教員の犯罪・性犯罪について|教員免許はどうなるのか?

2026年12月から、学校の教員など、児童に接する職業に就く者の性犯罪歴の有無を確認する「日本版DBS」の運用が開始されます。
これは2024年6月に成立した「こども性暴力防止法※」に基づき、子どもの性犯罪被害を防止するための制度です。
このような法律が必要とされるほど、教員等による犯罪・性犯罪の蔓延状況が悪化していると認識されているのです。
※こども性暴力防止法:正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」
本コラムでは、犯罪・性犯罪を犯してしまった教員の方やその家族に向けて、罰則や教員免許の扱いについて解説します。
1.教員の犯罪は増えている!
2024年12月の文部科学省による発表では、2023年度に児童生徒や同僚らへの性暴力・セクハラで処分された公立学校の教員は、過去最高の320人(前年比79人増)にのぼったとされています。
このうち、児童生徒ら子どもへの性暴力による処分は157人(前年比38人増)ということです。
(※読売新聞オンライン2024年12月21日記事「わいせつ教員320人処分、子どもへの性暴力は20代が最多…「窓口へ相談」による発覚増」)。
教員が犯してしまうことが多い犯罪の例としては、次のような行為があげられます。
- 盗撮行為(撮影罪):スカートの下からひそかに下着姿を撮影する行為など
- 不同意わいせつ罪、不同意性交等罪:16歳未満の被害者に対するわいせつ行為、性交等
- 児童買春:18歳未満の児童に金銭など対償を供与するなどして性交等をする買春行為
- 児童ポルノ禁止法違反:18歳未満の児童の身体の性的な部位などの写真等(児童ポルノ)を製造したり、所持したりする行為
- 青少年保護育成条例違反:18歳未満の青少年とのみだらな性交等の行為

[参考記事]
教員(教師)が盗撮で逮捕された場合のリスクと対処法
2.教員が犯罪を犯すとどうなるのか?
(1) 教員免許について
1 拘禁刑の有罪判決を受けたとき
たとえば、スカートの下から下着を撮影する性的姿態等撮影罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金刑です(性的姿態撮影等処罰法2条1項)。拘禁刑は刑務所に収監されてしまいます。
教員の犯罪で、拘禁刑以上の刑の有罪判決が確定したときは、たとえ執行猶予付き判決でも、教員免許は失効します(教育職員免許法第10条1項1号、第5条1項3号)。
2 不起訴や罰金刑となったとき
教員の犯罪で、不起訴(起訴猶予)または罰金刑で済んだ場合でも、教員免許が無事とは限りません。
公立学校の教員の場合は、全体の奉仕者にふさわしくない非行として、懲戒処分の対象となります(例:地方公務員法29条1項3号)。
処分の内容はその犯罪行為の内容によりますが、「懲戒免職」となれば教員免許は失効します(教育職員免許法10条1項2号)。
私立学校の教員の場合も、通常、就業規則に定められた懲戒事由に該当し、犯罪行為の内容に応じた重さの懲戒処分を受けます。
児童に対する性的犯罪の場合は、もっとも重い処分として懲戒解雇となることが多く、その場合、教員免許は取り上げられてしまいます(教職員免許法11条1項、10条1項2号)。
(2) 刑事罰について
1 教員の性犯罪は有罪判決となる可能性が高い
教員の性犯罪に対する社会の目は非常に厳しいものがあります。まして、自分の教え子が被害者というケースでは、教員の立場を利用した著しく悪質な犯行とみなされます。
多くの場合、被害者の保護者の怒り、処罰感情も激しいものがあり、捜査機関には重罰を要求し、被疑者からの示談申し入れにも容易には応じてもらえません。
このため逮捕・勾留されるだけでなく、起訴され、正式な法廷での公開裁判を経て、有罪判決を受ける可能性がかなり高いケースと言えます。
例えば、16歳未満の者に対する不同意わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑です(刑法176条3項)。16歳未満の者に対する不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑です(同177条3項)。
これらは非常に重い刑と言えます。
(3) 実名報道について
報道機関がどのような犯罪を報道するか、また報道する場合に実名報道をするかは、それぞれの報道機関がその都度判断しているに過ぎません。
教員が逮捕された当日に、たまたま他にニュースバリューのある大事件が発生すれば、報道を免れることもあるでしょう。
しかし、そのような偶然の幸運を除けば、教員の性犯罪は、重大で悪質な事案と評価されて、実名報道されてしまうケースが多いと言えます。

[参考記事]
痴漢で逮捕後、実名報道されることはあるの?
3.教員が犯罪を犯した場合にするべきこと
(1) 早期の示談交渉が大切
上記のような事態を避けるには、できるだけ早期に被害者の保護者との示談を成立させることが肝要です。
起訴前に示談を成立させることができ、被害者側に刑事告訴や被害届を取り下げてもらえれば、不起訴(起訴猶予)となる可能性もあります。
また、早期に示談交渉を開始し、被害者側に対して誠意ある謝罪と提案をおこなっていれば、仮に示談に応じてはもらえず起訴されてしまったとしても、真摯な反省と誠意ある態度と認められ、裁判官による量刑が軽くなったり、執行猶予付き判決を受けることができたりする可能性が高まります。
(2) 医療機関での治療が適切なケースも
さらに、一種の精神疾患に分類される「小児性愛症」に基づく犯行の可能性があるケースでは、治療を受けるために真剣に医療機関への通院を行うことが、再犯の可能性を減少させる事情として被疑者に有利に考慮してもらえる場合もあります。
そのような対応は、同種犯罪の弁護経験が豊富な弁護士のアドバイスのもとに実行するべきです。

[参考記事]
子どもに対するわいせつの罪|小児性愛障害の治療
4.最近教員が逮捕された事例を紹介
最後に、教員が犯罪で重い有罪判決を受けた裁判例と、下着の盗撮行為で逮捕されたケースをニュースからご紹介します。
これらはいずれも実名報道されたケースです。
1:14歳の教え子に性的暴行で懲役9年の判決
東京都練馬区の公立中学校長(男・57歳)が、2010年当時14歳だった教え子の女子生徒に性的暴行を加えて怪我をさせた等の行為により、改正前刑法の準強姦致傷罪などで、2024年12月、東京地裁により、懲役9年の判決を受けました。
※NHKニュースウェブ・2024年12月9日記事「教え子に性的暴行・中学校の元校長に懲役9年の判決・東京地裁」
2:スマホでスカート内を撮影した小学校教員が逮捕
広島市立小学校の教諭(男・27歳)が、商業施設店舗内で10代女性2名のスカートの下にスマホを入れた靴を差し入れて、下半身を盗撮したうえ、逃走を止めようとした男性に体当たりの暴行をしたとして、性的姿態撮影処罰法違反および暴行罪で逮捕されました。
この被疑者は、別件の盗撮行為で現行犯逮捕され、いったん処分保留となりましたが、今回、同種犯罪の容疑で再逮捕されたものです。
※読売新聞オンライン・2025年9月23日記事「小学校教諭の男、女性2人のスカート下にスマホの入った靴を差し入れ撮影した疑い…逃走時には暴行容疑」
5.まとめ
教員が犯罪、とくに児童や教え子に対して性犯罪などを行ってしまうと、重大・悪質な犯行として重く処罰され、教員免許も失ってしまう危険があります。
もしそのような行為に手を染めてしまった場合には、できるだけ早い段階で刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。
泉総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件の弁護に注力しています。
被疑者となってしまい不安な方やその家族は、是非一度、泉総合法律事務所の無料相談をご利用ください。