検察 [更新日]2025年7月24日

検察官(検事)の役割・職務内容を分かりやすく解説

検察官(検事)の役割・職務内容を分かりやすく解説

1.検察官(検事)とは?

検事」とは、正式には、国家公務員である「検察官」の階級上の名称(官名)です。

検察庁法
第4条 検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。
第6条1項 検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる。

このように、犯罪の捜査を行い、公訴を提起し、さらに裁判の結果である有罪判決の刑を執行することが、検察官の主な仕事です。

「公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務」とは、例えば相続人が不明な遺産が残された場合に、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を請求する権限(民法952条1項)のように、公的な立場から法的手続を行うことが期待されている事項です。

このような「検察官」には、「検事総長」「次長検事」「検事長」「検事」「副検事」という階級があり(同法3条)、またこれとは別に「検事正」「上席検察官」という職名があります(同法9条1項、10条1項)。

さて、検事は、刑事事件について捜査・公訴・判決の執行を行うことがメインですが、実際はそれにとどまるものではありません。

例えば、法務省内で行政官として執務する、次のような例があります。

  • 刑事局(刑事法制管理官室)で、刑法や刑事訴訟法などの法律を立案する業務
  • 刑事局(総務課)で、検察の組織運営を担う業務
  • 訟務局で、国を当事者とする民事・行政訴訟における国の代理人となる「訟務検事」・法務省外局である出入国在留管理庁で、出入国管理の業務

また法務省内にとどまらず、外部の国家機関にも出向する例もあります。

検事の活躍するフィールドは、刑事事件の捜査と裁判という一般の方が抱くイメージを超えた多彩なものであり、むしろ、「国家公務員の中の法律のプロ」という方が適確な表現と言えます。

2.検察官の役割

一般的に、検察官は、警察官等が把握した事件について、警察官に対して捜査指揮をするとともに自らも捜査をし、検察官面前調書を作成してどのような事実が存在したのかを明らかにします。
そして、捜査の結果、被疑者の起訴・不起訴の判断、そして起訴するとして略式起訴(罰金刑)にするのか公判請求(裁判)にするのか等を決めます。

以下で、検察官の役割を更に詳しく見ていきます。

(1) 事件発生直後

犯罪捜査の第1次的な役割を担うのは警察ですが、検事はいかなる犯罪でも捜査することが可能であり、必要があれば警察任せにせず、自ら捜査に乗り出すことができます。

実務上では、初動捜査は、圧倒的多数の事件において警察官が行っています。検察官が自ら事件を見つけて捜査を開始することもありますが、そのほとんどが財政経済事件等のいわゆる知能犯事件で、検察官が殺人や傷害、痴漢等の事件を自ら見つけて捜査を行うということはほぼありません。

そのため、検察官が自ら事件発生現場の検証や鑑識活動を行うようなこともほぼありません。
鑑識活動などを適切に行うためには、専門的な技術や機材等が必要になりますが、そもそも検察官は鑑識活動などに関する専門的な技術も機材等も持っていないため、行おうにも行えないという面もあります。

検察官は、警察官が初動捜査を行い、ある程度証拠が集まった段階で事件送致を受け、その後に補充的に捜査を行うのが通常です。しかし、殺人等の重大事件や複雑な経済事件等の場合には、事件送致前の段階から検察官が警察官から事件の報告を受け、警察官に対して、被疑者を逮捕すべきかどうかを含めた具体的な捜査方針を指示する場合もあります。

(2) 検察官送致から処分まで

検察官は、例外はあるものの基本的には警察官から事件送致を受けた後に捜査を開始します。

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検察官は、警察官から送られてきた事件の記録一式を読み、被疑者の処分を決めるに当たって解明しておかなければならない事項が残されているならば、補充の捜査を行います。

補充の捜査は、検察官が警察官に指示して行わせることもあれば、検察官が自ら行うこともあります。警察から送られてくる証拠書類、証拠物などを吟味し、足りない証拠があれば補充の捜査を依頼し、検事自らもさらに被疑者や参考人の取り調べを行い供述調書を作成するのです。

殊に、被疑者を逮捕した身柄事件では、検事が取り調べを行い、必要と判断すれば裁判所へ勾留請求を行います。裁判所は検事の勾留請求を受けて勾留の可否を決定します。
また、勾留期限(勾留請求した日から10日間)のうちに、捜査が終了せず、勾留を延長するやむを得ない理由があるときは、検事が裁判官に勾留延長請求を行います。

勾留中、被疑者が弁護人以外の者と面会や物品・書類の授受をすると証拠隠滅などの危険があると検事が判断すれば、裁判官に面会等の禁止を請求することもできます。
勾留請求や勾留延長請求が却下されれば、これを不服として準抗告を申し立てて争うのも検事の役割です。

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身柄事件の場合は、逮捕から最大23日間の勾留満期までに、被疑者を起訴するか、それとも不起訴とするかを検事が決めることになります。

検事には、起訴・不起訴について広汎な裁量権が認められており、起訴すれば有罪判決が見込める場合でも、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としない」と判断すれば、不起訴(起訴猶予)とすることができます。

(3) 起訴後の裁判

起訴となり、特に公判請求(裁判)となった場合、訴追側として公判に出廷するのも検事です。刑事裁判では被告人は無罪と推定されるため、裁判官が合理的な疑いを容れない確信に達するまで有罪を立証する責任を負っています。

争いのない事件では、捜査段階で作成された供述調書等の書類を用いて証明するのが通常です。
争いのある事件では、証人尋問が検察官立証の中心になることが多いです。

(4) 判決後

検察官は、被告人が実刑判決を宣告された場合であれば、刑務所側に対して懲役刑を執行するように指揮して服役を開始させます。

無罪判決や求刑よりも著しく軽い刑が宣告された場合、検察官は、控訴してその判決を是正する必要があるかを検討します。

控訴するかどうかを判断するに当たって解明しておかなければならない事項がある場合や、控訴することが決まって控訴審の裁判で追加の立証を行う必要がある場合には、自ら、あるいは警察官に指示して補充の捜査を行うことがあります。

2.公判検事について

公判検事は、捜査検事が起訴した事件の公判を担当する検事のことです。

公判検事は、裁判所に審判してほしい犯罪事実(公訴事実)を読み上げ(起訴状朗読)、証拠をもって証明しようとする事実を詳細に説明し(冒頭陳述)、捜査段階で収集した証拠を取捨選択して裁判所に提出し、証人や被告人を尋問します。

そして結審前には、事実面・法律面から被告人が有罪である旨の検察側の最終的な意見をまとめて主張し、あわせて弁護人の主張に反論します(論告)。

論告の最後には、検察側として求める具体的な刑の内容を告げます。これが「求刑」です。

「求刑」は一方当事者である検事の意見に過ぎませんが、実務上は、「求刑の7掛け」すなわち、求刑の7割から8割の刑期を言い渡すことが多く、裁判官の最終的な判断に大きく影響していることが実情です。
「求刑」は、裁判(公判)を担当する公判検事ではなく、起訴・不起訴を決定する捜査を担当する検事が決定するのが通常です。

3.刑事事件は泉総合法律事務所へ

検察官は、刑事手続のほぼ全般にわたって関与し、様々な役割を担っています。

ご自身、あるいは身近な方が警察官や検察官から取り調べを受けているような場合、その後どうなってしまうのか…と非常に心配になると思います。
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