就職し、その後に前科が発覚した場合には履歴の詐称として懲戒解雇など不利益に扱われることもあります。
また、公務員、学校教員や税理士など一級建築士など、一定の職業に就く際には、前科の内容により資格制限に引っ掛かることがあります。
可能な限り、前科の付くことは避けたいところです。
さらに、最終的に実刑判決になれば、一定期間刑務所に収監されることになるため、被告人の人生に大打撃を与えることは必須です。
たとえ起訴されてしまった場合でも、可能である限り執行猶予付の判決にとどめてもらうことは、将来の人生にとって非常に重要な意味を持つのです。

[参考記事]
執行猶予とは?執行猶予付き判決後の生活について(仕事、旅行)
4.まとめ
警察に逮捕されてしまった後は、限られた時間の中で事件が処理されていきます。
その過程において、勾留や起訴など、被疑者にとって様々な不利益が生じる可能性があります。
警察に逮捕されたら、本人あるいはその家族の方は、なるべく早めに弁護士に相談することを強くお勧めします。
弁護士は、長期の身柄拘束を回避するため検察官や裁判官に働きかけたり、被疑者と直接接見して取り調べのアドバイスを行ったりする他、勾留請求の却下、準抗告、勾留延長の阻止、保釈を求めたりするなどの活動を行います。
また、不起訴や執行猶予付判決を得るために、被害者との示談交渉や、情状として有利になる証拠を収集して検察官や裁判所に提出するなどの活動をします。
もちろん、無実であるならば、冤罪を晴らすため、検察官の犯罪事実の証明を阻止するために知恵を絞り、全力を尽くすことになります。
泉総合法律事務所は、刑事事件の解決実績が豊富な事務所です。ぜひ一度無料相談をご利用ください。
5.警察の逮捕に関する実際の質問
-
Q.彼氏が警察に連行されてしまい、今後の流れを知りたいです。
彼氏が警察に連れて行かれました。彼氏とは駅で待ち合わせしており、遅いなと思っていたところ警官に囲まれて彼が連れて行かれるのを見ました。任意同行のように見えましたが、罪状は教えてもらえませんでした。
警察の方には、「時間がかかるかもしれないからあなたは帰った方がいい、彼が連絡できるようになったらすると思うから」と言われました。もうすぐ24時間が経過しようとしています。弁護士はついているのか?家族に連絡はいっているのか?など、何もわからない状態です。私は彼のご家族と面識はありますが、連絡先はわかりません。
このような場合 、彼や彼の弁護士と連絡をとる手段はないのでしょうか?
また、今後の流れや恋人である私にできることを教えていただきたいです。 -
A.最大で23日間の身体拘束になるケースもあります。
まず、彼氏が当番弁護士を呼ぶなりして、その弁護士に質問者様(彼女)への連絡を依頼すれば、弁護士経由で連絡が来ます。それ以外で連絡を取るのは難しく、例えば質問者様が弁護士に弁護依頼をし、その弁護士を通して事情を把握するしかないと思われます。
逮捕後の流れですが、逮捕から48時間経過後は通常検察官に送致され、検察官が本人を取り調べます。逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断されれば、検査官は裁判官に勾留請求をするのが通常です。
その後、裁判官は本人に勾留質問をして、勾留の必要性を判断します。裁判官の勾留質問の結果、勾留請求が却下され釈放されることも少なからずあります。
一方、勾留決定された場合は通常10日間の勾留となり、捜査が終わらなければさらに10日間の勾留となることも多いです。逮捕から最大23日間で起訴・不起訴の処分が決まりますので、勾留決定となったら早期に弁護士に弁護を依頼する必要があります。
一定の条件を満たせば勾留取り消しを求める準抗告が裁判所に認められて釈放されることがありますが、このハードルはかなり高いです。
釈放されて在宅事件になれば、処分までの時間制限もなくなり、本人に有利な処分を得やすくなります。本件のようなケースでは被疑事実を早期に把握することが早期解決につながりますので、早急に弁護士に刑事弁護を依頼すべきです。